甲府戦では途中出場だった駒井善成 ©J.LEAGUE PHOTOS
浦和レッズの駒井善成。その名を聞いた時、果たしてどんなイメージが浮かんでくるだろうか。前を向いたらどんどん仕掛ける積極的な姿勢、相手の逆を取る巧みなドリブル、スタンドを興奮させる突破力。おそらく、そんなところではないだろうか。
その印象はまったく間違っていない。勇猛果敢に仕掛けるドリブルとチャレンジ精神は、駒井がプロとして戦っていくための重要な要素であり、本人も最大の武器と自負するものだ。
サポーターが駒井に最も期待しているのもそういった部分であろうし、本人も「(西川)周作さんとかにも『お前がボールを持ったときはすごいな』と言われます。そういう雰囲気、僕は好きですね」と自身が求められているものを理解している。
ただ、ドリブルだけだとは思われなくない。駒井には密かに長所だと自負しているものがある。「周りがどう思ってるかは知らんけど」。駒井はいたずらっ子のような目つきで笑い、こう続ける。
「守備、自分の中では得意な方だと思っていて。そもそも守備は嫌いじゃないし。ボールを取るというところは自分の中では自信を持っているところなんで」
それが端的に結果として表れたのが3月10日のヴァンフォーレ甲府戦、後半アディショナルタイムでのワンプレーだ。甲府のエデル・リマが自陣中央でボールを運ぼうとした瞬間、駒井は猛然とダッシュしてボールを奪い取り、ショートカウンターからスルーパスをラファエル・シルバに通してゴールをお膳立てした。
最初はボランチとして途中出場した駒井だったが、その時間帯は右ウイングバックにポジション変更されていた。中央は本来なら受け持ちのエリアではなかった。それは明確な意図を持ってのプレーだった。「パスが相手に入る前からスタートを切れていたし、うまく予想できていました。運ぶと思ったし、自分のマークを捨てて取れると思ったから」。駒井はしてやったりの表情でその場面を振り返る。
偶然ひらめいたプレーではない。これまでもわかりやすい結果につながらないところで守備を丁寧にこなす姿は見られた。たとえば2月28日に行われたAFCチャンピオンズリーグのFCソウル戦、ボランチとして先発出場した駒井は何度も丁寧なカバーリングをしていた。それは決して目立つプレーではなかったが、チーム全体の動きを見て守備の穴を埋めていた。
「相手がどう運ぶかとか、自分の中で一番大事にしているのが予測の部分。特に真ん中だと、奪われた後のことを意識しながらやっています」
切れ味鋭いドリブルから敵陣を突破していくプレーは駒井の最大のストロングポイントだ。見栄えのする特徴でもある。ただ、一見して地味に映る守備でも駒井は決して手を抜かず、むしろ「武器としてもっと磨きたい」と目を輝かせる。守備を楽しむドリブラー。なんとも面白い存在ではないか。
文=神谷正明
By 神谷正明