文=青山知雄
「僕らにとって浦和レッズは特別なチーム」と気迫を燃やしていた青山敏弘の右足が、無敗街道を突き進む浦和に土をつけた。
19日に行われた2015明治安田生命J1リーグ・2ndステージ第3節で、アウェーの埼玉スタジアム2002に乗り込んだサンフレッチェ広島は、35分に先制点を許しながらも後半に2点を奪って逆転勝利。2ndステージ3連勝で首位を堅持するとともに、浦和に今シーズン初黒星をつけた。
1-1で迎えた84分、カウンターで抜け出した浅野拓磨がピッチ中央を独走。そのままペナルティエリア付近まで持ち込んだところで相手DFに止められたが、このこぼれ球に走り込んだ青山が右足一閃。「コースが開いていたんで蹴るだけでしたね」と笑顔で振り返ったボランチの一撃で広島が逆転に成功した。
冒頭に記した思いは、試合後のミックスゾーンで青山が口にしたコメントだ。言葉のとおり、青山にとって、そして広島にとって、浦和は因縁深いクラブ。かつて自分を抜てきしてくれたミハイロ・ペトロヴィッチ監督だけでなく、槙野智章、柏木陽介、西川周作、森脇良太、石原直樹といった紫のユニフォームを着て一緒に戦った元チームメートが数多く在籍し、青山自身もオファーを受けながら広島残留を決断した経緯もある。2013年のJリーグアウォーズでベストイレブンに選出された際には、「自分がこの場に立てているのは、僕を育ててくれたペトロヴィッチ監督のおかげです」とコメントし、壇上から敵将でもある恩師に向かって「ミシャ、ダンケシェーン」とお礼を述べていたほどだ。
強い気持ちはゴール後のパフォーマンスからも伝わってきた。両手を広げてゴール裏サポーターの元へ駆け寄り、高く飛び上がって力強くガッツポーズを突き上げた。これで広島は2ndステージ開幕3連勝。年間勝ち点も43に伸ばし、首位の浦和に2差と迫った。まだまだ戦いは始まったばかりだが、選手たちは大きな目標を見据えている。
「価値のある勝利だけど、これを続けていかないと意味がない。そうしていった時に、この勝利に本当に意味が出てくる」
大きな勝利を手にしても、これからの試合で取りこぼしていたら仕方がない。結果を出し続けることで、初めて浦和から勝ち点3を奪った真の価値が生まれる。ストイックに上を目指す大型ボランチが、頂点奪回に向けて全力で走り続ける。