会見に臨んだ田村貢社長、吉田達磨新監督、神田勝夫強化部長(左から)
柏レイソルの監督をわずか1年で退任し、今年クラブ創設20周年の節目を迎えたアルビレックス新潟を率いることになった吉田達磨新監督が7日、本拠地のデンカビッグスワンスタジアムで就任記者会見に臨んだ。昨季に引き続きJ1最年少となる41歳の指揮官は「20周年の歴史の中で、地域とともに戦ってこられたファンやサポーター、スポンサーの方々の前で仕事をするんだと想像すると、期待と興奮と同時にプレッシャーを感じている。自分のやりたい、理想とするパワフルなサッカーができるベースがここにはある」と引き締まった表情で抱負を語った。
吉田監督は現役時代に柏などでプレーし、引退後も10年以上にわたって柏でU-15やU-18の監督を始め、強化部門を統括するダイレクターなどを歴任した。そして満を持して2015シーズンから監督に就任したものの、クラブの“方針転換”により昨年10月にシーズン終了をもって退任することが発表された。最終的に明治安田生命J1リーグで年間10位、AFCチャンピオンズリーグのベスト8と天皇杯ベスト4という成績を残し、複数のクラブが招へいに興味を示した中、新潟が昨季限りで退任した柳下正明監督の後任として白羽の矢を立てた。
新潟について吉田監督は「昨季最終戦で対戦した時にスカウティングで映像を何回も見た。戦いのパワーやペナルティーボックスに入るパワー、そこでの迷いのなさ、攻撃陣のタレント……。雑な表現だが『いいな』と思っていた」と好印象を抱いていたという。そういった経緯もあり、就任要請を受けると「決意するのに全く時間はかからなかった。すぐにでも返事したい気持ちだったが、段階があるので少し待った。ただ、話をいただいた時点で心の中では即答していた」と迷うことなく快諾した。
柏で最後に指揮を執ったのが、昨年12月29日の天皇杯準決勝で浦和レッズに0-1と敗れた一戦。それからまだ1週間あまりと日は浅いが、小雪の舞う新天地に足を踏み入れ、「レイソルを回想することは、天皇杯で負けて終わった時点で僕の中ではシャットアウトしている。そこには戻らない。ここから前に進むと決めている」と力強く言い切った。
柏ではボールを保持して主体的に攻める「ポゼッションサッカー」を標榜してきたが、堅守速攻のイメージが強い新潟ではどのようなスタイルを打ち出すのか。「これまで柳下監督がベースとしてチームに残しているタフさ、これを全面的に出さなければいけない」と話す。具体的な戦術については「まず選手に伝えなければいけない。彼らが開幕までにある程度ピッチで表現できるような状態になると思うので、そこを見ていただきたい」と多くを語らなかったが、言葉の端々から攻撃サッカーへのこだわりをのぞかせた。
昨季リーグで2番目に多い58失点を喫した守備の立て直しが求められる中、「みんなでゴール前にいれば失点は簡単に減ると思う。ただし、攻めなければいけないし、攻めていく。そういった意志をチームには求めたい」と強調する。また、柏時代から何度も目にしてきた光景について言及し、「このスタジアムに来ると、いつも 『NO MOVE NO FOOTBALL』という横断幕が目に入る。本当にそのとおりだと思う」と、サポーターの思いと自らの哲学との共通点を見いだした。
チームには吉田監督にとって柏U-18時代の教え子でもあるFW指宿洋史が在籍しているが、現時点では目立った補強はなし。田村貢社長は「昨年は本当にタイトルを取る陣容をそろえて臨んだつもり。今年も陣容はほぼ決まっている」と現有戦力を中心に戦うことを明言した。一方、コーチ陣はJ2ロアッソ熊本から北嶋秀朗コーチ、柏U-18からは安田好隆コーチを招いており、指揮官のスタイルをよく知る参謀が脇を固める。
柏での挑戦は志半ばで終わったが、その経験を糧にして次のステップへ進む。「プロだし、新監督だし、この年齢だから(周囲が)言いやすいし(いろいろなことを)言われやすい。そういったものも十分理解している。ブレずに選手たちを信頼し、自分を信頼してやり続ける。これが最終的には結果につながっていくというのが、去年の経験を踏まえて自分の中で導き出された一つの結論。日々のトレーニングを大切にやっていく以外、監督としてのやり方は今の僕には見えないし、ないと思っている」と、改めて地道にチームを作り上げていく強い信念を口にした。
文・写真=田丸英生(共同通信社)
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By 田丸英生