明治安田生命J1リーグの2ステージ制見直しを示唆した村井満チェアマン
Jリーグは20日、東京都内で開いた2016年度第8回理事会で、2015年から明治安田生命J1リーグに導入した2ステージ制の見直しについて議論した。
村井満チェアマンは2005~14年に行われていた通年制シーズンへの逆戻りを検討していることを明かし、「2ステージ制とチャンピオンシップ(CS)も、1ステージ制も、それぞれ一長一短がある。その両面がある中で、今、Jリーグとしてどちらを選ぶべきなのか」と現状について説明した。
Jリーグが開幕した1993年から2004年まで(1996年を除く)実施された2ステージ制は、協賛金や放送権料の減額による十数億円の減収を避けるために2015シーズンから再導入された、いわば苦肉の策だった。
明治安田生命保険が冠スポンサーにつき、CSはゴールデンタイムに地上波で全国中継されるなど一定の成果はあったが、過密日程や大会方式の複雑さで多くのサポーターや関係者から反対の声が上がっていた。その後、今年7月にJリーグとパフォーム・グループ(英国)が10年総額2100億円の放映権契約を結ぶと、契約発表の場で村井チェアマンは「大会日程や大会方式に関して、制約なしにあるべき姿で議論できるようになった」と、2ステージ制を継続する大義名分がなくなったことを認めた。
現行の2ステージ制による最大の問題は日程面にある。村井チェアマンは再導入が決まった3年前を振り返り、大きな誤算があったことを明かす。「ACL(AFCチャンピオンズリーグ)決勝が11月に2日程(ホーム&アウェイ)入り、国際Aマッチデーもある関係で(終盤戦の)一番大事なタイミングで3週にわたってJリーグができない形になった。これは当初2ステージ制を検討していた時にはなかった内容で、後から決まった。それによってずいぶんと大会日程のあり方の検討を余儀なくされた」と言う。
今シーズンは11月3日に明治安田生命J1リーグのセカンドステージ最終節が行われるため、CSに出場せず、天皇杯でベスト16に進めなかったチームは来シーズン開幕まで4カ月近くオフが続くことになる。村井チェアマンは「1年のうち3分の1もサッカーをやらないことが、本当に競技レベルの底上げにつながるのか」と話し、「これを継続していくことが我々の成長のために是か非か。このあたりも含めて議論している」と率直な意見を続けた。
また、4月の熊本地震の影響で5試合が延期となったロアッソ熊本のケースを引き合いに出し「J2だからやっと先日(延期分の)5試合を消化できたが、仮にJ1だったらファーストステージ中に消化することは物理的に難しい状況だった。今も台風が来ているが、自然災害の多い日本において限られた時間の中ですべてを消化する難しさを改めて再認識した」と、過密日程によるリスクの大きさを指摘した。
一方で各ステージの優勝争いやCSの大舞台という分かりやすいヤマ場がある現行方式も「マーケティングや関心度を持っていただくという観点では、今のほうがメリットはあるのも事実」と分析する。そのため、従来の1ステージ制への回帰という捉え方を否定し、「戻すという感覚ではなく、レベルアップするものでなければダメだと思っている。2ステージ制やCSを変えるならば、それに匹敵するような、もしくは近いような打ち手や努力を提示する責任がある。それについては、まだ明確に最終案として理事会等に提示できていない」と、まだ検討の余地があることを強調する。
多くの反対を押し切って2ステージ制を採用してからわずか2年。再び変更となれば各方面に混乱をきたす可能性も懸念されるが、「明治安田生命様には大変好意的にご理解をいただいていて、スポンサー各社をつないでいただいている電通様にも我々が置かれている状況を理解していただいている」と、関係各所との調整が進んでいることを示唆した。大きな決断を迫られるが、議論できる時間はあまり残されていない。「仮に2017年からやるのか、2018年からやるのか。逆算すると10月頃をメドに関係者と協議を詰めていき、11月になるかもしれないが、そのあたりが一つのタイムリミットになってくる」と、今後の見通しを示した。
文・写真=田丸英生(共同通信社)
By 田丸英生