Jリーグ副理事長を務める原博実氏が番組視聴者からの質問に答え、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)システムやJリーグの外国籍GKの増加について語った。
まずは「ロシア・ワールドカップから本格導入されることになったVAR。Jリーグは導入しないんですか?」という質問について。原副理事長によると、すでにトライアルの準備は進めているという。
「昨年夏に行われたJリーグワールドチャレンジ2017の鹿島アントラーズとセビージャでの試合でも試験的に実施しているんですよね。レフェリーに伝える部分は省略しましたが、モニタールームで映像を見る部分のトライアルはしていました。今年は本格的なトライアルをやりながら議論を進めていく方向ではあります」
原副理事長自身は、VARシステムについてはどのように考えているのだろうか。
「ブンデスリーガでもかなり揉めていて、選手や現場からは評判が良くない。通常なら流してしまうようなプレーがVARで止められて、一発退場になるケースもあるので、適応の仕方がすごく難しい。また、レフェリーと話をすると、『レフェリーがやたらにホイッスルを吹かないほうがいいのではないか』という話も出てきています。ホイッスルを吹いて試合を止めるとそこでジャッジを下さなければなりませんが、判断に迷った時はプレーを続行させておけば、後でビデオ判定してくれる。そうすると現場のレフェリーよりもビデオで見ているレフェリーの権限が強くなってしまう。そんなスポーツになってしまう可能性がありますよね」
賛否両論あるVARシステムだが、それでもJリーグでのトライアルを進める理由はどこにあるのだろうか。
「FIFAのジャンニ・インファンティーノ会長がロシアW杯でどうしてもVARを導入したがっていて、今回導入されることになりました。そこでどう出るか。結果次第で導入の流れが加速するのか、もう少し待ったほうがいいのかの結論が出てくると思います。Jリーグとしては、急に導入することになってもいいように準備しておかなければなりません。準備もなくいきなり導入なのでは間に合わないし、国際主審を目指すレフェリーの方は特にそういった準備をしておかないと、国際主審に選ばれなくなります。また、モニタールームで映像を的確にスイッチングできるスペシャリストを育てておく必要もあります」
原副理事長は、どのような形でのVARシステム導入が望ましいと考えているのだろうか。
「Jリーグはいろいろチャレンジするリーグだと思っています。例えばボールがタッチラインを割ったかどうか、ゴールに入ったかどうかをゴールラインテクノロジー、タッチラインテクノロジーに任せてしまう。その上でレフェリー5人制にしてみたら、どういうことが起こるのかを知りたい。レフェリーがボールの行方をジャッジしなくてよくなれば、オフサイドかどうか、ファウルかどうかに集中できる。そうやってデータを蓄積していけば、『Jリーグのやり方のほうがいいんじゃないか』となるかもしれない。J1でできなければJ3で徹底的にやってデータを集めるとか、いろいろなトライをしてみてもいいと思います」
次は「Jリーグは外国人GKが増えています。このことについて考えていること、思っていることは?」という質問。近年、Jリーグクラブには韓国人GKを中心に外国籍GKが増えており、日本人GKがなかなかポジションを確保できない状況が起きている。原副理事長は「「いろいろな意見があることは聞いていますけど、勝負すればいいんじゃないですか?」と語り、次のように続けた。
「日本人GKが育たないから外国籍のGKは望ましくないという流れにしてしまって、本当に日本人GKが伸びるのかと。昨年、ガンバ大阪の東口順昭や柏レイソルの中村航輔にインタビューしてどう思うか聞いたところ、『いや、僕らは負けません』と言っていました。確かに韓国人GKは身体能力や体格に優れていますが、日本人GKもそこで勝負しないと世界に出ていくことができません。そこはクラブが判断すればいいし、競争を高めないと世界には出ていけないでしょう」
番組MCを務める野々村芳和氏が社長を務める北海道コンサドーレ札幌にはク・ソンユンという韓国代表GKが在籍しているが、今季は京都サンガから菅野孝憲が期限付き移籍で加わった。ク・ソンユンは195センチ、菅野は179センチと、体格的には好対照の2人だが、原副理事長は「どうなるか楽しみだね」と期待を寄せつつ、このように語った。
「お互いにいいところを理解し合って競争して、いい方が試合に出る。競争すれば2人とも伸びる。それこそがプロスポーツの在り方だと思う」
北海道コンサドーレ札幌の野々村芳和社長がMCを務める『Jリーグラボ』は、毎月第2日曜日の21時から放送される。日本のサッカー水準向上を目的に、毎回ゲストを招いて様々な角度から日本サッカーを分析していく。次回は3月11日(日)21時から放送される予定となっている。
By サッカーキング編集部
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