4年に1度のサッカーの祭典が終わり、次なるビッグスポーツイベントは東京オリンピック! 2020年7月24日の開会式までちょうど、あと2年となりました。
日本で2度目の夏季五輪に向け、マスコットのネーミングが決まるといったポップな話題、ボランティア確保の難航や東京の混雑緩和のために夏季休暇取得時期をズラす要請を検討しているといったマイナスととらえられそうな話題など、いろいろなニュースが増え始めたことで、開催が近づいていることを実感します。
そんな折、本大会でも心配の種になりそうな、うだるような暑さの7月18日に、「新国立競技場建設工事現場の公開」および「施設見学ツアー」が開催されるとのことで、サッカーキング編集部が潜入調査をしてきました。
新国立競技場は、東京五輪に向けて国立霞ヶ丘陸上競技場の全面建替工事で生まれ変わる新スタジアム。工事計画の見直しなどの紆余曲折がありつつ、2019年11月に竣工を予定しています。(ちなみに、完成と同時に“新”が取れ、正式に国立競技場と呼ばれることになります)
2015年5月に解体が終了してからは約3年、準備工事が終了して本体着工となった2016年12月からは1年半ちょっと。果たしてどの程度の進捗状況なのか…。公開された内部(メインスタンド側)からの写真はコチラ!
正直な印象としては、「結構、出来ている!」
ちなみに…2017年3月段階で公開された現場はこんな感じ。
そこから比較すると外周がしっかりと形成され、“スタジアム”といった様相です。
では実際どれくらい完成しているのか…。本体着工から完成まで36カ月の全体工期のうち、7月で20カ月が経過した段階で、日本スポーツ振興センターからの説明は「40%程度」。
「あれ、進んでいなくない!?」
と思われる方もいるかと思いますが、担当者の方曰く、「想定スケジュール通りです」とのこと。これまでは基礎工事などが主な内容となっており、2018年の春に入ってから外装や内装、デッキ、屋根などの複数箇所を同時進行で進められるようになったため、これから加速していくようです。ちなみに現在、作業現場に携わっている方は約2000名だそうですが、これから屋根の大がかりな作業が増えることもあり、3000~3500名程度まで、増員されるそうです。
ここからはスタジアムの設備について。
まず客席ですが、3層構造となります。1階席部分の傾斜は横浜国際総合競技場よりは角度があるといった印象です。座席は旧国立とは異なり、折り畳み式のものを導入予定で、3階席は傾斜が急になるので、手すりを設けるそうです。ちなみに大型スクリーンはサッカーでいうところのゴール裏エリアに1面ずつ設置されるとのこと。
屋根は根元と3つのユニットに分けて設置していく流れとなり、現在は根元部分がグルっと一周完成し、ユニット①、ユニット②の取り付けにかかっている段階だそうです。ユニット③までの取り付けが終わると、せり出しは60メートルほどになり、最下層客席まで、垂直にはカバーできる想定です。吹き込むような雨風は無理そうですが…。
ちなみに屋根部分は47都道府県の木材を使用。上弦材は雨風にさらされるため、金属製になりますが、下弦材はカラマツ、上弦と下弦をつなぐラチス材にはスギが活用されています。
そして、皆さん気になるのは『暑さ』だと思います。東京五輪の開幕は2020年7月24日(サッカーは先んじて22日開幕)となりますが、現在の日本(というか世界各国ですが…)は、猛暑のニュースが駆け巡っています。
競技の運用面で、アスリートの皆さんがちゃんとしたパフォーマンスを発揮できるか、などもそうですが、観客の体調面も心配されるところ。この時期の開催の是非はさておき、新国立競技場はどうなんでしょう。
ちなみに取材日、ブリーフィングを受けた客席エリアの温度計は38度超えを記録。屋根はスタジアムを囲うように一周できますが、特に1階席エリアなどは差し込んでくる日差しを浴びることが多くなると思われます。
一方で、スタジアム外よりは、やや涼しいといった印象も。これはスタジアム外側から内側へ風が流れる仕組みをつくり、上部から吹き降ろす風が受けられたためで、この空気の流れを完成した後も維持できれば、少々様相は変わるかもしれません。
設備としてはコンコース上の休憩所の充実、気流を生み出すシステムの導入、ミスト発生装置の導入などが予定されているそうですが、観戦をするという点においては個々人での注意・対策が必須になりそうです。
さらにサッカーファンとして気になるところは、『東京五輪後』。大会後には球技専用スタジアムとして使用することが検討されており、2023年の女子ワールドカップや、将来的なW杯招致に向けて、メイン会場として念頭に置かれていると報じられています。
キャパシティは6万8000人から7万人で東京五輪は開催しますが、その後の拡張でW杯開催の条件である「メイン会場は8万人収容」を満たす施設としても期待されます。
担当者の方に球技専用への拡張について聞いてみたところ、「収容人員数を増やすといった対応もできるようには、しています」と答えてもらうにとどまりました。あくまでも現状ではその予定も可能性としてある、というところのようです。
球技専用とするにはやはりトラック部分に客席を増やして、臨場感のある形にしてもらいたいところ。ただ、そうすると現状の1階席の延長に増席した場合は傾斜がかなりなだらかになりそうなので、気になる点となりそうです。
東京五輪まであと2年。フィールド部分の着工は屋根もかなり完成した2019年3月からの予定のため、全景が見えてくるのはもうしばらく先となりそうですが、ひとまずは建設に携わる現場の皆さんをはじめ、無事に完成することを待ちたいと思います。
取材・文=小松春生
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By 小松春生
Web『サッカーキング』編集長