スーツ姿で取材に応じ、神妙な面持ちで謝罪した森脇良太 [写真]=田丸英生
5月4日に行われた明治安田生命J1リーグ第10節の浦和レッズ対鹿島アントラーズの試合中に侮辱的発言をしたとして、Jリーグから2試合出場停止処分を受けた浦和レッズのDF森脇良太が9日、さいたま市内のクラブハウスで取材に応じた。黒のスーツ姿で報道陣の前に現れ「僕の発言が不適切だったと思う。浦和レッズを応援してくださる方、鹿島アントラーズの皆さん、小笠原(満男)選手とレオ・シルバ選手、サッカーを愛するファンの皆さんに不快な思いをさせてしまったことを心から反省しています」と深々と頭を下げた。
4日の試合後、鹿島のMF小笠原満男はチームメイトのブラジル人MFレオ・シルバが森脇から「くさい」と侮辱的な発言を受けたと告発。一方で森脇は発言を認めたものの、口論の最中に小笠原へ向けられた言葉で侮辱する意図はなかったと述べ、両者の言い分が食い違っていた。Jリーグの規律委員会は7日に両選手を聴取し、9日までに処分を決定。誰に向けられた発言であったかは特定できなかったが、Jリーグの黒田卓志フットボール本部長は「試合中に相手選手に向かって『くさい』と言うことは不適切で侮辱にあたるという解釈」と説明した。
問題の場面は浦和が0-1とリードされていた78分。自陣の左コーナーフラッグ付近での小競り合いに、森脇が右サイドから駆け付けて輪に加わった。揉み合いを大きくするだけでなく、貴重な時間を費やす不用意な行動だっただけに「僕の性格的に、試合に入ると勝ちたいという気持ちが強くなりすぎて、相手といろいろバトルをしてしまうことがある。今までもたくさんの人に指摘されてきて、僕自身も冷静にならないといけないという思いがあった。それができなかったのは自分の未熟さ」と猛省した。また、鹿島サイドに対しても「チャンスがあれば僕の口から謝罪させていただきたい」との意思を示した。
一連の騒動はインターネットなどで大きく報じられ、森脇の言動が差別的であったかどうかにも焦点が当てられた。この日は改めて「今回の件で差別的な発言や行動がなかったということを、謝罪と同じくらい皆さんに伝えたい。世間では『差別の森脇だ』と理解されているかもしれないが、そのような言動はなかったと理解していただきたい」と訴えた。また、自らが一貫して主張している内容についても「今まで嘘をついて生きてきた人生ではない。メディアやいろんな方に話した言葉に全くもって嘘はない」と強調した。
選手が熱くなって口論になることも珍しくない試合中における「くさい」という発言で、規律委員会が処分を科したことについて、Jリーグの黒田フットボール本部長は「禁句集のようなものはないが、ピッチは選手がプレーするために立っているところ。社会通念上からも、その目的から大きく外れていると言える」とコメント。同じような問題が起きないために「引き続き選手への啓発に取り組まなければいけない」と述べた。
今季は富士ゼロックス・スーパーカップからフィールドプレーヤーでただ一人、公式戦全16試合に先発していた。チームにとっても個人にとっても厳しい裁定となったが「処分が2試合なのか3試合なのか4試合なのかは関係なかった。自分が気持ちを抑えられずにカッカなったことで、どれだけの人に迷惑をかけたか。多くの方に不快な思い、悲しい思いをさせてしまった事実があるので、真摯に受け止めないといけない。今後同じようなことがあっても、間違いなくそういう行動は取らないと心に誓った」と、終始神妙な口調で反省の弁を並べた。
文・写真=田丸英生
By 田丸英生