番組レギュラー解説委員を務める岩政大樹(東京ユナイテッドFC)がプロデュースするインタビューコーナー「今まさに聞く!」~浦和レッズ 興梠慎三篇~後編が放送された。岩政と興梠は鹿島アントラーズの元チームメートであり、8年間にわたって共に戦った“戦友”。前編では点取り屋としての成長の要因などを探ったが、後編では浦和レッズ移籍の理由やプライベートにも迫った。
■浦和レッズ移籍の理由
岩政大樹(以下、岩政) 鹿島からレッズに移籍する決断をするっていうのは、いろいろ考えたでしょ?
興梠慎三(以下、興梠) もちろん、もちろん。もちろん鹿島のサポーターの人たちもね、やっぱり「行ってほしくない、鹿島にいてくれ」っていう声もたくさんあったし。まあでも、鹿島にずっといることがすべてじゃなかったですから、自分は。あれだけいいクラブで、いい環境でできたことはすごくよかったですけど、また違う環境でやりたいなっていうのもあったし。
岩政 選手としていろいろな経験をする意味でも、次のステップへ進むことを感じていたということですよね。
興梠 あとは、やっぱりミシャ(ミハイロ・ペトロヴィッチ前監督)サッカーかな。対戦して、あの時のサッカーってすごかったじゃないですか。ミシャのサッカーって。気持ちいいぐらい回されたし、「ああ、こういうサッカーをしたいな」って思った時にオファーが来たんで、それもいいタイミングでミシャが拾ってくれたかなって思います。
岩政 そういう意味では、ミシャ監督が退任されることになってしまったんですけど、呼んでいただいたほうとしては複雑だったと思うんですけど。
興梠 いや~、初めて監督がいなくなって涙したと思います。僕だけじゃなく何人かの選手も、本当にまだ、自分的にはACL(AFCアジアチャンピオンズリーグ)が終わって、ACLが負けたら解雇かな、ぐらいの気持ちだったんですよ。でも、北海道コンサドーレ札幌戦(J1第29節/0-2で敗戦)が終わった時に、次の日にみんなミーティングがあるって言って、監督が辞めるってことで、まさか辞めるとは思っていなかったんで、けっこう号泣しましたね、いい歳なのに。やっぱそのぐらいツラかったし、自分の責任でも多少はあるので、やっぱりツラかったですね。それと同時に、新しい監督が堀(孝史)さんということで、堀さんも自分がずっと、レッズに来てからコーチとしてずっと一緒にやってくれている方なので、今監督としてやっていて、ミシャと同じようなことはさせたくないなっていう強い気持ちはありますけど。
■年齢による自身の変化
岩政 個人としては今31歳になりましたけど、これからどういうスタイル(でやっていく)? 少しずつ体は変わってきているんですか?
興梠 体は間違いなく動けなくなってきている。今までスピードで勝負してきていたけど、また違った目線で、ポストプレーをうまくやったりとか、あとはセンタリングへの入り方、そういう細かいことをやっていこうかなって自分なりに思っていて。それが今、すごくいい結果に結びついているのかなって。だから、年齢に合わせてスタイルを……変えたくはないですよ。でも、変えないとやっていけないなっていうのはあるかなと思います。
岩政 高校生の時はまたスタイルが違ったじゃないですか。そして鹿島に入った時はFWになって2トップになって、今度は1トップになってと、どんどん自分で変化させているじゃないですか。これって、もっとみんなに伝えたいなって思うんですよ。どうやってやるんだろうって。
興梠 いや、分かんないっすね~。
岩政 なかなかみんな、自分の一つのスタイルがあって、それを貫いていくのがプロの選手で、それでしか生きていけない選手が多いんですけど、それって形を変えながら、姿を変えながら、ましてや最初は鹿島らしい選手だったのが、今はもう、まさに浦和の選手になれてっていうところでいくと、本当に稀有な存在になったな、と思うんですけど、それってどういう……ちょっと力が抜けているのがいいんですかね。
興梠 それも、まあそうですね。何かね、一回面白かったのがね、武道家の人が浦和レッズに来て、「あなたの体はおかしいです」みたいな。「すごすぎます」みたいな。こんなに小さいのに、相手とぶつかって、なおかつ自分は力が抜けている状態で、で相手がグラグラになってしまうみたいな。「あれは武道家としてすごいです」とか言われて。
岩政 僕は逆に、まさに力をグッと加えながら最初、競りに行っていたんだけど、いろいろな体の使い方を勉強して、まさに武道も僕は勉強したんだけど、そうすると力を抜いたままプレーするほうが実は強いということが分かり、そのやり方を、自分はトレーニングをすることで身につけたんだけど、あれって興梠選手の場合、例えば競り合いますってなった時に、あまりグッて力が入ってないですよね? 入れようと思ってないですよね?
興梠 うん、力は(入れてない)。まあ、スンッっていくぐらい(笑)。
岩政 スンッ?
興梠 ガンッっていくと、なんか痛いんですよ。自分が。
岩政 あ~、逆に自分が痛い?
興梠 逆に。だからスンッて(笑)。ホントそんな感じです。
■プライベートについて
岩政 最近、子どもができましたけど。どうです? 人生変わってきました?
興梠 いや~変わりますよ。かわいい。何よりかわいいし、最近はもう遊びに行かなくなりましたもん。
岩政 ハハハ(笑)。以前はね……。
興梠 以前はもう、ブイブイいわしてたけど、すぐに家に帰って子供と遊びに行ったりとか、子どものためならね、何でも犠牲にできますね。もう、死ねって言われたら死ねるし(笑)。ホントに。
岩政 ピッチで変わることはありました?
興梠 いや~、だから、よく「結婚して変わった」とか言う人がいるじゃないですか。あんまりないんですよね。「子どもがいるから頑張ろう」とかは、全くないですね。それはないですね。あんまり、サッカーでは家族の、そういうのはないですね。
岩政 ピッチ外での過ごし方はだいぶ変わったけど?
興梠 そうそう。まあ、子どもにカッコイイところを見せたいというのはありますけど。
岩政 ピッチに入ったらそんなこと関係ない部分もありますからね。
■大迫勇也について
興梠 鹿島に来た時から、ポテンシャルはすごい高いものがあったから、「こういうやつが日本代表を背負っていくんだろうな」って。
岩政 そういう感じで見ているんですか?
興梠 そりゃそうですよ。
岩政 最初はポジションを争う関係だったじゃないですか。
興梠 そうです、そうです。決して僕も調子が悪くなかったですからね。その時は、3連覇した時、一瞬ポジションを取られましたけど、でも高卒であそこまでやれて、バケモノですよね。だって高卒ですよ?
岩政 確かに。1年目であれだけ出ていたからね。
興梠 いや、すごいな~、こいつ楽しみだな~って一緒にやりながら思っていたし、いいライバルとしてやってきて、現に今、代表で、あいつが一番いいんじゃないですか? あいつがいないとチームにならないぐらい、いい感じがしますけどね。まあでも、体が強くなったぐらいで、持ち方とかは「懐かしいな」って。
岩政 まあそうですよね。
興梠 体の入れ方とかは「懐かしいな」っていう(笑)。要所要所、自分で組み立てようとするところは、「やっぱこいつ下手だな」って(笑)。
岩政 (爆笑)。「そこじゃねーぞ」と。
興梠 「そこじゃねーよ、お前は」っていう。でもやっぱり、あいつを見て学ぶこともけっこうありますよね。やっぱり今、日本で一番いいFWなんじゃないですか?
■自身の将来について
興梠 サッカーを引退したら、(サッカーの)現場でもちょっとやってみたいなって。
岩政 あ~そうですか!
興梠 ちょっとあります。フロントに入りたいな、レッズを変えていきたいなっていうのもちょっとあります。だから来年ぐらいにライセンスを取ろうかなと。
岩政 高校の時はねえ、練習に行くのも嫌がっていた男が(笑)。
興梠 (爆笑)。
岩政 今度はサッカーをやりたくなっている。活躍したいと思っている。
興梠 そうですね。
岩政 変わるもんだね、人はね。
興梠 変わりますね。ホントに。
11月3日午後9時から生放送される『スカサカ!ライブ』は無料放送! 日本代表親善試合ブラジル代表戦プレビュー、YBCルヴァンカップ決勝プレビューなどを放送。また、レギュラー解説委員を務める岩政大樹(東京ユナイテッドFC)がプロデュースするインタビューコーナー「今まさに聞く!」~ウニオン・ベルリン内田篤人篇~前編などを放送する。
By サッカーキング編集部
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