大宮の新体制発表会見に臨んだ大前元紀(中央) [写真]=河合拓
2016シーズン、明治安田生命J1リーグで5位に躍進した大宮アルディージャは、14日に2017シーズンの新体制会見を行った。さらなる飛躍が期待される1年だが、チームの攻撃の核として26試合に出場し、チーム最多の11得点を挙げたFW家長昭博が川崎フロンターレに完全移籍した。自らゴールを挙げるだけではなく、屈強なフィジカルを生かしたボールキープで後方からのボールを収め、ほとんど全ての攻撃に絡んでいた大黒柱の穴を埋められるかは、J1復帰2年目のポイントと言えるだろう。
攻撃の新たな中心となることが期待されるのが、清水エスパルスから完全移籍で加入したFW大前元紀だ。2008年に流通経済大柏高から清水に加入した後、ドイツのデュッセルドルフに在籍した2012-13シーズン、2013-14シーズン以外、国内では清水一筋でプレーしてきたチームの“顔”のような存在だった。身長167センチメートルと小柄ながら、抜群のテクニックとゴール前での鋭い嗅覚を発揮し、これまでJリーグ通算192試合に出場して66得点を記録。昨季も清水で背番号「10」を纏い、J2リーグ29試合で得点ランキング3位となる18得点を挙げた。負傷による長期離脱もあったが、チームのJ1復帰に貢献した。
清水の看板選手である大前が、大宮からのオファーを受けたのは昨年12月中旬だったという。それ以降、清水に残るべきか、大宮へ移籍するべきか、悩みに悩んだという。そして最終的に移籍を決断したのは、サッカー選手としてさらに成長したいという思いと、自身がどれだけの選手なのかを知りたかったからだと明かした。
「サッカー選手として、自分がどれだけ成功できるかを考えたとき、エスパルスに残った方がいいのか、外に出た方がいいのか、すごく悩みましたし、考えましたが、環境を変えた方が、ワンステップもツーステップもレベルが上がると思ったので決断しました。エスパルスで最高な時間を過ごしてきましたし、エスパルスは自分の中でも特別なチームでしたが、それを失くさないと、自分がどれだけのサッカー選手かはわかりません。一度、それを失くして、大宮でどれだけ自分がやれるか。個人的にはすごく楽しみです」
大宮が大きな期待を寄せていることは、その背番号からも伝わってくる。大前が着けるのは、清水時代と同じ背番号「10」。昨季、大宮ではMF岩上祐三が10番を付けていたが、高校1年の時に着けていた47番を希望したという経緯もあって空いたエースナンバーを譲り受ける形となった。大前は「いろいろなタイミングがあって用意してもらった番号だと思います。そういう番号を用意してくれたことは、高い評価をもらえていると思いますし、その評価をピッチの上での結果で証明できたらと思います」と、新たなクラブで10番を着ける責任感を口にした。
新体制会見に出席した渋谷洋樹監督は、「得点を決めるところでのキックの質、クロスの質、FKやセットプレー、シュートのところ。最後の教えられない部分を持っている選手だなと思っています」と、大前について話した。昨シーズンの失点数「36」はJ1で3番目に少なかった大宮だが、得点は「41」と決して多くはなかった。自身にもゴールが求められることを強く自覚する大前は、「背番号を超えるくらいのゴール数を取ることは、最低限ですね。それは目標ではありません」と、語気を強めた。
昨季、J1、リーグカップ、天皇杯と、全大会でクラブ史上最高の成績を残した大宮を、さらなる高みに導けるか。これまでとは違うエンブレムの付いたオレンジ色のユニフォームを身に着け、「あまり違和感がなくて良かった」と白い歯をこぼした大前は、「去年より成績が悪くなれば、僕も、チームも、批判されると思います。そういう意味では去年の成績が最低限の目標。タイトルを獲れるチームだと思うので、そこは意識してやっていきたい」と、新たな挑戦を見据えた。
取材・文=河合拓
By 河合拓