横浜FM戦で決勝ゴールを挙げた佐藤寿人 [写真]=Getty Images
劇的な逆転ゴールだった。アウェイで横浜F・マリノスと対戦した一戦。1-1で迎えた65分、サンフレッチェ広島のFKの場面。ライン際には、すでに佐藤寿人と交代する浅野拓磨が準備をしていた。
「(拓磨が)見えたのが、もう本番のセットプレーだったので。このキックを蹴る前に代えられるかなと。でもなんとかこのFKだけではやらせてくれ」。
佐藤の願いが届いたのか、交代の前に柴崎晃誠が右手を挙げてFKのボールを蹴り出した。ファーで競ったボールを、水本裕貴が右足でシュート。GKが弾いたボールに佐藤が詰めていた。
「最後のワンプレーだなと思っていた。『今日も取れないかー』と90パーセントくらいは思っていて、でも残りの10パーセントで『ここで来い!』」と思っていた佐藤の足下にボールがこぼれてきた。そして左足でちょこんとゴールに流し込んだ。
試合後、開幕戦以来となるゴールに自然と笑みがこぼれた。
「ミズも難しい態勢で打ってくれていたので、逆サイドに流れてくると思いましたし、いつもの『入れ』というよりも、『こぼれてこい!』と思って準備していた。ちょうど長男が広島で『3点取ったよ』という報告をしてくれていたので、負けられないなと思っていたし。まあ数字では負けましたけどね(笑)」。
序盤は決してラクではなかった。守備がうまくハマらず、横浜FMにリズムを作られた。そして開始4分での失点。うなだれてる暇はなかった。ボランチの青山敏弘がボールを奪いに前に出る。流れの中で少しずつ修正しリズムを取り戻していった広島は、27分に新加入のドウグラスが同点ゴールを決めて完全に主導権を握った。そして勝敗を分けたのが、佐藤の逆転弾だった。
今シーズンは先発出場こそしているものの、決まって60分~80分で途中交代している。しかし、佐藤は前向きに捉えている。「ピッチに立つ時間も20代の時とは違っていて、いろんな判断でこういう時間になっていると思うんですけど、その中で何ができるかというところは自分自身のプラスにしていかないといけない。今日点を取っても、物足りないのには変わりはない」。
J1通算147ゴール目を決めても変わらない、ゴールへの飽くなき執念と向上心。「限られた時間内で自分が数字を残せば、途中から入ってくる選手ももっと(数字を)伸ばせると思う。前の選手がチーム全体で点を取っていかないと上にはいけない」。広島の勝利のパターンの一つ“先手必勝”に向けて、まずは先制点を渇望する。