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【ライターコラムfrom浦和】課題は倍増した失点 首位・神戸戦へ問われる改善

2017.03.30

甲府戦での浦和の先発メンバー [写真]=Getty Images

 今シーズンの浦和レッズの問題点ははっきりしている。具体的な数字を見ても、それは明らかだ。失点が多すぎるのだ。

 昨季、浦和はJ1でリーグ最少記録28失点の結果を残したように、あっさりとゴールを割られることは少なかったが、今年はそういったシーンが目立つ。Jリーグでは開幕から全試合で失点を喫しており、まだたった4試合の消化とは言え、総失点6はリーグワースト3位タイの数字だ。去年の第4節までの成績を見ると3失点となっており、倍に増えている。

 AFCチャンピオンズリーグを合わせた公式戦は全7試合中6試合でゴールを割られており、無失点で切り抜けたのはACLのウェスタン・シドニー・ワンダラーズ戦のみだ。昨年のACLでは3試合で喫した失点は3だったが、今年は5失点。リーグ戦でもACLでも失点の数が去年より増えている。

 その要因もはっきりとしている。一つはシーズン前に掲げた目標と関連している。「相手陣地でゲームを進行する」。昨年、あと一歩のところでリーグタイトルの称号を逃したミハイロ・ペトロヴィッチ監督は、これまで以上に相手を圧倒するサッカーに悲願達成の筋道を見た。

ウイルソンと対峙する遠藤航(右)と森脇良太 ©J.LEAGUE PHOTOS

「相手陣地でゲームを進行する」ために浦和が取り組んでいるのは、主導権を握ってボールを保持することは当然として、それに加えてボールを奪われた瞬間にプレスをかけることであり、そのためにラインを高く設定することである。

 そうなると当然、被カウンターが即ピンチにつながる危険性は高まる。実際、武藤雄樹が「前からボールを奪いにいっているので点は取れるようになっていますが、その分カウンターで失点することも多くなっています」と言うように、失点の多くはカウンターから喫している。

 アグレッシブなプレースタイルで戦う以上、カウンター自体を90分間防ぎ切るというのは現実的ではない。大半の時間でDFラインの背後に大きなスペースを提供することになるため、何本かはパスを通されてしまうだろう。

 重要なのはその際に質の高い対応ができるかどうか。人数をかけて守るという展開にはならないので、とりわけ後列の選手はちょっとしたミスや判断の遅れが致命傷になりかねないというシビアな局面に直面せざるを得ず、迅速で的確な対応が求められる。

 それは容易な作業ではないが、少なくとも駒井善成がチームの反省点として挙げた「全力で戻ったり、クロスからのマークで一回でも首を振って周囲を確認できていれば」というくらいの対応は常にできないと、理想とするプレースタイルで勝ち星を積み重ねていくことは難しいだろう。今のアグレッシブなスタイルは得点増にもつながっているため、ある程度はカウンターから失点するのも許容しなければならないが、つまらないミスはなくさないといけない。

 そういう意味で言えば、カウンター以上に意識を高めて取り組まなければならないのはセットプレー時の守備だ。今季の浦和はセットプレー絡みの失点も多い。トレードオフのような関係にある被カウンターの失点とは異なり、セットプレー絡みの失点は全てとは言わないまでも防ごうと思えば防げたものも少なくない。

ドゥドゥ

甲府戦、ドゥドゥの得点シーン [写真]=Getty Images

 たとえばヴァンフォーレ甲府戦のドゥドゥの得点場面、スローインから簡単にクロスを許したのも反省材料だが、一番危険なゴール前正面でドゥドゥを完全フリーにしていたのは言語道断。そんなレベルの失点をしていては、せっかく難易度の高いサッカーに取り組んでも報われない。

 失点続きは選手たちもかなり気にしている。「いい攻撃のためにはいい守備をしないといけない」とは槙野智章の弁だが、まずは安い失点をなくすこと。次は首位を走るヴィッセル神戸との一戦。リーグ中断期間の時間で問題点を改善できたのかどうかが問われることになりそうだ。

文=神谷正明

By 神谷正明

東京都出身。大学卒業後、フリーランスとして活動を開始。20年以上にわたってサッカーの取材を続ける。現在は主に浦和レッズ、日本代表を定期的に取材しており、翻訳も手がける。

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