[写真]=大澤智子
総合型地域スポーツクラブの湘南ベルマーレは、世代と地域をつなぎながらチャレンジする人を支え、夢と感動を提供することをミッションとする。そのための意欲的な中長期計画として、クラブが打ち出した『SPRINT for 2025』。ベルマーレの社長、水谷尚人氏が見据える湘南の未来とは?
Jリーグサッカーキング5月号[湘南ベルマーレ特集]共走-KYOUSOU-
目指すスタイルを変えることなく進化、深化させていく
「SPRINT for 2025」にあるAFCチャンピオンズリーグ(以下ACL)出場とタイトル争いは、湘南スタイルの進化と深化の延長線上にあると思います。曺貴裁監督が引き続き指揮を執ることも、同じ文脈で語ることができますね。
昨年のJ1リーグで結果が出なかった最大の理由は、2016年への準備の時期にクラブが落ち着いていなかったことにあると思っています。僕自身が社長になったのも15年12月27日で、曺監督の続投は決まっていましたが、準備に対する時間がなかった。昨年のシーズン中から、彼には「結果が出ていないだけで、方向性は間違っていない」と、伝えていました。
J1でもJ2でも、選手が入れ替わっても、サッカーは変わりません。
自分たちのスタイルを、絶えず進化させていくことが重要です。開幕前のスペイン合宿で、ドイツ・ブンデスリーガのブレーメンで14年間監督をしたトーマス・シャーフさんに会ったんです。彼は「クラブと監督と現場が、同じフィロソフィーを持ってやれるかどうかが大切だ」と話していました。結果はもちろん大切ですが、我々は目指すスタイルを変えることなく、進化、深化させていかなければなりません。
「湘南スタイル」は確かなブランドとなり、選手に選ばれるクラブになっています。
柏レイソルから期限付き移籍してきた秋野央樹は、自分の課題と考える前への推進力を、ベルマーレに行けば学べると思ったそうです。試合でそう感じたと聞いて、とてもうれしかったですね。
アカデミーにも湘南スタイルは息づいていますか?
昨年の高円宮全日本ユース(U-15)選手権で準決勝まで勝ち進んだのですが、クラブのOBでもある斉藤俊秀さん(現U-117/U-16日本代表コーチ)が「右サイドの選手は臼井幸平、古林将太(現・名古屋グランパス)と同じですね」と話したのです。二人ともアカデミー出身ですが、そういう選手が増えてくるように持っていきたい。年代別の代表などでプレーをするアカデミーの選手が、「あの子はベルマーレだね」と言われるようにしたいのです。
「湘南スタイル」に惹かれてアカデミーの門を叩く選手は?
まだそこまではいっていない、という印象です。我々がJリーグ選手から選ばれるクラブになりつつある大きな理由は、曺監督がいるからです。アカデミーでも、「あの指導者がいるからベルマーレに行きたい」とお子さん方やご両親が思ってくれたら、もっといい循環が生まれてくるでしょう。例えば、アカデミーからプロになった菊池大介や遠藤航(ともに現・浦和レッズ)がジュニアユースで指導をしていたら、「あ、『湘南スタイル』を身に付けられるな」と感じてもらえると思いませんか?
それは間違いないですね! ただ、彼らはまだ現役バリバリですから、ずいぶん先のお話になりますが。
現状ではアカデミーの指導者の条件を整えたうえで、中学生、高校生にサッカーはもちろんそれ以外の部分でも、より良い指導を提供できるようにしていきます。その考え方の中で、「寄宿舎制エリート養成塾」も取り組みに入れました。Jクラブや高校サッカー部には、寮生活を通して生活面も指導できるチームがありますので。高校生から20歳くらいまでの選手が使用する、合宿所をイメージしています。
スカウトの充実も取り組みに挙げていますが、神奈川県にはJクラブが6つもあります。有望な選手の確保は……。
率直に言って難しいです。ただ、クラブのブランド力をもっと強め、やっているサッカーを明確化し、指導者を充実させ、父兄の方々に「ここなら預けてもいい」と思ってもらえるクラブにしていきます。ベルマーレでサッカーをやると走れるようになるのは一つの指標で、アンダーカテゴリーの代表になる選手が多い、といったイメージもつくれたらと考えます。
「湘南スタイル」で磨かれた選手たちは、他クラブにとって魅力的な戦力です。主力選手を引き抜かれてしまうことは避けがたく、それだけに、アカデミーでの選手育成は欠かせません。
トップチームの主力が引き抜かれそうになっても、我々の中で「同じポジションには高校2年生のあの子がいる」といった話ができるようにしたい。アカデミーの選手までは、さすがに引き抜かれないでしょうから(苦笑)。そのために指導者を充実させたいし、サッカーの能力には教え切れない部分もあるので、才能ある選手のスカウトも充実させなければいけません。これには外国籍選手も含まれていて、我々のスタイルに合った選手を、きちんと連れて来なければいけないと考えています。
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