米本(左)は代表戦の悔しさをバネに、気持ちの込もったプレーを見せた [写真]=鷹羽康博
FC東京は16日、明治安田生命J1リーグ・セカンドステージ第7節でガンバ大阪と対戦し、2-1で勝利を収めた。日本代表MF米本拓司は15分に先制点を挙げ、同点とされた後の58分には勝ち越し弾の起点となった。
試合終了とともに勝利の立役者は両手の拳を握りしめ、喜びを噛み締めた。
「もうちょっと得点だったり、アシストをしないとダメだと自分自身で分かっていた。代表に行って、もっともっと攻撃の幅を広げないといけないっていうのを思い知らされていた。今日はそういう部分が出せてよかった」
両チーム合わせて8人の代表選手がピッチに立ち、3万7978人の観衆を集めた注目の一戦。米本自身も期するものがあった。
「(他の代表選手に)負けたくないという気持ちがすごくありましたし、僕は(東アジアカップで)1分も出られなくてすごく悔しい思いしたので、それをバネにしてもっともっと成長できればいいなという気持ちでやっていた」
大粒の雨が降る中、始まった試合。立ち上がりはG大阪ペースで進んだ。中盤を支配し、宇佐美貴史を中心に東京ゴールに迫るものの、青赤の背番号「7」がゲームの流れを一変させる。15分、中央の羽生直剛から右サイドでボールを受けたネイサン・バーンズが相手DFを外し、グラウンダーのクロスを入れる。そこに米本が飛び込み、ゴールネットを揺らした。
「(前田)遼一くんがけがで(ピッチの)外に出ていて、中に人がいなかったので、思いきって飛び込んでいった。そうしたらバーンズからいいボールがきて、合わせるだけだった。入ってよかったです」
昨年の同日に行われた、第20節のサガン鳥栖戦以来となる米本の一発で先制したFC東京だったが、後半立ち上がりの47分にパトリックに同点弾を叩き込まれた。FC東京はすぐさま反撃に出る。58分、自陣中央でセカンドボールを拾った米本がドリブルを開始。グングンと加速しながらゴール前で右に展開し、羽生がファーサイドにクロスを上げ、フリーで待ち受けていたネイサン・バーンズがダイビングヘッドで勝ち越しゴールを挙げた。
「相手のプレッシャーがそんなに強くなかったっていうのもありますし、ボールの奪い方もよかった。前半にはボールを奪ってから河野(広貴)くんがバーに当てる場面もあった。チーム全体としていい形でボールを奪えていた。一人ひとりがチームのために走っていた。僕とかバーンズだけじゃなくて、本当にみんなで勝ち取った勝ち点3だと思う」
ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が視察に訪れたこの一戦は、米本にとっての“リベンジ”の機会だった。
「(ハリルホジッチ監督からは)テクニックの部分はすごく言われていた。1分も出られないっていう悔しさもあって、もっとうまくなってやるんだっていうのと、代表の選手は本当にうまい選手ばかりだった。何かひとつでも吸収して帰ってこようと思っていたので、そういうのがこの試合で表れた」
過去には、選手生命を脅かす2度の大けがに見舞われてきた。大きな壁に阻まれるたびに、プレーができる喜びを知り、サッカー選手として成長を繰り返した不屈の男だ。東アジアカップでの苦境が、一皮むけた新たな自分への成長を促していく。