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サッカー専用スタジアムで戦う東京都23区初のJクラブを目指す! 葛飾区と南葛SCが描く未来

2024.07.12

高橋陽一先生(左)と青木克德葛飾区長(右) [写真]=野口岳彦

 2013年に人気サッカー漫画『キャプテン翼』の原作者である高橋陽一先生を迎えた南葛SC。当時、東京都社会人サッカーリーグ3部に在籍していたクラブは、2024年現在、関東サッカーリーグ1部を戦っている。

 高橋先生の出身地である東京都葛飾区からJリーグを目指す同クラブは、地元からのバックアップも受けながら、日本サッカーのトップカテゴリーを目指している。

 一方で葛飾区は2024年春にJR総武線・新小岩駅近くの敷地を取得。サッカー専用スタジアムをはじめとしたスポーツ施設建設を視野に入れている。

 サッカーキングでは葛飾区の青木克德区長と、南葛SCのオーナーである高橋先生にインタビューを実施。南葛SCの未来について話してもらった。

インタビュー=小松春生

[写真]=野口岳彦

―――1981年に連載を開始した『キャプテン翼』が2024年4月で連載を終え、一区切りを迎えました。今後はネームという形で続きますが、はじめに青木区長から高橋先生へメッセージをお願いします。

青木 まずは高橋先生、お疲れ様でした。ありがとうございます、ということですね。一区切りということで残念な気持ちもありますが、ネームという形で将来に向けた内容も発信をしていかれるとのことなので、非常に安心をしました。世界中にたくさんのファンがいる作品ですし、これから先の展開も期待されていると思います。多くの方が引き続き楽しまれるでしょうし、むしろ期待をしています。

高橋 そう言っていただけるのは、ありがたいです。青木区長とは毎年のようにお会いしていますし、サッカーグラウンドなども葛飾区は多く、“サッカーの街づくり”を引き続き、ご一緒できることは大変うれしく思います。

―――葛飾区内のいろいろな場所にキャプテン翼の登場人物の銅像が設置されていますし、キャプテン翼一色の京成電鉄押上線・京成立石駅もあります。また、高橋先生は南葛SCのオーナーでもあり、様々な形で葛飾区への貢献もあります。ここまでの取り組みについて、葛飾区としてはどのように振り返りますか?

青木 『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の銅像を葛飾区内の亀有駅前に置かせていただいたことがきっかけになりました。出版社が同じ集英社さんということもあり、高橋先生の出身地である葛飾区に『キャプテン翼』の銅像も、とお話をいただきました。私自身、『キャプテン翼』が世界中で知られている作品であると存じていましたので、「ぜひ、高橋先生と一緒に」ということになりました。そこから様々な取り組みを進めてきましたが、特に『キャプテン翼CUPかつしか』の開催は10回を数え、日本中から『キャプテン翼』に縁のあるチームにも来ていただけていますし、大会もすごく盛り上がっています。葛飾区内のチームも最近は成績も上がり、区内のスポーツ振興にもつながっていると思います。

 私自身、スポーツは非常に大事なものだと思っています。個人にとってスポーツを生涯通してやることは大事なことだと思いますし、地域の発展のためにもスポーツ振興は大切です。特にサッカーはたくさんの方に喜んでいただけるものなので、ぜひ進めていきたい。46万7000人(令和6年1月1日現在)の葛飾区民の全ての方がスポーツを楽しむ状況を作りたいですね。見るのもいいですし、応援もいいですが、まずは自分でやれることが大事だと思うので、いろいろなスポーツをみんなで楽しめるようにしていきたいです。

[写真]=野口岳彦

―――高橋先生も地元に貢献できる喜びがあると思います。

高橋 私自身は1978年のFIFAワールドカップを見てサッカーを好きになったので、世界最大規模の大会からサッカーの世界に入りました。そして、サッカーの漫画を描き、今は地元に戻り、東京都の一番下のカテゴリーからチームを立ち上げ、地元の方たちが応援できるチームとして活動できていることは感慨深いです。世界の一番上から下まで全部のカテゴリーを見ることができたかなと。

―――葛飾区民や周囲の方からもいろいろな声をかけられていますか?

高橋 生活に彩りができました。「地元に応援できるチームがあることがすごくうれしい」と言っていただけますし、うれしいですね。現在は多いときには2000人以上の方が試合日にスタジアムに集まって応援してくれていて、それを見ると本当にやって良かったと思います。もともと葛飾区にはスポーツのチームや大きな野球場、グラウンドがあるわけでもなく、イベントごとも多くはない地域だったと思いますが、そこに南葛SCができ、葛飾区民の皆さんが一緒に盛り上がっていただけるようになったことは、大変良かったと感じています。

―――葛飾区民の熱や喜びの感情は区長も感じられていますか?

青木 スポーツで言えば、松元克央選手、成田実生選手(ともに競泳)、ウルフ・アロン選手(柔道)といった葛飾区出身のアスリートがパリオリンピック2024に出場予定ですし、スポーツで盛り上がることが区民にも浸透してきていると思います。南葛SCは東京都リーグから少しずつ上がってきていますが、そういう状況は応援する側にとって楽しいことですし、上のカテゴリーへ行けば、もっと応援する方も増えると思うので、ぜひ目指していただきたいです。

―――スポーツをやる喜び以外に、葛飾区としてスポーツをサポートすることで生まれるメリットはどのようにお考えでしょうか。例えば『キャプテン翼』を通じて外国人観光客が増えるなど、経済的なメリットなどもあると思います。

青木 キャプテン翼』は世界的な人気漫画ですし、南葛SCもそうなろうとしていると思います。そういった点ではいろいろなことが期待できます。ただ、第一は葛飾区民が楽しみながら盛り上がり、みんなでスポーツを見て、自分も体を動かし、子どもたちも楽しんでもらうことが大切です。その結果として、葛飾区の知名度が上がり、訪れる方が増えるのであれば、とても良いことですね。

―――『キャプテン翼』、南葛SCを入口にして、いろいろな面を拡充させていきたいお考えはありますか?

青木 南葛SCが一歩ずつ上がっていくことをみんなで応援しながら盛り立てたい。そのための環境整備について、例えば現在のホームスタジアムである奥戸総合スポーツセンター陸上競技場のピッチを人工芝から天然芝に変えようと思っています。選手の皆さんにも安心して戦えるサポートをしたいですね。

高橋 大変ありがたいことです。天然芝になることで、選手がやりやすくなる環境はできると思いますし、JFL(日本フットボールリーグ)参入の基準も満たすことになります。チームの勝利だけでなく、スタジアム含めての整備など、Jリーグへ上がるためには必要なことですし、協力をいただきながら、徐々にですが前に進んでいきたいです。

[写真]=野口岳彦

―――地域リーグからJFLに昇格する難しさは以前からお話されています。チームの強化や現在の立ち位置はどう感じていますか?

高橋 関東リーグ1部からJFLへの昇格が日本サッカー全体の中で、一番大変だと思ってきましたし、関東リーグ1部3季目を戦ってきての実感として、やはり大変だと感じています。その経験を生かしながら、どうしたらいいのかをみんなで考えながら前に進んでいくしかありません。より強いチーム作りや将来的なビジョンも含めて、考えていかないといけないと思っています。

―――周囲からの期待の声も多いと思います。

高橋 長く活動する中、ありがたいことにタカラトミーさんやミヨシ油脂さん といった葛飾区の上場企業をはじめ、多くの企業にも応援していただけるようになりました。“オール葛飾”で、みんなで上がっていこうという雰囲気は作れていると思います。

―――短期的なバックアップだけでなく、長期的な視点で区長の構想があれば、お聞かせください。

青木 新小岩駅近くにある日本私立学校振興・共済事業団の運動場を今年春に取得いたしました。当面は地元に使っていただきますが、将来的な用途について葛飾区内全体で、いろいろな声が挙がっています。皆さんに理解いただき、サッカーのきちんとしたスタジアムを建設することを前提に議論をしています。葛飾区全体では、私が区長になってからサッカー場を3面作りました。他にも最近ではクライミング施設を水元公園に作るなど、いろいろな施設を作っています。それらを活用して、葛飾区がどう盛り上がっていけるか。野球場やバスケットボールコートなど、他競技の施設を要望する声もあります。それら全て含め、新小岩をはじめとした葛飾区エリアでどう配置していくかを検討し始めています。その中で多くの皆さんに応援していただけるスタジアム整備に向けて努力をしていきたいと思っています。

[写真]=野口岳彦

―――高橋先生も世界各地の様々なスタジアムを訪れ、その重要性を重々感じてこられたと思います。

高橋 日本は独特と言いますか、土地も少ないですし、特に東京都23区内にスタジアムを作ることはハードルが高いと常々思っていました。ある意味、葛飾区だからこそ、まだ土地があって、検討できる状況があると思います。これだけ日本のサッカーが強くなった一方、東京都23区内にサッカー専用スタジアムは西が丘くらいしかない状況です。これからの日本サッカーの指針にもなるようなスタジアムの完成を見届けて人生を終えたいなと(笑)。

青木 期待に応えられるようなサッカースタジアムを作りたいですね。ただ、現代のスタジアムはサッカーだけの使用ということはありません。年間通して使える、楽しんでいただける施設であることを含めて、全体を検討していかないといけません。サッカーの試合がしっかりでき、他にもいろいろなイベントができるような、地域の活性化に役立つ施設を建設したいですし、検討を一生懸命に始めたところです。

―――日本では近年、サッカー専用スタジアムが続々と完成しています。また、プロ野球もMazda Zoom-Zoomスタジアム広島やエスコンフィールドHOKKAIDOといった、観客に競技だけでなく、様々な体験、経験をしてもらい、さらには地元経済への貢献まで含めたスタジアムが完成しています。分析、研究もされていますか?

青木 やはり勉強になります。サッカー、野球、最近はバスケットボールのアリーナもできています。スタジアムとしてサッカーをやりつつ、他のこともうまくできるような仕組みができるといいなと思っています。専門家の知恵も借りながらやっていきたいですね。

―――23区内にサッカー専用スタジアムを持つJリーグクラブがないことも大きな挑戦になります。

青木 23区内は課題も多い場所です。住宅などもたくさんありますが、その中で実現できれば話題になりますし、葛飾区民の方、さらには下町エリアのいろいろな方たちが応援できることに必ずつながると思うので、ぜひ実現したいです。

[写真]=野口岳彦

―――高橋先生から見たスタジアムを中心とした未来はいかがでしょう?

高橋 南葛SCがJリーグに上がり、自分たちのスタジアムで試合をすることになれば、他のJリーグクラブのサポーターも全国から来ていただけるでしょうし、そうすれば葛飾区の魅力にも気づいていただけると思います。いろいろな貢献ができるでしょうし、サッカーを中心として、他の分野での交流も生まれてくると思います。それをすごく楽しみにしています。

青木 高橋先生からもお話をいただいていますが、できれば、翼くんの記念館のようなものもあれば、よりお客様に来ていただけると思っています。

高橋 スタジアムの横にはぜひ“キャプテン翼ミュージアム”を併設させたいですね。日本だけでなく、世界中からもサッカーを通じて、翼を通じて、人々が集まる場所になってほしいです。

―――最後に、改めて青木区長から南葛SCにエールをお願いします。

青木 風間八宏監督、選手の皆さんをはじめ、みんなで力を合わせ、成績を着実に上げていってほしいです。我々は側面支援をしながら、葛飾区民みんなで応援していける体制を作っていきますので、頑張ってください。

高橋 ありがとうございます。期待に応えられるようなチームを作っていきます。

By 小松春生

Web『サッカーキング』編集長

1984年東京都生まれ。2012年よりWeb『サッカーキング』で編集者として勤務。2019年7月よりWeb『サッカーキング』編集長に就任。イギリスと⚽️サッカーと🎤音楽と🤼‍♂️プロレスが好き

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