写真提供:スペシャルオリンピックス日本
6月16日、17日の2日間にかけて、『第3回全国ユニファイドサッカー大会』が大阪府のJグリーン堺で行われた。ユニファイドサッカーとは、知的障害のある選手(アスリート)と知的障害のない選手(パートナー)が同じチームで競技を行うことで、障害の有無を越えて様々な経験を共有しお互いの個性を理解し合う関係を築く取り組みである。
16日に予選、17日に決勝トーナメントが行われ、熱戦が繰り広げられた末にSON(スペシャルオリンピックス日本)・長野がSON・福島B(第1回、第2回大会ともに2位)を2-1で下して初優勝を飾った。
今回の全国大会とは別に、国際的なサッカー大会としては初めて『2018年スペシャルオリンピックスユ二ファイドフットボールカップ・シカゴ presented by TOYOTA』が7月17日から21日にかけてアメリカ合衆国イリノイ州シカゴのトヨタ・パークで開催される。本大会では出場国チームと各国のプロサッカークラブとがパートナーシップを結び、パートナークラブという役割のもと帯同するルールがあり、日本選手団のパートナークラブは名古屋グランパスに決定している。
6月16日には本大会に出場する日本選手団の壮行会とエキシビションマッチも行われた。エキシビションマッチは日本選手団チームと、名古屋グランパスアカデミーダイレクターの山口素弘氏、名古屋グランパスアカデミースカウトの中村直志氏らが入った大阪&和歌山チームとの試合が行われ、5-0で日本選手団が圧勝した。
4月の福島県内での練習、5月の名古屋合宿でも指導し、日本選手団のアドバイザーを務める山口氏は、「僕は仲間だと思っています。一緒にシカゴに行って彼らの戦いを見届けたいと思います」と語り、次のように言葉を続けた。
「彼らは一回一回練習するたびにうまくなっていますし、うまくなろうとしています。最初はまだチームという雰囲気でもなかったですが、5月の合宿で名古屋グランパスのユースと交流試合をしてから急激にチームとしてまとまってきたので、その経験は非常に大きかったのかなと思います。シカゴカップでは結果はもちろんですが、彼らの合言葉である『感謝と笑顔』をそのような場に立てる、そのような戦いができることに感謝して笑顔で終わってほしいなと思います。またそのような機会を通じて、これからのために勉強してきてほしいと思います」
選手たちの夢中でボールを追う姿に気づかされることも多いという山口氏。それだけに、自身に課せられた役割を全うしたいと語気を強める。
「僕自身もユニファイドサッカーに携わってから、彼らに教えてもらうことも多い。彼らは失敗を恐れずにまずやってみる。失敗して笑われるのも恐れない。元々のスポーツの『原点』に返らされる。ユニファイドサッカーをもっと知ってもらうためには、当然このような大会や発信、交流が必要になってくる。今回、名古屋グランパスがサポートになっていますが、これを機会にJリーグがサポートということもあるかもしれない。もっと様々な取り組みを、クラブとして名古屋グランパスとしてやっていきたいと思います」
16日に初めて日本選手団に会い、2日前の14日には『2018年第7回スペシャルオリンピックス日本夏季ナショナルゲーム・愛知』の『100日前イベント』に参加した中村氏は、大粒の汗を拭いながら「久しぶりにサッカーをしました」と笑顔で語った。
「ここまでレベルが高いと思っていませんでした。思っていたよりスピードがあり、ボールの扱いもうまい。アスリートとしての原動力が素晴らしいと思います。実は、スペシャルオリンピックス2018愛知は3年前から関わっていました。シカゴカップとともに名古屋グランパスがJクラブで初めてパートナーシップを結んだことによって、Jリーグとユニファイドサッカーの架け橋になっていけたらと思います。佐藤寿人(現名古屋グランパス・元選手会会長)ともJリーグだけでなくサッカー界全体の話をすることがあります。これからも名古屋グランパス一丸となって先導して活動を行っていきたいと思います」
最後に、日本選手団のキャプテン・橋本直樹は、シカゴカップに向けて力強い言葉を残してくれた。
「エキシビションマッチは3-5くらいで負けると予想していたのですが、みんなの気持ちがこもったパスがつながっていたので勝てたのだと思います。5月の合宿では、名古屋グランパスのユースチームと試合をしてボロボロにされたのですが、負けた日から月に2回のペースだった練習を毎週1回集まって練習をしていくうちに、どんどんいいチームになってきました。シカゴカップの初戦はイタリアなので体格差にビックリすると思いますが、小柄なところを武器にして、まずは予選突破を目標にします」
7月のシカゴカップまであと1カ月。グループステージではイタリア、ジャマイカ、ナイジェリアと戦う。選手団にとって初めての大舞台に緊張と不安もあるが、喜びや悔しさをともにしてきたアスリートとパートナー、そしてサポーター、お互いを信じ一つになって大会に挑む。
取材・文=白河奈々未
By サッカーキング編集部
サッカー総合情報サイト