町田はJ2第29節で京都と対戦する [写真]=Getty Images
2週間前まで在籍していた古巣のV・ファーレン長崎を無失点に抑えた守護神に笑顔が弾けます。移籍後初出場にして無失点で清水エスパルスの勝ち点3獲得に貢献したのは植草裕樹。1年でのJ1復帰を目指すオレンジ軍団のラストピースになり得る男が、上々の日本平デビューを果たしました。
7月28日に清水から発表された唐突なリリースは、長崎のGK植草裕樹を完全移籍で獲得したというもの。昨シーズンは開幕からの11試合でゴールマウスを守っていたものの、以降は負傷もあって出場機会を失い、今シーズンはベンチ入りもなし。苦しい時期を過ごしていた34歳の完全移籍はやや意外にも感じられましたが、指揮官の小林伸二監督はモンティデオ山形時代に植草をファーストチョイスとして起用していた時期があり、彼のJリーグ通算成績に記されている“J1・18試合出場”はすべて小林監督の下で記録されたもの。2011年には開幕スタメンを託されるなど、元々信頼を置かれていた経緯もあったため、ある意味で納得の獲得だったとも言えるでしょう。
加入直後のFC岐阜戦で早速ベンチへ入ると、前々節の北海道コンサドーレ札幌戦では首位相手に好ゲームを繰り広げながら、GKのミスもあって3失点を許し、3試合ぶりの黒星を喫したタイミングで小林監督は決断。本人にとって古巣対決となった前節の長崎戦で、植草をスタメンとしてピッチヘ送り出します。おそらくは相当気持ちの入っていたであろう植草は、それでも終始安定したプレーを披露。前半はパク・ヒョンジンの直接狙ったCKを懸命に弾き出し、後半はゴールポストに助けられるシーンもありながら、終わって見ればきっちりと完封。この1年近くは、なかなか試合に出ることのできなかった古巣へのリベンジと、ともに勝ちロコを踊った新天地のサポーターへの強烈なアピールを同時に手に入れてみせました。西部洋平が長期離脱を強いられてきた中で、まだ1試合ではあるものの、突然現れた正守護神候補の存在は、清水にとっても小さくないアドバンテージ。昇格組ながらここまで7位と健闘している、レノファ山口FCとの“新・オレンジダービー”となる今節は好ゲームが期待されますが、ここは植草の経験と目の前の試合に懸ける執念が上回ることを予想し、「1」にマークしたいと思います。
4年ぶりに帰ってきたJ2を戦う今シーズンの序盤は大躍進。自動昇格圏内をキープし、一時は首位に立つなど、リーグの台風の目となっていたFC町田ゼルビアですが、夏場前からジリジリと調子を落とし、現在は4戦未勝利で順位も8位まで下降してきています。
ただ、そんなチームの現状と反比例するかのように、絶好調を維持しているのが加入2年目となる中村祐也です。昨シーズンをノーゴールで終えた11番は、今シーズンもなかなか出場機会が回ってこない中で、第21節のザスパクサツ群馬戦で途中出場から移籍後初ゴールを叩き出すと、そこからピッチに立った7試合で7ゴールという驚異的なペースでゴールを量産。前々節の山口戦で、2度に渡ってコーナーキックのこぼれ球を押し込み、さすがの嗅覚を披露すれば、前節の徳島ヴォルティス戦ではクロスに頭で綺麗に合わせるゴールをマーク。その得点力と得点パターンの豊富さを存分に見せつけています。
浦和レッズの下部組織からトップへ昇格したものの、なかなかプロの世界で結果を残せなかった中村が脚光を浴びたのは2009年。反町康治監督の就任初年度に湘南ベルマーレでチームトップの14ゴールを挙げ、クラブにとって11年ぶりとなるJ1昇格のメインキャストとして大ブレイク。とりわけ、個人的にはJリーグベストゲームだと勝手に思っている、昇格争い直接対決となった第49節の甲府戦で決めたゴールが脳裏に焼きついて離れません。ところが、以降のキャリアは負傷との戦いに。アキレス腱の断裂など大けがに見舞われることもあり、シーズンで一桁の試合出場が続きます。前述したように昨年完全移籍で加わった町田でもゴールは遠く、悔しい日々が続いていた中で、ここに来て76.5分に1点という驚異的な決定力を見せており、完全復活と表現して差し支えないようなパフォーマンスが続いています。
チームのエースでもある鈴木孝司がアキレス腱の損傷で今シーズン中の復帰が絶望視される今、同じ箇所のけがを負った経験を有する中村に懸かる期待は一層大きなものに。今節の相手は現在5戦無敗で昇格プレーオフ圏内につける6位の京都サンガF.C.ですが、ここは中村のゴールを予想しつつ、「0」か「2」で勝負したいと思います。
文=土屋雅史
予想難易度が高いとされるJ2は、toto当せんのカギを握る重要な要素の一つ。国内サッカー事情に精通した土屋雅史氏がJ2を徹底解剖する! サッカーくじtoto予想サイト『totoONE(http://www.totoone.jp/top/)』にて、『今週のJ2(http://www.totoone.jp/j2/)』が好評連載中。
※本文中の「1」はホームチーム勝利、「0」は引き分け、「2」はアウェーチーム勝利。
■明治安田生命J2リーグ第29節
2016年8月14日(日)18時キックオフ
清水エスパルスvsレノファ山口FC(IAIスタジアム日本平)
■明治安田生命J2リーグ第29節
2016年8月14日(日)19時キックオフ
京都サンガF.C.vsFC町田ゼルビア(京都市西京極総合運動公園陸上競技場兼球技場)