ベガルタ仙台でトップチームのコーチを務める福永泰(中央) [写真]=板垣晴朗
ベガルタ仙台は2017年3月18日の明治安田生命J1リーグ第4節で、柏レイソルに1-0で勝利。これがJ1におけるリーグ戦通算100勝目となった。
仙台がJ1で初白星を挙げたのは、2002年3月3日のJ1・1stステージ第1節のこと。初めてJ1に昇格して、ホームで迎えた東京ヴェルディ戦を1-0で勝利したときだった。
この1勝目と100勝目の二試合の両方に、選手として関わった者はいない。しかし選手と指導者という立場で、どちらもピッチレベルで歓喜の瞬間を経験した者は一人いる。現在の仙台トップチームで、2016年から渡邉晋監督を補佐する福永泰コーチが、その人である。(※渡邉監督も当時選手だったが、ベンチ入りは1st第5節から)
「最初にこのチームのJ1通算100勝を意識したのは、前節・ヴィッセル神戸戦の前です。(6年前に東日本大震災が発生した)3月11日の試合で、ホームでその記録を達成できれば、このクラブにとって大きなことだと思っていました」
その思いとともに勝利を目指すチームを指導していたが、残念ながらこの試合では0-2で敗れた。そして、それから4日後の15日にはJリーグYBCルヴァンカップ第1節FC東京戦で0-6と大敗。
「それから、次の柏戦については、正直なところ悔しい負けが続いた流れを何とか切ろう、ということで頭がいっぱいになって……100勝のことはしばらく忘れていました」
と振り返る。その100勝目のことを思い出したのは、柏戦を後半アディショナルタイムの決勝点により勝利し、安堵して、クラブからの連絡があってからのことだったという。
遡ること16年前の3月に仙台がJ1初勝利を挙げたそのとき、福永コーチは右のMFとしてフル出場した。この年、彼は浦和レッズから移籍。新天地で開幕戦での先発を勝ち取った。
「移籍して、自分にとって新しいチャレンジをしたときなんですよね。そして仙台がJ1で新しいチャレンジをして、当時のJリーグを引っ張ってきた名門のヴェルディを相手に勝てた。嬉しさも安堵もありました」
と、当時の気持ちを今も覚えている。
選手から指導者に立場の変わった今は、新しく歴史を作っている選手たちの姿に目を細めるとともに、「自分自身がプレーできない分、一つの勝利に対してできることが減ったかもしれません」という難しさも感じながら、経験を積んでいる。
「彼らがこれから10年後、20年後にどういう立場になっているかは分かりません。でも、仙台でもどこででも、サッカー界の歴史の中で、選手を長く続けていってほしい。ピッチに立てる人はわずか。そういう人として経験を重ね、歴史を作っているという立場を楽しんでほしいですね。そうすることが、一緒に関わっている人たちに日々の生活を楽しんでもらえることにもつながりますから」
期待とともに、福永コーチは今日も指導を続ける。
文=板垣晴朗