今年も“絶対に負けられない”一戦が迫ってきた。
早稲田大学ア式蹴球部と慶應義塾体育会ソッカー部による『早慶サッカー定期戦』。今年は7月15日(土)、等々力陸上競技場にて開催される。早慶戦は「絶対に勝たないといけない」と真剣な眼差しで語ったのは、早稲田出身の攻撃的サイドバック・新井純平だ。
今季から厳しいプロの世界に身を置く元早稲田の主将が「特別な試合」を目前に、在学時代の思い出や早慶戦に懸ける熱い想いを告白した。
インタビュー・文=松尾祐希
写真=兼子愼一郎、金子拓弥
早稲田を背負って戦えたことが嬉しかった
――『早慶サッカー定期戦』は伝統ある一戦です。早稲田出身の新井選手にとって、この一戦はどのような位置付けになるのでしょうか?
新井 慶應だけには絶対に負けられない。絶対に勝たないといけない。それが部員全員に染み付いていますし、OBになった今も慶應だけには絶対に勝ってほしいと思っています。それは後輩も分かっていると思うのですが、やっぱり早慶戦は特別な試合。そういう想いは全員が持っていましたね。
――早慶戦に対する想いというのは先輩から受け継がれているものだと思いますが、やはり入部後から植え付けられるものなのでしょうか?
新井 入部した瞬間に早慶戦の重要性は植え付けられますね。入部の段階で「関東リーグ制覇を目指している」という説明はされますけど、それと同時に同じかそれ以上の比重で早慶戦のプレゼンがあるんです。早慶戦が近くなると映像でも説明をされますが、新入部員に対して簡単な形ですけどしっかりと伝えられます。早慶戦が年1回行われていて、そこには絶対に勝たないといけないとか、今までの歴史はこうで、今までに何回勝っていて、(昨年まで)5連覇をしているとか。そういうのは最初に伝えられますね。
――高校時代は浦和レッズユースでプレーをしていました。大宮アルディージャユースとの“さいたまダービー”ともまた違いますか?
新井 それとはまた違います。部に入ってやってみないと感じられないところではあるのですが、早慶戦を部員全員で作り上げる雰囲気とか、学生だけで作り上げるものとか、今までの歴史の深さ。そういうのはユース時代のさいたまダービーとまた違うものがありますね。
――新井選手が在学中、早慶戦は早稲田が全勝。かつ、全て完封勝利でした。
新井 1年生の時は最後の国立競技場開催で、僕は(物販などの)売り子として外から試合に関わっていました。なので、早く試合に出たいなというのを強く思っていて、その中で2年生から試合に出させてもらうことが出来たのですが、早慶戦は学生ではなかなか味わえない雰囲気がありました。その中でDFとして無失点で抑えて勝てたことは自信にも繋がりましたし、早稲田を背負って戦えたという部分でも嬉しかったですね。歓喜の瞬間を味わえたのは思い出にもなりましたし、今までの嬉しかった勝利を思い返しても、勝った後の光景は特に鮮明に覚えています。
――昨年はキャプテンとして勝利を味わいましたが、そこはまた違うものがありましたか?
新井 早慶戦は内容がどうであれ勝つことが大事です。なので、結果として勝てたのは本当に嬉しかったです。早稲田の主将をやっていて良かったというのを強く感じた瞬間でしたね。
このプレッシャーを味わえるのは早慶戦だけ
――在学中の早慶戦で忘れられない思い出やエピソードなどはありますか?
新井 試合前のミーティングですね。早稲田は監督が「こういうふうに戦おう」などを言うのではなく、メンバーに入った一人ひとりがそれぞれしゃべるのですが、毎回ほぼ全員が泣いてしまうんです。その状態から試合に入っていくのですが、そういうことは他のチームだとほとんどない。一人ひとりが勝ちたい想いとか、こういうことをやりたいというのを伝えてから試合に挑むのですが、ほぼ全員泣いてしまう。だから、こんな状態で試合に行って大丈夫かなと(笑)。勝ちたくて感極まって泣いてしまうのはいい思い出ですね。
――早慶戦をもう1回戦ってみたいと思いますか?
新井 やってみたいですけど、怖いですよね(笑)。自分たちは負けを味わっていないので、負けたらというのはあんまり考えたくないのですが、自分たちが負けて連覇を止めてしまったらどうしようかなと。その恐怖感はありました。でも、勝利の瞬間はまた味わいたいですね。こういうプレッシャーを味わえるのも早慶戦だけなので、それはいいことだと思います。
――プロに入ってから半年が立ちました。ピッチに立つ機会も増えてきましたが、手応えはありますか?
新井 チーム状況やケガ人の関係で、試合に出してもらう機会が多くなりました。ただ、ピッチに立つと、全てを出し切れていないし、どこかで萎縮している自分がいるのではないかなと感じます。プロになったら1年目とかは関係なくて、試合で何が出来るかが全て。それがプロの仕事だと思うので、そういうところで早く順応していかないといけません。チームはJ1昇格、J2優勝という目標を掲げているのですが、僕はまだ力になり切れていない。自分の能力を高めるためにも日々のトレーニングからもっと成長をしていかないといけないですし、もう学生ではないのでもっと自分自身に矢印を向けてやっていきたいと思います。
――今年は7月15日、等々力陸上競技場で早慶戦が開催されます。後輩に伝えたいことはありますか?
新井 とにかく勝ってほしい。想いを背負うのはいいことだけど、力まず気負わず戦うことが勝利に繋がります。ここ4試合完封で早慶戦を制していますけど、先に失点しても気にしなくていい。ただ、そういう時に本当の人間力が試されていると思うので。早稲田は人間性を重視していて、それを持っている選手が試合に出るから戦いに勝てるし、そこは本当に大事にしてほしい。苦しい時は絶対にあると思いますけど、自分たちが信じて来たものをもう1度思い出して戦ってもらいたいですね。
――最後に今年の早慶戦を楽しみにしている方へメッセージをお願いします
新井 やっぱり大観衆の中での応援もそうですけど、試合を全て学生が作り上げているところを一番見てもらいたい。学生主体で作り上げているので、そこは本当にいい所だと思いますし、売店なども学生がやっています。早慶戦の運営を学生が考えて、早慶戦が盛り上がるように動いている。早慶戦ならではの雰囲気を楽しんでほしいですね。あとは早稲田が絶対に勝つと思うので……(笑)。そのために応援をしてもらえればと思います! 早慶戦記念Tシャツも是非買って、会場をえんじ色に染めて下さい!
アシックスキャンパスストア早稲田(http://www.asics.com/jp/ja-jp/waseda)