C大阪の清原は加入後J2初先発となった岡山戦で同点ゴールを決めた [写真]=Getty Images
昨シーズンはクラブ史上最高位となる5位に入り、最後はセレッソ大阪との昇格プレーオフ準決勝でスコアレスドローに終わり、レギュレーションによって涙を飲んだ愛媛FC。その躍進を思い出す時、シーズン途中から完全移籍で加わり、藤田息吹とともに愛媛の中盤を引き締めていた小島秀仁の活躍を忘れるわけにはいきません。宇佐美貴史や柴崎岳と同い年に当たるプラチナ世代の旗手として、2009年FIFA U-17ワールドカップでは全試合でスタメン起用され、ネイマールやフィリペ・コウチーニョとも対戦した小島は、世代屈指のボランチとして高校卒業後に浦和レッズへ加入。しかし、厚い選手層の前に出場機会を阻まれ、1年間の期限付き移籍で加わった徳島ヴォルティスでも定位置確保には至らず、前述したように昨年の7月に愛媛へ完全移籍。ようやく伊予の地でJリーグでの実戦経験を積み始めている最中です。
そんな小島は栃木県生まれですが、高校時代の3年間を過ごしたのは、今節でアウェイチームとして乗り込む群馬。対戦相手に所属するDF川岸祐輔とFW小牟田洋佑は、前橋育英高校時代の同級生という因縁もこのゲームには隠されています。その群馬は、前節で清水エスパルスにJ2史上初となる8点差での惨敗を喫しており、順位も20位まで後退。チーム状態は“底”と言ってもいいような苦しい時を過ごしています。ただ、現在16位に位置する愛媛にとっても、アウェイとはいえここは確実に勝ち点3を確保しておきたいところ。小島の凱旋ゲームとなるこの一戦は、前節のパフォーマンスを比較して、愛媛勝利の「2」でいきたいと思います。
3戦未勝利で4位まで順位を落としていたC大阪。好調をキープしていた2位ファジアーノ岡山との上位対決となった前節に、おそらく並々ならぬ決意を持って臨んでいたであろう選手がいました。清原翔平です。札幌大学を卒業後に加入したSAGAWA SHIGA FCでJFLベストイレブンを2度獲得してリーグ優勝に貢献するなど、主力として確固たる地位を築いていたものの、チームの活動休止に伴って2013年にツエーゲン金沢へ移籍すると、ここでもJ3昇格とJ2昇格を経験し、昨シーズンは序盤戦の主役をさらったチームを大車輪の活躍で牽引。そのパフォーマンスが認められ、今シーズンからC大阪へと完全移籍を果たしました。しかし、タレントの居並ぶチームの中で出場機会はまったくと言っていいほど訪れず、主戦場はJ3を戦うU-23チーム。一回り近くも歳の離れた選手たちとゲームをこなす日々に、モチベーションを保つのも相当な労力を強いられていたであろうことは想像に難くありません。
そんな清原にトップチームデビューの時が訪れたのは第14節の横浜FC戦。11分間の出場ではありましたが、ようやく新たな一歩を刻み込むと、岡山との一戦ではスタメンに抜擢。右サイドハーフとしてキックオフの瞬間をピッチで迎えることになりました。そして1点ビハインドで迎えた31分、扇原貴宏のクロスに飛び込んだ清原。わずかに触ったボールはDFに当たり、そのままゴールに吸い込まれます。中継内のインタビューでも「触ったか触っていないか微妙でしたけど」と苦笑いしていましたが、公式記録上は正真正銘、清原のゴール。チームも逆転勝利を収め、3位へ浮上。その勝ち点3の獲得に対する貢献度の高さは、首脳陣にもサポーターにも大きなアピールになったことは間違いないでしょう。スタメン組の大半が代表経験を有するJ2屈指のタレント集団において、異色の部類に入るキャリアを経験してきた清原のような選手の活躍こそ、チームの大きな推進力になるはず。加えて、SAGAWA SHIGA FCの同期入団でもある村山智彦と奈良輪雄太が湘南ベルマーレで奮闘している姿も、きっと本人にとっては大きなモチベーションになっているのではないかと思います。
今節は、水戸ホーリーホックと対戦した前節で8試合ぶりの勝利を目前にしながら、後半アディショナルタイムの失点で勝ち点1の上積みにとどまったカマタマーレ讃岐が相手。ここは清原という“重要なピース”を手に入れたC大阪の勢いが勝ると見て、「1」をマークしたいと思います。
文=土屋雅史
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