中盤の要として群馬を牽引する松下 [写真]=Getty Images
10勝11分16敗の15位。一時期は残留ラインギリギリを彷徨っていたものの、瀬川祐輔や中村駿といったルーキーの活躍もあって、何とか勝ち点を積み重ねてきているザスパクサツ群馬。その群馬で、ここまで出場停止の1試合を除く全試合でスタメンフル出場を続け、中盤でチームを鼓舞し続けているのが、今年でプロ16シーズン目を迎える松下裕樹です。
地元群馬は高崎の出身。高松中学校時代には全国準優勝に輝くと、名門の前橋育英高校でも2年時と3年時の高校選手権で2年連続で国立競技場でのプレーを経験。U-18日本代表という肩書も引っ提げ、2000年にサンフレッチェ広島へと入団した松下でしたが、ユースからの昇格組だった同期の森﨑兄弟や駒野友一が出場機会を伸ばしていく中で、なかなか試合に出れず、2004年から3シーズンをアビスパ福岡でプレーした後、辿り着いたのが地元クラブの群馬でした。
加入と同時にすぐさまレギュラーとして躍動し始めた松下ですが、個人的に忘れられないのは2008年シーズン。当時の群馬はJリーグ加入4年目ながら、未だにリーグ戦での“連勝”がなく、なんと24回目のチャレンジとなったのが、ホームに水戸ホーリーホックを迎え撃った“北関東ダービー”。このゲームも松下のゴールで先制はしたものの、あっさりと追いつかれ、1-1のままで後半アディショナルタイムへ。2分と掲示されたそのアディショナルタイムも経過し、誰もが「またも“連勝”はお預けか」と思っていた終了間際のラストプレーにドラマは待っていました。スローインのこぼれ球が松下の目の前に転がると、思い切って右足を振り抜き、ボールは築かれた人垣の中を縫うようにしてそのままゴールネットへ突き刺さります。“24度目の正直”を達成したチームメイトやスタッフが歓喜に沸く中、主役の松下は涙。キャプテンとして、大きな重圧の中で戦っていた彼の決勝ゴールで、群馬は新たな歴史を刻むことになったのです。
それからすでに8年。2013年からの2シーズンは高校の先輩でもある山口素弘監督に誘われ、横浜FCでもプレーした松下は、「ほっとけなかった」という名言とともに2015年に再び群馬へ帰還。今シーズンも史上6人目となるJ2通算400試合出場を達成したかと思えば、“J2月間ベストゴール”を叩き込んだ8月には、クラブにとっても個人としても初の受賞となる月間MVPも獲得。34歳となった今でも、群馬の中盤を支え続けています。ただ、彼にとっても古巣対決となった前節の横浜FC戦は、一時は逆転したものの、再逆転を許した末に2-3で惜敗。チームの無敗も「3」でストップしました。一方、その群馬と対戦する清水エスパルスは、ギラヴァンツ北九州を相手に2-0と盤石の勝利を収め、とうとう3位に浮上。現時点ではリーグで最も“ノッている”チームとも言えそうな好調ぶりをキープしています。ここは松下の奮起に期待しつつも、両者のバイオリズムも考慮して、清水勝利の「2」を予想したいと思います。
9勝16分12敗の14位。前々節は横浜FC、前節は京都サンガF.C.と昇格プレーオフ圏内を狙う2チームとのホーム連戦は、ともに先制点を奪いながらも追いつかれる格好で、勝ち点1ずつを上積みすることとなった水戸。その水戸を率いているのが、昨シーズン途中にコーチから監督へと昇格し、今シーズンもきっちりとチームを鍛え上げてきた西ヶ谷隆之監督です。
清水商業高校、筑波大学といわゆるエリートコースを歩んでいた西ヶ谷監督が1996年に加入した名古屋グランパスで当時指揮を執っていたのが、今シーズンでアーセナルを率いて21シーズン目となるアーセン・ヴェンゲル。西ヶ谷監督は開幕から5試合続けてベンチに入り、1stステージ第6節で途中出場ながらJリーグデビューを果たすと、以降もほとんどのゲームで16人のメンバー入りを果たすなど、フランス人指揮官からの高い評価を得ることに成功します。今や世界にその名を轟かせる名監督の下で、ルーキーイヤーにプレーした経験が、西ヶ谷監督のサッカーキャリアに小さくない影響を与えているであろうことは想像に難くありません。
2001年にアルビレックス新潟で現役を退いた西ヶ谷監督は、すぐに指導者の道を歩み出し、母校でもある筑波大や東京ヴェルディの下部組織での指導を経て、中京大学の監督時にはインカレで全国準優勝と3位にチームを導くと、2012年には新潟のヘッドコーチに就任。ここではシーズン序盤での辞任を余儀なくされたものの、翌2013年シーズンには水戸にやはりヘッドコーチとして招聘され、昨年6月に柱谷哲二前監督の解任を受けて指揮官の座に。常にテクニカルエリアを動き回るスタイルを貫きながら、着実にチーム力を向上させ続けています。
今シーズンは兵働昭弘や佐藤和弘といった、かつて大学で指導にあたった“教え子”が加入していますし、第31節の東京V戦後には、下部組織時代の“教え子”たちが相次いで西ヶ谷監督のもとへ挨拶に訪れるなど、その親しみやすい性格と確かな指導力で、選手たちからも慕われていることが窺えます。個人的にも親交がありますが、“本当にサッカーの好きな兄ちゃん”という感じで、そこもまた信頼できる要素かなと(笑)。今節の相手は昇格争いの真っ只中にいる4位のセレッソ大阪。第34節で清水に逆転負けを食らって以降は厳しい試合が続き、前節も後半アディショナルタイムに何とか追いついてモンテディオ山形とドローと、C大阪の調子はやや下降気味。ここは京都戦で見せたチームの好パフォーマンスと、強豪相手の戦い方を練り込んでいるであろう西ヶ谷監督の采配も考慮して、水戸が意地を見せるという「0」予想でいきたいと思います!
文=土屋雅史
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※本文中の「1」はホームチーム勝利、「0」は引き分け、「2」はアウェーチーム勝利。
■明治安田生命J2リーグ第38節
2016年10月29日(土)17時キックオフ
ザスパクサツ群馬vs清水エスパルス(正田醤油スタジアム群馬)
■明治安田生命J2リーグ第38節
2016年10月30日(日)14時キックオフ
セレッソ大阪vs水戸ホーリーホック(キンチョウスタジアム)
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By サッカーキング編集部
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