写真=永山晃平
2024年12月15日(日)、滋賀県大津市のびわ湖大津プリンスホテルで開催された「セゾンフットボールクラブ40周年記念オールセゾン77メモリアルパーティー」。この地を発祥とする、セゾンフットボールクラブが長きにわたり歩んできた40年間の歴史を振り返るとともに、未来へ向けた新たな一歩を示したこの記念すべきイベントには、全国各地から約300名が集結した。
小さな街クラブが生んだ14名のプロ選手
1984年、滋賀県大津市で誕生したセゾンFC。創設者の岩谷篤人総監督が確立、体現してきた「センスとテクニックを追求する」オリジナルスタイルは、多くの少年たちの夢を形にしてきた。このクラブからは、スペイン・ラ・リーガやワールドカップの舞台で輝いた乾貴士(清水)をはじめ、14名ものプロサッカー選手が誕生している。彼らの活躍はセゾンFCの育成力の高さを証明するものであり、滋賀の地から世界へと広がるフットボール文化の象徴でもある。
また、プロサッカー選手のみならず、セゾンFC出身者は現在指導者や経営者としてもサッカー界で活躍している。Jクラブの監督や代表取締役GM、強化部長、大学サッカー部の指導者、さらには企業の経営者など、多岐にわたる分野で影響力を持つ人材を輩出してきたのもセゾンFCの大きな特徴である。それらが「育成の名門」と謳われる所以だ。
功績を讃える「オールセゾン77メモリアル感謝賞」
今回の式典では、ここ10年間でクラブに多大な貢献をした7名に対して「オールセゾン77メモリアル感謝賞」が贈られた。受賞者の中には中央学院高校(千葉)の濵田寛之氏、延岡学園高校(宮崎)の大羽洋嘉氏、倉敷高校(岡山)の野村正和氏など、日本全国でサッカー界を支える指導者たちが名を連ねた。各校、近年岩谷氏を招聘し、結果だけでなく内容にこだわったチーム強化を行っており現在セゾンFCの選手が多数進学する流れとなっている。岩谷総監督が「日本が世界で頂点に立つためのフットボール」を目指して築き上げたスタイルは、こうした指導者たちの手を通じて、上のカテゴリー、次世代へと受け継がれていく。
昨年、不慮の事故で48歳の若さで他界したセゾンFCコーチングスタッフの野田雄司氏にも同賞が贈られ、このクラブを愛し、指導者人生に情熱を注いだ同氏の功績を讃えた。「この場をお借りして、主人を支えていただいた全ての方々に感謝申し上げます。」しのぶ夫人の言葉は、野田氏を思い出し、彼の想いを改めて大切にしたいとその場にいる全ての方々の心を一つにした。
OBスピーチに込められた想い
続くOBスピーチでは、プロサッカー選手になった14名の中から、倉貫一毅氏(6期生・前YSCC横浜監督)や望月嶺臣氏(22期生・LUA FC監督)らが、自身の経験を元に現在セゾンFCでプレーしている後輩たちに向け力強くエールを送った。倉貫氏は「セゾンにいたらセンスとテクニックは身に付く。プロでやりたいなら、タフになれ。困難にぶち当たった時に乗り越えられる力を身につけろ。」という心のタフさの重要性を説き、望月氏は「このクラブと岩谷総監督がいなければ今の自分はいない。」と感謝を述べた。その言葉の端々から、クラブが選手たちに与えた影響の大きさが伺えた。彼らが選手としての技術だけでなく、人間としての成長をもこのクラブで培ってきたことが感じられた瞬間であった。
岩谷篤人総監督が語る40年の歩みと未来
セゾンFCの創設者であり総監督を務める岩谷篤人氏のスピーチも、来場者の心を深く打った。「私のサッカーは時間がとてもかかる。海外で試合をしてもそのセンスとテクニックを世界中の屈強な選手も何度も怖がってきた。だから世界一のフットボールなんです。」その言葉は、長年にわたり掲げてきた自身のフットボールスタイルへのこだわりと自信、未来へ向けた挑戦への強い意志を示すものであり、会場全体を鼓舞するものとなった。
地域と全国に広がるクラブの絆
セゾンFCは現在、滋賀が本拠でありながら、大阪、愛知、岡山で活動している。それぞれ13周年と12周年を迎え、今回の式典ではそれを祝うのも大きな目的の一つであった。各セゾンが活躍し、地域ごと、指導者ごとの特色を生かしながら発展している。大阪セゾンの加藤雄一監督は「指導者が変わってもセゾンのサッカーに必ずなるのがこのクラブの凄いところだ。」と語り、愛知セゾンの中野俊和監督は「私はOBではないが、私なりのやり方でこれからも技術にこだわり続ける。」と述べ、岡山セゾンの妹尾真人監督は「私もOBではなく、(立ち上げの際)セゾンの看板は何よりも重かったが、これからも誇りと自信を持って魅力ある選手を育成していく。」と決意を新たにしていた。それぞれの活動がクラブ全体の活力となり、日本のサッカー界への貢献を強化している。
50周年に向けた一体感、新たな取り組み
式典の最後には、クラブ全体の舵取りを担っている今村公治GMが登壇し、「小さいが、特別なこのクラブのこだわりと誇りを持って、50周年の未来に向け、オールセゾンファミリーで歩んでいきたい。」と語った。クラブ運営の充実や選手育成環境の向上を目指し、具体的な取り組みとしてクラウドファンディングの活用も示された。この40周年記念事業の一環として実施されているクラウドファンディングは、12月26日(木)まで挑戦中である。地域の枠を超えて応援するファンが支援の輪を広げており、クラブの未来を支える重要な役割を果たしている。
「50周年の未来に向けて」――新たな挑戦をし続けるセゾンFC
「この国には、小さいが特別なクラブがある。」
セゾンフットボールクラブは、単なる「街クラブ」の枠を越え、全国的な影響力を持つ存在へと成長している。その成長の背景には、創設以来一貫して大切にしてきた揺るぎない信念とこだわり、誇りと、それを支える人々の情熱がある。
その歴史は、Jクラブでもプロクラブでもない「小さな街クラブ」としての挑戦の歴史であり、多くの少年たちの夢を支え、育み続けてきた軌跡であった。サッカーが単なるスポーツではなく、人生を切り開く力となることを体現してきたクラブの存在意義は、これからも変わらないだろう。
今回のプロジェクトにつけられたキャッチコピーにそれが集約されている。
50周年に向けて新たなスタートを切ったセゾンフットボールクラブ。このクラブが描く次の物語に、多くの期待と夢が込められている。今後どのような新たな歴史が紡がれるのか。その未来に思いを馳せつつ、この日の感動を胸に刻みたい。
写真=永山晃平
文=山口伊織
By サッカーキング編集部
サッカー総合情報サイト