文=青柳舞子
6日に行われた明治安田生命J2リーグ第17節でジュビロ磐田とツエーゲン金沢が対戦した。
1-2。公式記録に記されたスコア以上に、ツエーゲン金沢にとって、この日の試合内容は苦しい展開が続いたゲームだった。シュート数で言えば、ジュビロ磐田は19本。対するツエーゲンは4本。その数字を見れば、耐え続けた時間の長さを物語る。
おそらく、心に秘めた悔しさは相当だったはずだ。それでもミックスゾーンに出てきた選手たちの表情は、どこか清々しく、時折笑顔さえ見せることもあった。
第17節を迎えた時点で、2位を走っていたツエーゲンと3位のジュビロの対決となったこの日、明け方まで降り続いていた雨が上がり、澄み渡る青空がヤマハスタジアムに広がっていた。1万2千人を超える観衆の中で美しい緑の芝は一層輝き、「ジュビロ磐田」の大声援がこだまするサッカー専用スタジアムは、ツエーゲンからすれば完全なアウェーだったが、素晴らしい雰囲気に包まれていた。
加えて、「ツエーゲン金沢が(J2リーグの第4節から)13試合負けなしで来てくれ、ジュビロがそれを止めようと(いう気持ちが)、モチベーションを1つ上に上げてくれたのかなと思う」という名波浩監督の言葉どおりに、この日のジュビロの集中力やボールへのアプローチは気迫にあふれ、「勝つ」ことへの強い気持ちがプレーに現れていた。
最高の雰囲気、最強の相手。Jリーグの中でも屈指のタレントがそろい、J1昇格の有力候補であるジュビロの「強いし、うまい」(清原翔平)を最大限に引き出したのは、間違いなく今シーズンのJ2でツエーゲンが積み上げてきた結果の証だった。
「ツエーゲンの記録を止めるのは俺たちだ」サックスブルーのハートに激しい闘志という名の火をつけ、そして、第17節のツエーゲンの記録には黒星がついた。
「見に来てくれた人の心に残るような試合をしたい」エースでありキャプテンマークを巻く清原は、そんなふうに思いを話ってくれたことがある。
ツエーゲンの特徴でもあるチームワークの良さや一生懸命にボールを追い仲間を信じて走り続ける“最後まであきらめない”は、選手たち一人ひとりのそんな思いから生まれてきた。
猛攻をあびたこの日もそうだ。時計の針が90分を指していたコーナーキック。山藤健太のキックに太田康介が頭でつなぎ、清原が体ごと押しこむように決めた“1点”は、ツエーゲンの象徴であり「次につながる」(森下仁之監督)ゴールでもあった。
明日への希望となる“1”があるから、悔しくてもなお、見せられる笑顔もある。
「14試合ぶりの敗戦になりましたが、今日の敗戦でこれまで自分たちがやってきたことがなくなるわけじゃない。自分たちを信じて、またやっていこう」(森下監督)
11月まで続く長いリーグ戦は、まだ3分の1を消化したに過ぎない。快進撃を続けるツエーゲンは、これまで以上に厳しく苦しい戦いが増えるだろう。それでもきっと、ガムシャラにたくましく戦う姿は変わらない。
あきらめないことの大切さを、強さを、この試合でまた手に入れたはずだから。