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【土屋雅史氏のJ3展望】YS横浜の敵地での奮闘を予想し「0」マーク…“新・静岡ダービー”は沼津勝利の「1」で

2017.03.24

 昨シーズンの最下位という屈辱を晴らすべく迎えた今シーズンも、いきなりの2連敗と苦しい開幕スタートとなったYS横浜。ただ、前節の長野戦も敵将の浅野哲也監督が「少し相手に攻め込まれた時間帯がありました」と認めた通り、後半開始から15分近くは攻撃のリズムを掴んでおり、得点の可能性を十分に感じさせてくれました。そんなチームの中で、今シーズンに例年以上の意気込みを抱いて挑んでいるのがキャプテンを務める辻正男です。

 法政大学では関東大学リーグのベストイレブンに選出された経験も持ちながら、卒業後はけがの影響もあってプロへと進むことは叶わず、関東1部リーグに所属していたYS横浜へと加入することになった辻。ただ、そのカテゴリーで着々とキャリアを積み重ねると、2011年には関東王者として臨んだ地域決勝の6試合で6ゴールを叩き出して、チームのJFL昇格に大きく貢献。自身にとって初挑戦となった翌年のJFLでも、6位と躍進したチームのエースとして20得点を記録してリーグ得点王を獲得し、2013年に鳥取で念願だったJリーガーの道を歩み出します。

 2014年。開幕から4試合目。金沢へと移籍していた辻は、古巣のYS横浜相手にハットトリックという究極の“恩返し”を果たすことに成功。とうとうJリーグでのゴールという成果も手中に収めます。ところが、シーズン序盤で右膝の前十字靭帯損傷という大けがを負ってしまうと、11節以降のリーグ戦は1試合も出場できず、翌シーズンも15試合の出場で1得点にとどまり、シーズン終了と共に契約満了に。2016年には4年ぶりに「自分の中で本当に思い入れがある」YS横浜へと復帰しましたが、開幕戦の1試合を戦った3月に今度は左膝の前十字靭帯を損傷。再び長期離脱を余儀なくされてしまいます。戦列へと戻ってきたシーズン最終盤には3ゴールを奪ったものの、もちろん不完全燃焼の1年となったことは言うまでもなく、「自分自身も本当に結果を出していかないといけない年齢になってきているし、その結果が出るか出ないかという部分に覚悟を持って今シーズンはやろうと決めている」という2017年シーズンを迎えることになりました。

 長野戦の59分。左からのクロスへニアに突っ込んだ辻。決定的なシュートは、しかし枠の左へわずかに外れ、「やっぱりあそこで自分も勝負したいと思っていますし、ああいう所で結果を出さないと、勝ちに持っていけないかなという所は正直あります」と唇を噛むあたりにストライカーの矜持が見え隠れしましたが、チームの結果は0-3という厳しいものに。開幕連敗に無得点と難しい状況ではありますが。こういう時こそ「やればやるほど色々な経験もできていますし、より楽しいと思う場面も増えているので、毎年自分の中でサッカーの面白さがどんどんアップしています」という29歳のサッカー小僧が活躍すべきタイミング。今節の対戦相手に当たる栃木も、開幕から連続引き分けと初勝利が欲しい所ですが、ここは3月29日が誕生日であり、20代のラストゲームとなる辻を含めたYS横浜がアウェイで意地を見せると予想して、「0」にマークしたいと思います。

 4年ぶりにJ1で開催されるのが、磐田と清水が対峙する“静岡ダービー”。こちらは過去のリーグ戦で44度にわたってしのぎを削り合ってきた、いわばJリーグの中でも屈指のダービーですが、今節のJ3で初めて実現するのが今シーズンから参入してきた沼津と藤枝の“新・静岡ダービー”であり、その一戦を古巣対決という形で迎えるのが沼津の沓掛勇太です。

 元々は千葉の下部組織出身。高校3年時にはU-18のキャプテンも経験した沓掛は、関西の名門・関西学院大学でも福森直也(大分)や井筒陸也(徳島)らと共に最終ラインを組むなど、ディフェンスの中心として活躍。卒業時には新設されるJ3に参入することが決まっていた藤枝へと加入し、クラブ史に残るJリーグ初ゲームとなった開幕戦にもスタメンで出場。一時はケガで戦列を離れたものの、結果的に大卒ルーキーながらリーグ戦23試合に出場します。ただ、翌2015年シーズンも開幕戦出場を果たし、リーグ戦で34試合にこそ出場しましたが、徐々にスタメンから外れ、途中出場も増えていった中でチームとの契約更新には至らず。同じ県内のクラブで、J3昇格を目指していた沼津へと新天地を求めることになりました。

 JFLを主戦場に置き、昇格だけを義務付けられた2016年シーズン。沓掛はボランチとして開幕4連勝に貢献すると、以降も定位置をガッチリ確保。結果的にリーグ戦全30試合の内、実に29試合に出場して、1stステージ3位、2ndステージ4位という成果を勝ち獲り、年間3位に入ったクラブも悲願のJ3昇格を達成。自身も3年ぶりとなるJリーグの舞台への帰還を手繰り寄せます。迎えた2017年シーズン。沼津にとって開幕戦となった第2節のスタメンリストには沓掛の名前も。藤枝、沼津と2つの静岡のクラブが、Jリーグの第一歩を踏み出したそれぞれのゲームに、揃って出場を果たした唯一の選手となった訳です。

 オープニングゲームで福島に1-2と敗れた沼津にとって、今節もホームで戦うことのできる“ダービー”はJリーグ初勝利を挙げるには格好の舞台。一方、前節はF東京U-23に2-1で競り勝った藤枝も、Jリーグの“先輩”として沼津に負けることは許されないと言っていいでしょう。沓掛が藤枝の一員として戦った2014年のJ3開幕戦メンバーの中で、現在もクラブに在籍しているのは枝本雄一郎だけになってしまいましたが、それでも彼にとってこの一戦が特別な90分間であることは間違いのない所。そんな沓掛の想いも考慮しつつ、ここは沼津にとって記念すべきゲームになることを期待して、「1」という予想で勝負します!

文=土屋雅史

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※本文中の「1」はホームチーム勝利、「0」は引き分け、「2」はアウェーチーム勝利。

■明治安田生命J3リーグ第3節
2017年3月25日(土)13時キックオフ
栃木SCvsY.S.C.C.横浜(栃木県グリーンスタジアム)

■明治安田生命J3リーグ第3節
2017年3月25日(土)13時キックオフ
アスルクラロ沼津vs藤枝MYFC(愛鷹広域公園多目的競技場)

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