元川崎フロンターレ・プロモーション部部長で、現在は東京オリンピック・パラリンピック組織委員として活動している天野春果氏が、川崎が制作し、川崎市内の小学6年生に配布されている『川崎フロンターレ算数ドリル』の制作秘話を語った。
きっかけは、2008年にJリーグが実施したヨーロッパ研修だった。天野氏は当時をこう振り返る。
「アーセナルに行った時に、担当者が『セスク(ファブレガス/現チェルシー)がスペイン語の教科書に載っている』という事例を説明してくれて、そこでひらめいたんですよ。日本の教育システムだと教科書に載せるは難しいから、すぐにドリルが浮かんだんです」
視察終了後、すぐに担当者を捕まえて数時間にわたって話を聞き、構想を固めていったという天野氏。『川崎フロンターレ算数ドリル』制作の狙いを次のように語った。
「女の子や小さい子は、なかなか川崎の選手に対して興味関心がないですよね。でも、(ドリルは)学校の授業で嫌でも週に2、3回は開く。そうするとフロンターレのことを知ってくれるし、問題を解くことで、選手や地域のことを知れるように工夫されているんです。試合に出ている選手は知名度が高くなりますが、試合に出ていない選手も、子どもたちは普段から使っているからぱっと言えるようになるんです」
「算数と何かをくっつけると、化学反応を起こして何かが生まれる」と語る天野氏。当初は『川崎フロンターレ漢字ドリル』を想定していたという。今年、爆発的人気を博した『うんこ漢字ドリル』の、いわば先駆けのようなもので、そこから発展して生まれた『川崎フロンターレ算数ドリル』の誕生によって「子供たちが前向きに算数、勉強に取り組めるようになった。すごく発信力を持った教材になった」という。
「最初は教育委員会に反対されました。でも、壁をちょっとずつ越えていけば『もっとやってくれ、もっとやってくれ』になる」と天野氏。川崎は様々なアイデアでプロモーションを行うクラブだが、その目的を次のように語っている。
「クラブの存在意義は、地元の人たちの笑顔を作り、幸せにすることにある。(チームが)勝つことはそのための最大の手段だと思います。勝利が目的になるんじゃなくて、勝利を目的にしながら、どうやって(地元の人たちを)幸せにするか。それを考えるとこういう切り口が出てきます」
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By サッカーキング編集部
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