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【インタビュー】ジーコが語るソサイチ〜7月7日はソサイチ(7人制サッカー)の日〜

2021.07.07

鹿島アントラーズ・ジーコテクニカルディレクター(左)と一般社団法人 日本ソサイチ連盟 代表理事 馬場貴嗣(右)

 今から20年前、「ブラジルで流行っている」と友人から教えてもらった競技『ソサイチ』が、日本でも学生や社会人を中心に多くのアマチュアプレーヤーに楽しまれています。

『ソサイチ』について簡単に説明をすると、一般的に7人(場合によっては8人)で楽しむサッカーで、様々なカテゴリを対象としたリーグ戦や大会が年間で3,000以上も開催されているスポーツです。

 一般社団法人日本ソサイチ連盟が主催するソサイチの公式リーグ『FOOTBALL 7 SOCIETY LEAGUE』は、2017年の開幕以来全国各地でリーグ戦開催。その公式リーグに所属するチーム数も、現在では200を超える規模にまで広がってきました。

 一方、本家ブラジルでは、誰もが日常的に楽しむサッカーの形として老若男女問わず浸透しています。フラメンゴ、ボタフォゴ。バスコ・ダ・ガマ、コリンチャンス、グレミオ、パルメイラスといった名門クラブも7人制サッカーのチームを組織し、公式リーグに参戦するなど、ひとつの競技としても発展を遂げています。

 前述した『FOOTBALL 7 SOCIETY LEAGUE』が開幕した2017年、リーグ所属選手を中心とした日本代表チームを組織してブラジル遠征に挑戦しましたが、彼らの競技レベルの高さにはもちろんのこと、誰もが当たり前のようにソサイチを楽しむ姿や、施設のあり方などにも非常に驚かされました。

 今回快くインタビューに応じてくださった鹿島アントラーズのジーコテクニカルディレクター(以下ジーコTD)もブラジルでソサイチ施設を保有しており、「いつかレジェンドにソサイチの話を聞いてみたい」と思いを募らせていました。そして、今回の“ソサイチの日”の特別企画として、鹿島のチーム関係者の方々に多大なご協力をいただき、この企画が実現しました。

 ジーコTDの気さくな人柄のおかげで、ブラジルのソサイチの歴史など、これまで知らなかった話を聞くことができ、ソサイチという競技の可能性を感じるインタビューとなりました。

インタビュー・文=馬場貴嗣(一般社団法人 日本ソサイチ連盟 代表理事)

2017年のソサイチ日本代表遠征では名門フラメンゴとも対戦した

ソサイチはみんなで楽しむためのサッカー

馬場 お会いできて大変光栄です。本日はよろしくお願いいたします。

ジーコ コンニチハ。こちらこそ。よろしくお願いします。

馬場 まず私どもがなぜ、ソサイチの普及活動をしているのか、簡単に説明させてください。私は20年ほど前、フットサル場で働いていました。そこはフットサル場が3面繋がっていて、繋げればミニサッカーが出来るような施設でした。そこへブラジルから帰国した友人に「ブラジルで7人制サッカーがすごく流行っているぞ」と聞かされます。当時の日本は今ほど人工芝のグラウンドが多くなく、私は一念発起して勤めていた会社を辞め、サッカーの普及に携わっていきたいと思うようになりました。それが今、7人制サッカーの普及をしている私の原動力です。

ジーコ いいですね。素晴らしいです。ひとつ教えてください。7人制というのは合計で7名ですか?ゴールキーパーを含めたら8名ですか?

馬場 フィールドプレーヤー6名とゴールキーパー1名の計7名でリーグ戦は行っています。

ジーコ なぜ人数を聞いたかというと、みんなで楽しむサッカーという意味の“ソサイチ”と、より競技的に行う“FUTEBOL 7”とでは意味合いが異なります。ソサイチは土のグラウンドでも楽しくサッカーをプレーします。昔は8人でもプレーされていました。人工芝の普及が進み、少しずつ形が変わり、より競技的な“FUTEBOL 7”のリーグが組織されるようになりました。なのでブラジルでは“ソサイチ”と“FUTEBOL 7”は別物です。あなた方は両方の普及をうまく行っていますね。素晴らしいです。今日は日本で親しまれている言葉である“ソサイチ”に統一して話を進めましょう。

馬場 ありがとうございます。ジーコTDの知っている限りの、ソサイチの歴史を教えてください。

ジーコ 1960年代にフラメンゴの練習場の一角を使い、土のグラウンドでしたがU-15、U-17、大人、マスターという様々なカテゴリーのリーグ戦が始まりました。リオ・デ・ジャネイロで有名な新聞社の助けもあって、リオのほぼ全土からチームが集まって盛り上がりました。私自身も若い頃、参加をしていました。引退後も仲間と楽しくソサイチをプレーしています。

馬場 ブラジルではなぜプロサッカークラブがソサイチ部門を保有しているのでしょうか?

ジーコ 先ほどの質問とも関連しますが、リオのチームを中心に“ソサイチ”と“FUTEBOL 7”が発展してきました。その中で、例えばフラメンゴが7人制サッカー部門を保有し、その他のクラブでも同じような動きが出てきました。そういった背景があるのだと思います。最近ではグレミオがFUTEBOL 7リーグで優勝しましたね。グレミオにはフットサルブラジル代表として活躍したファルカンがいます。彼のように引退後、FUTEBOL 7をプレーする現象はいくつか起きてきています。

グレミオのソサイチチーム(写真提供:FIF7)

ジーコ ところで『go cup』は知っていますか? U-12の子どもたちがプレーする7人制サッカー大会ですが、非常に多くのブラジルのチームが参加します。ヨーロッパからも名門クラブが参加していて、過去にはアトレティコ・マドリード、ユヴェントス、ベンフィカなどが参加しています。鹿島も第一回大会に参加しました。

2017年に日本ソサイチ連盟が視察した“go cup”

馬場 実は2017年、ゴイアニアで行われた『go cup』を視察させてもらいました。育成年代とは思えないレベルの高さ、主催側のオーガナイズの質の高さ、ソサイチコートが無数にある会場などを覚えています。ジーコTDもブラジルでソサイチ施設を保有されていると思いますが、どういった施設なのでしょうか?

ジーコ 元々、11人制のサッカーコートとして運用していましたが、今はそこを3分割にしてソサイチコート3面として運用しています。それぞれのコートサイズは30メートル×50メートルです。自分たちでサッカースクールを運営したり、ソサイチの大会を行っていて、ありがたいことにコートはほぼフル稼働しています。

※Centro de Futebol Zico JF(https://www.instagram.com/futebolzicojf/

ブラジルにあるジーコTD所有のソサイチコート「Centro de Futebol Zico JF」

サッカー、フットサル、ソサイチ…。色んなフットボールを通じて成長してほしい

馬場 7人制サッカー、もしくは少人数制サッカーをプレーすることで、11人制サッカーにどう活かせるとお考えでしょうか?

ジーコ 有名なブラジル代表選手、例えばロナウドやロナウジーニョ、ロビーニョ、ネイマールなどがそうですが、皆フットサルを幼少期にプレーしています。狭いスペースでプレーすることで判断力が養われたり、ドリブルの技術が身に付きます。そして人数が少し増えて屋外で7人制もプレーします。そうしてフットサル、ソサイチ、両方をうまくプレーしながら、色々な角度から色々な技術を身につけていくのです。大切なのはひとつのことばかりせずに、色々なフットボールを通して成長していくことです。

馬場 日本ではジュニア年代は8人制でプレーしています。その点はいかがでしょうか?

ジーコ 冒頭に述べた通り、昔は8人でプレーされており、それがソサイチの原点。フットサルであっても、7人、8人であっても、コートが11人制より狭いことに変わりなく、その中でどう素早く判断していくかが大事になってきます。その能力が養われれば、11人でプレーする時にもきっと活かされます。8人制であればフォーメーションのバリエーションも増え、子どもたちの成長を促すためにもとても効果的だと思います。

将来的にソサイチの発展を手助けできたら

馬場 現在、日本のソサイチは、8人制を採用しているジュニア年代を除き、多くが大人のカテゴリーで親しまれています。その点、ブラジルの現状はいかがでしょうか?

ジーコ ブラジルの場合は普及率が非常に高いと思います。先ほどご紹介した私のソサイチ施設は19時から23時まで、毎日ほぼ埋まっています。プレーする年代で言えばあらゆる年代でプレーされているので、大人だけに限らずジュニアからユースもプレーしますし、幅広く浸透しています。

馬場 それではここで、日本のソサイチリーグ選手からの質問をひとつご紹介させてください。「ソサイチにおいて、ゴールキーパーにはどういった能力が求められますか?」(ソサイチ関東リーグ1部ELAGUA TOKYO 星野昴選手より)

ジーコ 私はどちらかと言えばゴールキーパーをイジめていたのでコメントしづらいですが(笑)。冗談はさておき、瞬発力、スピード、アジリティは、サッカー以上に必要になってくる能力ではないかと思います。ソサイチはコートが狭く、ダイナミックな面もあり、展開が非常に早い。選手はどこからでもシュートを打ってきます。そこに対して適切に対処するには特にアジリティの部分の強化は欠かせず、そういった専門の方に指導を受けるのが良いのではないかと思います。

馬場 お時間も迫ってきましたので、最後に日本のソサイチリーグ選手からの希望・要望をいくつかご紹介させてください。「日本のソサイチの発展、ソサイチリーグの発展にぜひ寄与してください」(HGS小金井/小宮選手)、「ZICO CUPのようなソサイチ大会を開催してソサイチを盛り上げてほしい」(FLORESTA /後藤選手)、「ソサイチ日本代表の監督をして欲しい!」(多くの選手より) 勝手なことばかり申し訳ございません…!

ジーコ いえ、ありがとうございます。すぐには無理ですが、将来的に何かしらできると良いですね。きっとその取り組みが日本サッカーを盛り上げることにも繋がると思います。プロになれなかった選手でも楽しめるサッカーがあること、それがソサイチであること。素晴らしいと思います。私自身もサッカーが好きで、ソサイチが好きで、今でもたまにプレーし、楽しんでいます。今すぐには無理ですが、将来的に何らかの手助けができたらいいですね。

馬場 最後に、元日本代表の三都主アレサンドロ氏もソサイチ東海リーグでプレーしています。ぜひ機会がありましたら日本のソサイチリーグを観にきてください!本日は本当にありがとうございました!

ジーコ アレックスもプレーしているのですね。どこかで観に行かないといけませんね。アレックスにひとつ頼まれごとをしているのを思い出しました。思い出させてくれてありがとう(笑)。

馬場 本当に夢のような時間、ありがとうございました!

ジーコ オブリガード!ガンバッテ!

 ジーコTDからお話を聞き、知らないことがまだまだあるとわかり、これまで以上にソサイチに対する好奇心が湧きました。日本のソサイチは始まったばかりで、普及もまだまだここからです。でも、サッカー王国のブラジルでも60年の時を経ていまのソサイチの形がある。そう思えば、公式リーグの開幕や日本代表チームの挑戦など、大きな節目を含めたひとつひとつの日々の積み重ねが未来を創っていくんだなと、改めて感じることができる機会でした。ソサイチの普及が、日本のサッカーと社会全体をさらに盛り上げることに繋がると信じて今後も活動に取り組んでまいります。

 最後に、ジーコTDのご厚意でサイン入りグッズをご用意いたしました!日本ソサイチ連盟の公式SNSにてプレゼント方法を発表しています。たくさんのご応募をお待ちしております。

FOOTBALL 7 SOCIETY LEAGUE Twitter(https://twitter.com/F7SL_japan
日本ソサイチ連盟 Twitter(https://twitter.com/japan_football7
日本ソサイチ連盟 Instagram(https://www.instagram.com/japan_football7/

指導にあたる鹿島アントラーズ、ジーコTD

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