毎週日曜日、テレビ朝日系列にて好評放送中の『やべっちF.C.』は2016年4月で放映開始から15年目を迎えた。
長らく番組をけん引しているMCの矢部浩之さんと、当初は番組を盛り上げる選手の一人として、現在はやべっちファミリーの一員として貢献している中山雅史さんのお二人に『サッカーキング』で実施中のディエゴ・マラドーナ特集に合わせて、マラドーナについて話を聞いた。
インタビュー=小松春生
写真=野口岳彦
マラドーナのプレーを最初にご覧になった時は覚えていますか?
矢部浩之 もちろん存在は知っていましたけど、最初に見たのは1986年のメキシコW杯ですね。イングランド戦でのプレーなどはインパクトがありました。
中山雅史 僕は1982年のスペインW杯ですね。あまりのマークの厳しさに相手を蹴って退場したブラジル戦が印象的でした。その時はマラドーナの凄さをそこまで感じませんでした。「こういう選手がいる」と受け止めていたんですけど、やっぱり86年は強烈でした。ちょうど大学に入学した年で、その年に日本B代表としてのアルゼンチン、ブラジル遠征があったんです。W杯の実況テープが向こうにあって、マラドーナがゴールを決めるシーンや実況が「ブルチャガ・ブルチャガ」と連呼しているシーンを、世界のサッカーの凄さを感じて聞いてました。日本はまだW杯に出ていない時代ですし、「サッカーは見るもの」であるということが当たり前の時代でしたから。
特に印象に残っているプレーはありますか?
中山雅史 1994年のアメリカW杯でゴールを決めた後、カメラに向かって行った見せた顔ですよね。監督になってからのマラドーナを見ても、はちゃめちゃぶりというか、ベンチ前でのガッツポーズとか、この人は本当にサッカーを愛しているんだなと。サッカーを愛していながらも勝たないと気が済まない、強烈な負けず嫌いであることはすごく感じますね。
サッカー人として純度が高いと。
中山雅史 そうですね。あとは、アルゼンチンに生まれてよかったんだろうとも思います。日本に生まれていたら、その行動は総スカンもあり得る。マラドーナはマラドーナという人なんだなと。
矢部浩之 日本でもモノマネする芸人がいて、それで飯を食っているくらいですからね。すごい人ですよ、マラドーナは。
矢部さんは引退後のマラドーナはどう思われますか?
矢部浩之 僕は、ブラジルW杯でアルゼンチンの試合を見ることができて、座っていた席のすぐ後ろにマラドーナがいたんですよ。周りにいる全員がこっちを見て、スマホやカメラとかを向けて、顔を指して写真を撮っているなと。外国人の僕にも指を指すか、と思ったらマラドーナと娘さんが座っていて。パッて見たらもうマフィアみたいでしたね(笑)。真っ黒なスーツを着て。
中山雅史 来ただけでざわつきますから。僕もドイツW杯の時にアルゼンチンの試合を見たんですけど、スタンドの逆側でマラドーナがVIPルームに向かう時で、みんながざわついて見上げている。何だろうと思ったんですけど、あの背格好を見て、遠くからでもマラドーナとわかりましたから。
矢部浩之 ブラジルでテレビを見ていたらCMにペレとマラドーナが出てきて、ペレは王様役として、すごく綺麗にレジェンドとして映っている。その次にマラドーナが出てきたら、ものすごい悪役なんですよ。でもそれが世界的に認知されていて、本人もその設定にOKを出していることがすごいと思いましたね。
マラドーナは今お話しに上がったペレや、リオネル・メッシと比較されますが、この比較論はいかがでしょう?
矢部浩之 マラドーナはヒールのレジェンドですよね。後の素行が(笑)。時代の違いもあると思います。だからどっちが好きだ、ではなくて、正義と悪のレジェンドということでいいと思います。アルゼンチンにはメッシもマラドーナもいて、この先もずっと比較されていくんやろなと。もちろん2人とも選手としては世界でナンバーワンです。
中山さんはマラドーナと一緒にプレーする機会があれば、どういうプレーをしますか?
中山雅史 とにかくスペースに走りますね。どのタイミングでパスを出してくれるのかな、とか。マラドーナは自分で勝負する印象が強いですけど、イタリアW杯の決勝トーナメント1回戦でブラジルと対戦した時、(クラウディオ)カニーヒアにマラドーナがすごいスルーパスを通して。それでブラジルは0-1で敗れた。アルゼンチンがほぼブラジルに抑えられていたけど、その1本で勝っている。そういうパスを出せる男だから、走りがいはあるでしょうね。
毎週日曜 深夜0時10分からテレビ朝日にて放送中
By 小松春生
Web『サッカーキング』編集長