悔しい準決勝敗退に終わった市立船橋[写真]=金田慎平
第102回全国高校サッカー選手権大会・準決勝が6日に行われ、市立船橋(千葉)は青森山田(青森)にPK戦の末に敗れ、ベスト4敗退に終わった。試合後の会見で市立船橋の波多秀吾監督がメディア対応を行った。
12年ぶりの優勝を目指した市立船橋は、高円宮杯プレミアリーグ王者の青森山田と準決勝で対戦した。試合が動いたのは、キックオフからわずか11分。青森山田にセットプレーから先制点を決められ、早くもリードを許す展開となった。
いきなり苦境に立たされた市立船橋。だが、選手たちは極めて冷静だった。キャプテンの太田隼剛を中心に相手の陣形を見極めてボールを動かし、厚みのある攻撃を仕掛けていく。波多監督も「選手たちは粘り強く、我慢強く、攻撃を組み立ててくれた」と評価する戦いぶりだった。
諦めずに攻撃を続けた市立船橋は、79分にその姿勢が報われる。後方から思い切ってスペースへ走り込んだ太田へ、右サイドの佐藤凛音からのパスが通ると、太田は左足のアウトでラストパス。ゴール前で待っていた久保原心優がダイレクトでシュートをゴールネットに突き刺し、同点に追いついた。
その後、あわや逆転かというチャンスもつくった市立船橋だが、青森山田もさすがの守備力を見せ、90分では決着がつかず。勝負はPK戦へ突入。PK戦では市立船橋のGKギマラエス ニコラスが1本シュートストップしたが、青森山田のGK鈴木将永に2本止められ、2-4で準決勝敗退に終わった。
決勝進出まであと一歩。しかし、その一歩が遠かった。波多監督も青森山田について「セットプレーや守備の強度だったり、一つひとつのクオリティが高かったです。試合運び、勝ち方を見ても、近年の選手権でしっかり結果を残してきたことが、脈々と受け継がれているのではないかなと思いました」と、悔しさを滲ませながらも、相手の強さを称賛していた。
これで12年ぶりの優勝の夢は潰えることになった市立船橋だが、逆境の中で見せた選手たちの姿勢は称賛に値するものだった。波多監督もあらためてキャプテンを中心とした3年生へ感謝の言葉を口にした。
「今日のプレーもやはり彼(太田)が中心でした。攻撃の組み立て、試合のコントロールもそうですし、Bチームも含めたチーム全体のなかでリーダーシップをとって引っ張ってくれました。本当に感謝しかないです。昨年からゲームキャプテンをやって、思い悩んだり、うまくいかなくてイライラしたこともありましたけど、特に僕は何も教えることなく、彼自身が切り開いて、成長していきました。そこが今のリーダーシップにつながっていると思います。
太田も、郡司も、佐藤も、内川も、他のメンバーもそうですが、自分たち自身ですごく成長していったという点で、僕は誇らしく思っています。サッカーの技術、戦術指導も、コーチたちが中心となって行ってくれていましたが、なにか与えられたり、教えられたりするよりも、彼ら自身で身につけ、苦難を乗り越えていった印象です。インターハイで負けたことが一つきっかけだったり、苦しいことを乗り越えたり、自分自身で成長した素晴らしい選手たちだったなと思います」
自主性に秀でていた今年の3年生。その背中を見て成長してきた1年生、2年生は、きっと彼らから多くことを学び、また来年必ずこの舞台でリベンジしたいと強く心に誓ったはずだ。今年の悔しさを糧に、新チームがさらなる進化を遂げることを期待したい。
取材・文=高橋羽紋
By 高橋羽紋
2023年からWebサッカーキング編集部に勤務