栃木県の栃木市・壬生町をホームタウンとして県南地域に拠点を置き活動をする、関東サッカーリーグの1部に所属する栃木シティ。
昨シーズンは関東リーグ1部でリーグ優勝するも、あと一歩のところでJFLへの昇格に届かないシーズンとなった。今シーズンこそ悲願の昇格を目指していくために、チームに新たに加入した田中パウロ淳一選手の移籍についてのエピソードや、クラブが考える育成に迫った。
ーーまずは、栃木シティがどのようなチームなのかについて教えていただけますか?
大栗:栃木シティは、1947年に日立栃木サッカー部として発足した76年の歴史があるクラブです。過去にはJFLに8年所属していたこともありましたが、地区リーグに降格をした年に私は関わるようになりました。
現在は、関東サッカーリーグ1部に所属しています。昨季(2022シーズン)はリーグ戦で優勝をし全国地域サッカーチャンピオンズリーグに進出し、3位となりJFL昇格にあと一歩のところまで迫りましたが、惜しくもJFL昇格を逃したシーズンとなりました。
ーーホームスタジアムの建設や育成組織などが充実している印象がありますが、クラブ環境の整備に注力している背景には、どのような理由があるのでしょうか?
大栗:栃木県南部にクラブを根付かせるためにも、この場所からプロの選手を輩出したいという思いがあります。
かつては練習場もなく、夜間の練習では車のライトを照明にしていた時期もありました。まずは練習場をつくり、一昨年ようやくJ3規格のスタジアム「CITY FOOTBALL STATION」を完成させることができました。日本で最もピッチから近いスタジアムというのを売りとしていて、ビッチサイドから観客席までの距離は5mしかないので、スタンドでも我々の良さを伝えることができると思います。
育成組織については、私がこのチームにやってきた際にCSO(戦略統括責任者)を務めていた岸野靖之さんと「逆ピラミッド型のクラブを作りたい」という話をしました。よくあるのはU-15からU-18、そしてトップチームへ、というピラミッド型の構造なのですが我々はその逆の構造としていてクラブを強化するために育成に力を入れていく方針としました。
栃木シティを取り上げていただく際は、スタジアムなどの環境面に注目されがちなのですが、実はアカデミーなどの選手育成に多く投資をしています。ハード面(スタジアムや練習場、アカデミーなど)への投資は、すぐに結果が見えづらい長期的な取り組みですが、着実に進めることができています。
ーークラブを地域に根付かせるために掲げているビジョンなどはありますか?
大栗:今シーズン、クラブスローガンとして『BREAK THROUGH 2023』を掲げました。昨シーズンの全国地域サッカーチャンピオンズリーグは3位という結果でしたが、JFL昇格圏である2位との差は大きいと感じます。「JFL昇格」を目標にしていては、昇格をつかむことはできないと考えています。このクラブにはJ3でも戦える環境がそろっているので、選手だけでなく経営側も「J3参入」に目線を合わせています。
ーー昨シーズンはFiNANCiEのトークンホルダーを対象とした企画も実施していますが、どのような影響がありましたか?
大栗:トークンホルダーの方を対象とした試合のスコア予想やタオルマフラーのデザイン企画などを実施し、多いときで2000人を超えるファン・サポーターの方にスタジアムまでお越しいただきました。私たちとしても、徐々にチームが地域に根付いてきた印象があります。これからもトークンを活用して、地域の皆さんを巻き込んだ企画を増やしていきたいと思います。
ーー続いて田中パウロ淳一選手にお伺いします。まずは、栃木シティへ加入した背景を教えてください。
田中:昨シーズン限りで松本山雅FCを退団することが決まり、その後はJリーグチームへの移籍を検討してたんです。そんな中、栃木シティから声を掛けていただきました。Jクラブでなくても、やり方次第で子どもたちにサッカーの良さを伝えたり、地域に貢献したりすることができる気がしたんです。昨年のリーグ戦では優勝もしていて、チームの強さも持ち合わせているこのクラブに魅力を感じて、入団を決めました。
ーークラブ側としては、今回の加入に際してどのような背景がありましたか?
大栗:元々有名人ですし、山口に所属していた時からずっと見ていました。彼が持っている左足のポテンシャルは、私たちのチームにフィットするだろうなと思い1月に長野まで行きオファーしました。直接現地まで行ってオファーをしたので、熱意が通じて決断したって言ってくれるかなと思っていたんだけどな・・・。
田中:やめてくださいよ(笑) 言っていいか考えて、言わなかっただけです! それが一番の決め手ですし、初めてお会いした際の挨拶が大きい声だったというのも決め手です(笑)
ーーSNSでの発信を積極的に行なっていますが、こうした活動への思いをお聞かせいただけますか?
田中:かしこまった発信よりも、自分の言葉で話した方が多くの方に伝わると思っています。僕のSNSでは面白いネタ系の投稿が多いですが、ときには子どもたちの気持ちに刺さるような真面目なコンテンツをつくることも意識をしています。いまは、「栃木シティのことを知ってもらいたい」「このチームに入りたいと思ってほしい」という思いで取り組んでいます。
ーーサポーターとの距離も近い田中選手ですが、選手の目線からFiNANCiEのトークンホルダーの方と取り組める活動のアイデアなどはありますか。
田中:コロナも落ち着いてきているので、選手と触れ合う機会を増やしていけるといいのかなと思います。自分自身も川崎フロンターレに所属していたころは、多摩川のゴミ拾いなど、街のイベントに多く参加してサポーターの方とたくさんふれあって、「ゴミ拾いに参加していた選手が試合に出ている」と存在を認知してもらうことができました。そういった意味でも、街の人々を巻き込んだイベントをしてみたいと思います。
ーー最後に、お二人から4月から開幕する新シーズンに向けた意気込みをお願いします。
田中:みんなの目標である「JFL昇格、そしてJ3参入」を達成するために、関東リーグでは圧倒的なパフォーマンスを見せたいです。そのためにサポーターが多ければ多いほど強い力になるので、選手もお客さんを呼べるような見ていてワクワクするサッカーをしていきたいです。もちろんSNSでもチームの魅力をアピールしていきます。
大栗:「JFL昇格」は必達の目標です。その先を見据えて、スタッフや運営を含めたチームのスタンダードをJリーグレベルまで押し上げたいですね。いずれ訪れるJ3参入に向けて、競技面だけではなく、運営面にも注力したいと思います。
いよいよ4月1日から今シーズンの関東リーグが開幕します。開幕戦はホーム開催で4月1日となりますので、ぜひ日本一ピッチに近いスタジアムから試合を御覧ください。
日時:4/1(土)16:00K.O.
対戦:東京国際大学FC
会場:CITY FOOTBALL STATION(栃木県栃木市岩舟町三谷1038-1)
By サッカーキング編集部
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