会見に応じたFC岐阜の恩田聖敬社長(中央) [写真]=Kazuhito Yamada/Kaz Photography
FC岐阜は23日、代表取締役社長の恩田聖敬氏がALS(筋萎縮性側索硬化症)の症状が進み、業務が困難になったため辞任を決断したと発表した。
恩田社長は、今年1月30日に全身の筋肉が動かなくなる難病であるALSの発症を公表。ALSは、2014年にアメリカで始まり、サッカー選手や政治家、アスリートなどの著名人たちが参加し社会現象化した運動『アイス・バケツ・チャレンジ』で有名になった。恩田社長は発症を公表した当時、「このALSという病気は、身体は動かなくなるが、命までは取られない。感覚、知覚、意思、判断にも影響はなく、私は、『わたし』のままでいられる。ならば、今まで通り社長業を続けられる限りは続けて、『ぎふ』のために働きたい」として、社長を続けていた。
岐阜は、23日に行われた2015明治安田生命J2リーグ第42節でアビスパ福岡と対戦し、1-4でホームでの今季最終戦を黒星で終わった。試合後、恩田社長は会見を開き、「社長に求められるのは、リアルタイムでの意思判断、スピーディーな意思決定、トップセールスを含めた交渉、そして、何よりクラブの理念を語ること、などが有ると思いますが、今の私にはどれも難しいです。このままでは、多くの方にご迷惑を掛ける事になります。私の願いは、社長を続けることではなく、FC岐阜が岐阜にとって、無くてはならないクラブになることです。その為に、私は本日を以って事実上社長を退任致します」と語り、辞任を発表した。
また、会見では、「本日スタジアムにお越しの皆様を含め、全ての関係者の皆様、本当に苦しいシーズンを共に進み、共に闘って頂き、ありがとうございます。皆様の期待を裏切り続けた一年でしたし、最後の最後まで残留争いを、不本意ながら演じてしまいました。大変申し訳ございません」と残留圏内ぎりぎりの20位で今季を終えたことに謝罪のコメント。
「しかし、得るものもありました。それは、皆様の一つになった大きな声援です。今年一年で一番成長したのは、チームでもクラブでもなく、皆様の応援でした。一緒にどん底を見て、一緒に這い上がってくれて、本当にありがとうございます。もう一つ得たものは、J1ライセンスです。皆様のご協力のお蔭で、このスタジアムもクラブハウスを含めた練習環境も、大きく来シーズン生まれ変わります。私達も、とても楽しみにしています。私達にチャンスを与えてくれてありがとうございます」と続けて、前向きに今季得た収穫を明かした。
自身の病気に関しては、「たくさんの励ましを頂きました。そのお蔭で何とか今まで社長を続けて来ることができました」とするも、症状が進行したため、「私を社長にしてくれたJトラスト株式会社代表であり、当社の筆頭株主である藤澤さんとも色々な話をして、今の自分がこれ以上社長を続けることが、FC岐阜の為にはならないと判断をしました」と辞任の経緯を説明。「悔いは無いと言えば嘘になります。私は、これまでの仕事をしてきた人生の中で、初めて天職と言える仕事に出会いました。もっと、多くのお客様を笑顔にしたいと思いましたし、もっとサポーターやスポンサーの皆様の応援に応えたかったです」と未練を残しつつ辞任を決断したという。
そして昨年4月に就任し約1年半の間、社長を務めた恩田氏は、「サッカーに関わる皆様の誠実さや、温かさを改めて感じました。そんな皆様の支えのお蔭でALSという病気になっても、充実した幸せな時間を過ごせました。ただ、感謝の想いです」と闘病を支えてくれた感謝を示し、最後に、「FC岐阜は、まだまだ発展途上です。今後も、FC岐阜が夢を与え続けることができるクラブになっていく事を願っています。一年間、就任から二年間、本当にありがとうございました。これからもFC岐阜をよろしくお願いします」と語った。
なお、今後は「次の体制に、良い形でバトンタッチをすることに専念し、経営の最前線からは退きます」とし、何らかの形でクラブに関わっていくとした。
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