井上(左)は鄭大世ら清水の強力攻撃陣とも堂々と対峙した [写真]=平柳麻衣
「潮音が流れを変えてくれた」。22日に行われた2016明治安田生命J2リーグ第14節の清水エスパルス戦後、東京ヴェルディのFW高木大輔は、今季ユースから昇格したMF井上潮音の途中出場を勝因に挙げた。
リーグ戦9試合未勝利で迎えた清水戦は、立ち上がり6分に失点を喫する苦しい展開となった。しかし、南秀仁の負傷というアクシデントにより39分に投入されたルーキーが、チームに良い流れを引き寄せた。「前半の途中という難しい時間だったし、いきなりだったので予想はしてなかったけど、いつでもいけるような準備は前の日からしていたので、勢いを持って入れた」と井上。
この試合で4-1-4-1のシステムを採用していた東京Vは、井上をボランチの一角に入れ、4-4-2に変更。生きのいい井上のプレーでチームが勢いづくと、44分に高木大のヘディング弾が決まる。そして同点で迎えた前半アディショナルタイム、ペナルティーエリア手前で高木大からパスを受けた井上は、思い切りよく右足でシュート。ボールは相手DFに当たって防がれたが、こぼれ球をゴール前に走り込んでいた高木善朗が豪快に蹴り込み、東京Vが逆転に成功した。
後半は、攻撃的な選手を投入してきた相手に押し込まれる時間帯もあったが、何とか耐え凌ぎ、2-1でタイムアップ。大挙して押し寄せたアウェイサポーターの前での会心の勝利に、「(アウェイサポーターの多さを)逆にパワーにするぐらい気持ちが入っていた」と頼もしく述べた18歳は、「僕のおかげで勝てたと言えるか分からないけど、自分が入ってから前半のうちに2点が取れて、後半は相手が攻撃の選手を入れてきた中で守り切れたことは自信になる」と笑顔を見せた。
第11節のモンテディオ山形戦で先発出場し、プロデビューを飾った井上だったが、その後の2試合はベンチ外。それでも「今の自分はまだ安定してメンバーに入れるわけではないので、メンバーに入っても入らなくても、常に自分が成長するために練習しようと決めていた」と自分自身のメンタルと上手に向き合い、地道にトレーニングに励んでいた中で再び訪れたチャンスをモノにした。
また、サポートしてくれる良き先輩にも恵まれた。ユース時代からの先輩である高木大は、井上の課題を指摘し続けていたという。「潮音には、『お前はうまいけど、もっと戦えなきゃダメだよ』って、うざがられてもいいと思いながら言い続けてきた。今日は本当に戦っていたし、潮音が流れを変えてくれたと思う」(高木大)
先輩から檄を飛ばされ、「大輔君に言われていたように、“戦う”部分が自分の課題だったので、今日はそういう姿勢を見せていこうと思っていた」と井上。167センチ、60キロという小柄な体格だが、「相手が何をしようとしているか予測できれば守備も通用する」と、豊富な運動量と鋭い予測から要所で効果的なプレーを見せ、体格のビハインドを感じさせなかった。
攻撃面では、「永井(秀樹)さんと毎日練習していた形」のビッグチャンスもあった。52分、味方との連係から相手のクリアミスを拾い、ペナルティーエリア内でシュート。しかし、キックはミートせず、わずかにゴール右へ外れた。これには「ロッカールームで永井さんに『何やってんだよ』と言われた」と苦笑いしながら、「練習での取り組みが出たと思う。チャンスを決められるか、決められないかは選手としての差になるので、普段の練習から真剣に取り組んでいきたい」としっかり反省。攻守においてアクセントを加えられるだけでなく、自らも決め切れる選手となれば、プレーヤーとしての幅が広がり、需要は増していく。
1997年生まれの井上は、東京オリンピックが開催される2020年に23歳となる“東京五輪世代”の一人。2014年にU-18日本代表に選出されて以降、年代別代表への招集はないが、当然頭の片隅では意識している。「今は(U-19日本代表に)入っていないことが事実だけど、メンバーや試合結果は見ている。やっぱりそこに入れたら新しい発見があると思うので、入れるように練習から取り組んでいきたい」
世界の景色を見るために、まずはチーム内の競争に勝たなければならない。「次もメンバーに入れる保障はないし、これで満足せずにアピールを続けてくことが大事」。プロ2試合目で大きな存在感を放ったが、まだまだ伸びしろ豊富な18歳。ジュニア時代から東京V一筋の生え抜きルーキーは、個性豊かな先輩たちの背中を追いながら成長を続ける。
文=平柳麻衣
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By 平柳麻衣


