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【土屋雅史氏のJ3展望】激戦必至の鹿児島vs秋田は「0」決着を予期 異色のキャリアを歩む赤尾の活躍にも注目

2016.10.14

大分時代にJ1昇格を経験した阪田章裕は、長野の一員として古巣戦に臨む [写真]=Getty Images

 リーグ戦第24節終了時点で、11勝6分7敗で6位に位置。入れ替え戦枠の2位につける大分トリニータとは7ポイント差と、残り6試合でひとつの星も落とせないAC長野パルセイロ。今節はそんな大分とホームで直接対決という大一番を迎えますが、その長野には大分で濃厚な5シーズンを過ごしたあるディフェンダーがいるのです。

 阪田章裕、32歳。野球で名高い平安高校から立命館大学を経て、2007年にセレッソ大阪へと入団したものの、昇格のみを義務づけられていたJ2での2シーズンは出場機会を得ることができず、2009年に湘南ベルマーレへ移籍。ここでも実戦経験を大きく積むまでには至りませんでしたが、チームは11シーズンぶりとなるJ1昇格を達成。翌シーズンの開幕戦でスタメンに抜擢された阪田は、プロ4年目にしてJ1デビューを飾ります。ただ、2011年には前年のJ2で15位に沈んだ大分に完全移籍で加入すると、田坂和昭監督の下でキャリアハイの20試合に出場。そして、翌シーズンはディフェンスリーダーとしてチーム最多時間出場を果たし、6位で昇格プレーオフへ進出した大分は、アウェイの準決勝で京都サンガF.C.を4-0で沈め、国立競技場でわずか1枚のJ1切符を懸けてジェフユナイテッド千葉と対峙。ゴールのほしい終盤は、田坂監督も阪田の“1バック”という博打的采配を敢行する中で、林丈統が決勝ゴールをゲット。プロ入り後は初めて主力として1年を戦い抜いたシーズンでJ1昇格を勝ち獲るなど、阪田にとっても2012年は大きなターニングポイントになったはずです。

 それでも、復帰したJ1は茨の道。ホーム未勝利という苦しいシーズンの末にJ2へ降格すると、あと一歩で昇格プレーオフ進出を逃した2014年を経て、昨シーズンは田坂監督の途中解任もあってチームは低迷。徐々に出場機会を減らしていた阪田も、スタメン出場は10試合にとどまり、J2・J3入れ替え戦こそ2試合ともにフル出場を果たしましたが、FC町田ゼルビアに連敗を喫した大分はJ3降格が決定。ただ1人だけ、昇格プレーオフとJ2・J3入れ替え戦の4試合すべてをフル出場で経験した阪田は、2016年シーズンから長野へと新天地を求めることになりました。

 ディフェンダーとしては珍しい11番を背負い、いきなり開幕戦で大分銀行ドームに凱旋した阪田。その古巣対決は0-1で敗れたものの、以降はレギュラーとして悲願の昇格を目指すチームを最後方から牽引。長野も常に上位をキープしてきた中で、第18節以降は急失速を見せてしまい、順位も緩やかに下降。連敗で6位にまで順位を落として迎えた前節は、SC相模原にアウェイで2-1と3試合ぶりの勝利を収めましたが、ここまで全試合でスタメン出場を続けてきた阪田は、78分から3枚目の交替カードとしてクローザー起用。古巣戦を前にしてスタメン落ちの危機に瀕しています。勝てば4ポイント差に縮まり、負ければ10ポイント差に開く今節の大分戦は、長野にとって間違いなく今シーズン最大のキーゲーム。激闘必至の一戦は阪田の古巣対決というポイントにも注目してほしいと思います。ここは好ゲームを期待しつつ、「0」予想で勝負したいと思います。

 参入初年度ながら、今季のJ3に大きな旋風を巻き起こしている鹿児島ユナイテッドFC。個人的にも解説者時代に大変お世話になり、その人格者ぶりにはいつも感嘆させられていた浅野哲也監督が、非常にソリッドなチームを築き上げ、中盤戦以降は上位争いに加わり続けてきました。残念ながら先月末にJ2ライセンスの不交付が決定し、来季昇格の可能性はなくなってしまいましたが、それゆえに今季をできる限り上位で終えるという目標への意欲は一層強くなっているかもしれません。そんな鹿児島の中で、ここまで22試合に出場し、攻守に渡ってチームの舵を取っているのが副キャプテンの赤尾公。鹿児島県出身の彼は今季初めてJリーグの舞台を踏んだ選手ですが、実は一度現役を退いていた選手でもあるのです。

 名門の鹿児島実業高校出身の赤尾は、2年時に岩下敬輔(ガンバ大阪)をキャプテンに頂いたチームでレギュラーを勝ち獲り、高校選手権で全国制覇を経験。3年時には自らキャプテンとして臨んだ高校選手権で、またも全国ファイナルへ進出。最後は“セクシーフットボール”のキャッチフレーズで一躍有名になった野洲高校に延長の末に敗れたものの、2度の全国大会で優勝と準優勝という華々しい結果を残し、自身もU-18日本代表候補に選出されるなど、充実した高校生活を送ります。卒業後に進学した鹿屋体育大でも、4年時にはインカレでベスト8進出を果たし、2010年に当時JFLに所属していたガイナーレ鳥取に加入。傍から見れば順調なサッカーキャリアを過ごしているように見えました。

 ただ、その鳥取でなかなか出場機会を得られなかった赤尾は、1年での契約満了とともに現役引退を決意。そのままクラブのスクールコーチを続けながら、アマチュア選手としてSC鳥取ドリームスでプレーする道を選択します。それでも2012年には、Jリーグ参入を掲げていた地元のヴォルカ鹿児島で“現役復帰”。個人的にその年の10月に全国社会人選手権で赤尾のプレーを見る機会があったのですが、中盤アンカーの位置でゲームをコントロールしつつ、プレースキッカーとしても高精度のキックを連発。高校時代をテレビで見ていた者としても、「おお、赤尾だよ。やっぱり上手いなあ」と思ったことを記憶しています。

 ヴォルカ鹿児島自体はFC KAGOSHIMAと統合した上で、鹿児島ユナイテッドFCとしてJリーグを目指すこととなり、2014年からJFLに参入。翌年のリーグ戦で順位も含めた諸条件をクリアしたクラブは、悲願のJリーグ参入を果たし、現役引退や所属チームの統合など、紆余曲折のあった赤尾も晴れてJリーガーに。2016年3月13日。ホームの鴨池で28歳にしてとうとうJリーグデビューを飾ることになりました。以降も前述したようにほとんどのリーグ戦にスタメンで出場しながら、第21節の鳥取戦では直接FKからゴールを奪うなど、チームの躍進に大きく貢献。地元のクラブで小さくない存在感を放っています。

 今節の相手はここ6試合で2度の連勝を含む5勝1敗と、開幕直後の勢いを取り戻しつつある4位のブラウブリッツ秋田。前節で大分に敗れた鹿児島としては、上位に食らいつくためにも重要なゲームであり、ここまで7勝3分2敗と好成績を収めているホームゲームというアドバンテージも生かしたいところ。ここはJ2昇格を争う両者の上位対決ということも加味し、勝ち点1を分け合うと予想します。

文=土屋雅史

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※本文中の「1」はホームチーム勝利、「0」は引き分け、「2」はアウェーチーム勝利。

■明治安田生命J3リーグ第25節
2016年10月16日(日)13時キックオフ
AC長野パルセイロvs大分トリニータ(南長野運動公園総合球技場)

■明治安田生命J3リーグ第25節
2016年10月16日(日)13時キックオフ
鹿児島ユナイテッドFCvsブラウブリッツ秋田(鹿児島県立鴨池陸上競技場)

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