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明かされた磐田の新兵器…開幕戦2発も謙虚なジェイ「チームが勝つために」

2015.03.08

J2開幕戦で2ゴールを決めた磐田FWジェイ(左)

 衝撃の2ゴール。そして一気に膨れ上がる歓喜の輪。ジュビロ磐田の元イングランド代表ストライカーが、ついにそのベールを脱いだ。

 8日に行われたギラヴァンツ北九州とのJ2開幕戦。17分に直接FKから先制点を許した磐田は直後の18分、アダイウトンのロングパスに鋭く飛び出したジェイが、飛び出してきた相手GKよりも素早く右足で触れると、そのままボールが無人のゴールへ転がって同点に追いつく。「ピッチが濡れていたので、最初にコントロールしたボールがイレギュラーした。ラッキーだった」という新エースのJリーグ初ゴール。続く37分には「ヨシ(太田吉彰)が素晴らしいクロスを上げてくれた。自分はフリックしてコースを変えただけ」と謙虚に振り返るヘディングでチームを逆転に導いた。初めてサックスブルーのユニフォームをまとってサポーターの前に立ったゲームで、圧倒的なインパクトを残すことに成功した。

 身長190センチの新エースを「ギリギリまで隠したい」と考えた名波浩監督は、ライバルチームがスカウティングに訪れるであろう開幕直前の練習試合を非公開に設定。「開幕したら仕方がない」とは考えつつ、情報漏れを極力避ける段取りをつけてスタートダッシュに備えた。まずはその成果が実った形だ。

 初めてジェイを目の当たりにした北九州の柱谷幸一監督は「規格外の高さとパワー。J1でも十分に通用するレベル」と評価した。

 敵将にそう言わしめたポテンシャルは、試合中の至るところで発揮された。前半には縦パスを受けた瞬間に軽快なルーレットで背負っていた相手DFをかわしてサイドへ展開。パスコースへ積極的に顔を出し、懐の深いポストプレーや高身長を生かしたヘディングで前線のターゲットとなった。背後からのプレッシャーをものともしないパワーは、まさにイングランド仕込み。名門アーセナルで育ち、各年代のイングランド代表で中心選手として活躍した実績がダテではないことを証明した。

 チーム始動から3週間遅れて合流したこともあり、まだ90分間プレーできる体力は持ち合わせていない。実際、この試合でも後半は明らかに運動量が落ちた。ジェイ自身も「練習試合だけでは100パーセントには持っていけない。本番を重ねてコンディションを上げていきたい」と語り、名波監督も記者会見で「まだ8割くらいの状態」と現状に触れている。だが、指揮官は合流初日からしなやかなボールタッチを見せていたジェイに「やっぱりアーセナルだよ」という第一印象を持ち、さらに「決定力やボールの収まり方はトト(スキラッチ)並み」と、かつて一緒に黄金時代を築き上げた元イタリア代表FWの名前を挙げる。現時点で指揮官から受けている評価は最大級と言っていい。

 ゲームメーカーのMF上田康太は「足下がうまいから、できるだけシンプルに預けるようにしている」と言い、アタッカーの太田は「あれだけ背が大きければ自信を持ってクロスを入れられるし、いいボールを入れれば必ず決めてくれる。そうなれば相手が警戒して自分がシュートを打つ形も出てくる。それがチームとして大きな武器。2点目は(ジェイとの)直前のアイコンタクトで出してほしいコースが分かった。あの形はこれからも続けていきたい」と今後に大きな手応えを感じている様子だ。

 いきなり強烈な印象を残したことで今後は相手チームから激しいマークを受けることが予想されるが、「マークがキツくなる? それもサッカーだし、相手を研究するのはお互いさま。もしそうなったとしても、チームが勝つために自分の良さを出すために全力を尽くすよ。もしチャンスで決められなかったとしても、次に決めればいい」と余裕の表情。全くと言っていいほど本人は意に介さない。これもストライカーのメンタリティなのかもしれない。

 ゲームを重ねるごとに向上していくであろうジェイのコンディションと周囲との連携が楽しみでならない。先制された直後に同点弾を決めることで前を向く強いスピリットを見せることもできた。ジェイ自身も「こういう姿勢も含めて、自分の経験を還元していきたい」と穏やかに、しかし力強く語る。その裏側には「ジュビロは2部にいるべきクラブではない」という思いがある。J1昇格は最低目標。その先にはJ1で結果を出せるクラブにしたいとも考えているという。

 何を聞かれてもチームメートの素晴らしさを例に挙げ、チームの勝利のためにプレーすると言うジェイ・ボスロイド。「ジェイ」の名で登録された左利きの元イングランド代表が、磐田に新風を吹かせている。

文=青山知雄

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