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念願のJ1デビューで五輪へ弾み…“興奮”のFC東京DF室屋「チームの一員になれた」

2016.07.10

J1デビュー果たしたFC東京DF室屋成。攻守にわたる活躍でチームの勝利に貢献した [写真]=J.LEAGUE PHOTOS

「オリンピックへ行く前にJ1のピッチに立ちたかった。これで改めてチームの一員になれたかなと思います」

 FC東京のリオデジャネイロ五輪代表DF室屋成が9日、明治安田生命J1リーグ・セカンドステージ第2節のヴァンフォーレ甲府戦で4-4-2の右サイドバックとしてスタメン出場。待望のJ1デビューを飾り、攻守に奮闘して1-0の勝利に貢献した。

 試合前に城福浩監督から「どんどん裏のスペースを狙っていけ」とピッチに送り出された室屋は、チームメートのフォローを受けながら積極性と冷静さの両面を披露した。

 キックオフ直後に右サイドを駆け上がってデビュー戦への意欲を見せると、32分には右サイドで河野広貴の的確なカバーリングを受けながらオーバーラップ。ペナルティエリア付近まで抜け出したところに橋本拳人からの浮き球パスが通ってチャンスを迎えたが、この右足シュートはゴール右へ外れてしまう。デビュー戦での初ゴールを逃してしまった室屋は「普通にシュートミスでした。本気で打とうと思ったんですけど当たり損ねました。そういう才能はないです」と苦笑いしたが、持ち味の攻撃性が垣間見えたプレーでもあった。

 周囲も室屋の良さを出そうとサポートしていた。最終ラインで右センターバックに入った森重真人は室屋が受けやすいようにポゼッションを試み、右MFとして室屋がオーバーラップした後方のスペースをケアした河野は「今日はなるべくアイツ(室屋)を生かすようにしました。前でやりたいだろうから『やりたいようにやってくれ』って。だからおとなしくやってましたよ」とチームプレーを心掛けたという。

 6分に右CKから森重のヘディングで先制したFC東京は後半、縦への素早い攻撃で追加点を狙いながら、1点を追いかける甲府のカウンターを食らうシーンが目立ち始める。このチーム全体にリスクマネジメントが求められる時間帯で、室屋のスピードと球際の強さが生きた。56分、CKのチャンスから一転してカウンターを食らいかけた瞬間、猛然とダッシュした室屋が中盤で鋭いスライディングを見せてカット。気迫のファインプレーで未然にピンチを防いだのだ。

 その後も果敢なオーバーラップを何度か見せた一方で、終盤はロングボール中心に押し込んでくる甲府に冷静な対応。「1-0とリードしていながら押しこまれていたので」と試合展開を読みながら「無理に攻め上がってボールを失うのは良くない」と判断して攻撃参加を自重し、6分という長いアディショナルタイムをしのいでデビュー戦で勝ち点3を手にした。

 苦しい試合展開の末、チーム全員で勝ち取った勝利だった。前節のサガン鳥栖戦は後半アディショナルタイムの2失点で痛恨の逆転負けを喫していただけに、今回の甲府戦でスタメンに抜てきされた室屋も「前回の試合で悔しい負け方をしていたので、泥臭くてもいいから絶対に勝ち点3を取ってやろう、とにかくファイトしてやろうと思って試合に臨みました。なかなか苦しい試合展開でしたけど、とにかく勝ち点3を取れたことが本当に良かった」とFC東京のメンバーとして結果が出せたことに安堵の表情を見せた。

 室屋にとっては紆余曲折を経てのデビュー戦だった。今年2月にU-23アジア選手権を制してFC東京へ加入したが、チーム合流直後に左足ジョーンズ骨折(左第五中足骨骨折)で全治約3カ月の重傷を負ってしまう。長く辛いリハビリを乗り越え、6月のJ3リーグで実戦復帰して3試合をこなすと、同月末のU-23日本代表戦で結果を残し、晴れてリオ五輪行きの切符を手にした。そして迎えたJ1初戦――。

 初めて立つJ1、そして味の素スタジアムのピッチ。サポーターの声援を背に受けた室屋は「これだけ応援してもらえるのは一年目で初めてだったのですごく興奮しましたし、楽しいなと思いながら試合をしていました。意外と緊張せずに試合に臨めたし、試合を進めていくうちに落ち着いてプレーすることもできました」と笑顔でデビュー戦の心境を明らかにした。

 ただし、「興奮していない」と言いながらも、試合直後のヒーローインタビューでは高揚した気分が“言葉”に表れてしまった。大阪府出身で質問への受け答えで関西弁が出てしまったことを突っ込まれると、「関西弁でした? 標準語にしようと思っていたんですけど」と苦笑して報道陣の笑いを誘った。

 リオ五輪開幕までにFC東京のユニフォームを着て出場できるのは残り2試合。この日のヒーローインタビューで「個人としては全然満足していない」とした室屋は、「五輪までの2試合で個人としてもチームとしても結果を残して、自信を持ってオリンピックに臨めるようにしたい。リオでもチャンスはあると思うので、結果を残して帰ってきたい」とチームと五輪本大会での活躍を誓った。

文=青山知雄

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