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いくつになっても「大舞台での強さ」は健在 来季は公式戦でのカズゴールに期待!

2021.12.27

会場となった日産スタジアムを後にするカズ [写真]=元川悦子

「試合にとにかく出ないことにはゴールはできないので、まず試合に出ることにこだわっていきたいなと思います。ここ数年もずっとこだわってやっていたんですけど、結果が出なかったのは自分の力不足。これからもしっかり準備をしてやることは変わらないので、どんなところにいっても、続けながら向上心もって情熱持ってやりたいと思っています」

 2021年のJ1でわずか1分の出場に終わった三浦知良。来季の去就が取りざたされる中、イベントで監督を務めたラモス瑠偉の緊急招集を受けて出場した26日の「JAPAN ALL STAR 2021」でいきなり「カズゴール」を決めた。

 那須大亮率いるYouTuberチーム「Winner’s」との20分ゲームにキャプテンマークを巻き、今季限りで現役を退いた玉田圭司と最前線に陣取ったカズ。だが、なかなか決定機が訪れないまま、終了の時が刻一刻と近づいていく。

 そんな終了間際、絶好のチャンスが訪れる。左サイドの加地亮のマイナスクロスをペナルティエリア内で大津祐樹(ジュビロ磐田)がヒールで落としたボールに反応した背番号11は右足を一閃。試合を決定づける一撃をお見舞いし、公の場で久しぶりのカズダンスを披露した。

「やらなくてもいいかなと思ったんですけど、チームメイトが『やらないんですか』と言うんで『やります』と。リラックスしてシュートが打てたのでよかったです」と爽やかな笑顔をのぞかせた。

 ベンチ前に陣取ったラモス監督も「すごいゴールだったよ。ああいうところで決めるからね」と長年の盟友を絶賛。最終的に2試合合計50分間、54歳のFWをフル出場させた。その采配を受け、カズは「素晴らしい監督です。交代させないのがいいですね、理想です」と茶目っ気たっぷりに言う。2人の息の合った掛け合いも非常に興味深かった。

 エキシビションマッチとはいえ、現役選手が数多く参加した華やかな舞台。そういう祭りの場で結果を出すのはやはりこの男だ。思い起こせば、2011年3月29日の東日本大震災復興支援チャリティマッチでも値千金のゴールを決めている。当時、被災地の少年であり、カズに憧れてプロを目指した菊池流帆(ヴィッセル神戸)もこの日の共演に胸をときめかせたに違いない。

[写真]=Getty Images

 54歳になった今でも高みを目指し、前進し続ける勇敢さに心揺さぶられる人は少なくないはず。取り囲んだ報道陣に1つ1つ丁寧な受け答えをする姿を含め、プロ中のプロだと改めて痛感させられた。

「ゴールの喜び」を再認識したからこそ、カズは2022年、試合に出られる新たな環境へと赴く。「自分の中ではもう絞れている」と語ったレジェンドの新天地として最有力に挙げられているのは、JFLの鈴鹿ポイントゲッターズ。兄・泰年が指揮官を務めるチームだ。

 決まったとすればJ1からは3カテゴリー下がるが、1シーズンフル稼働して、納得できるパフォーマンスを見せるのが現役選手として何よりも大事。そう考えたから、一歩踏み出すことを決断したということだろう。

「もはや現役プロ選手としては難しい」「戦力になっていない」といった酷評も聞かれるが、カズの人生はチャレンジを続けてナンボ。それは16歳で静岡学園を中退してブラジルへ渡った当時から変わっていない。

 Jリーグ発足前の1990年に読売クラブに移籍し、「日本サッカーのレベルを引き上げたい」「日本をワールドカップに出場させたい」と公言した時、バカげていると感じた人は少なくなかったに違いない。

[写真]=Getty Images

 それでも、彼はJリーグ開幕時のスターになり、セリエAの門を叩き、サッカーのステータスを引き上げ、日本をW杯へ導いた。自身はその夢舞台をあと一歩で逃したものの、2012年のフットサルW杯で日の丸をつけてプレーし、2005年のシドニーFC時代にはFIFAクラブW杯にも参戦。世界の舞台で戦った。そして40~50代と年齢が上がっても現役続行を選択。厳しく過酷なトレーニングをこなし続けている。

 つい先日もJ-GREEN堺で伊野波雅彦や井手口陽介らと自主トレを実施。54歳の選手が20~30代のトップアスリートと同じ強度のメニューを消化するだけでも常軌を逸している。「カズさんは『ピッチの上で死ねたらいい』と口癖のように言っている」と松井大輔も胸中を代弁していたが、完全に燃え尽きるまでサッカーを続けるのが、カズの生きざまなのだ。

 そのためには心身両面の限界を超えていくしかない。「1年間しっかりと戦い抜いて、ゴールという結果で自分の力を証明する」と決めた以上、55歳になる来季はやるしかない。高い壁に挑んだ結果、どういう道を歩むかは分からないが、とにかく「やり切った」と納得できる領域に達してほしい。

 ベテランの星がまばゆい輝きを放つ日が再び訪れるのを、今一度、信じつつ、楽しみに待ちたい。(本文中敬称略)

By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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