最も警戒していたウェリントン(写真中央)に2ゴールを許すなど、金沢はチームの課題が浮き彫りになった [写真]=J.LEAGUE PHOTOS
J2リーグ第15節、ツエーゲン金沢はホームでアビスパ福岡に0-5の完敗を喫した。
福岡戦に臨むにあたり、金沢がもっとも警戒していたのはFWウェリントン。J2規格外の高さ、強さを誇るFWだ。戦前、柳下正明監督は、かつてヴァンフォーレ甲府に在籍したバレーとの対戦を振り返りながら、ウェリントンへの対処法を話した。「激しくいったらダメ、思うツボ。ウェリントンに入ったと思ったら、もう(体を当てに)いかない。体を当てるから、ボンっとブロックしてターンする。ターンしたところを狙うことも必要。それができるかどうか」。
立ち上がりから福岡に攻め込まれ、流れを変えられないままCKを献上すると、18分、ウェリントンにヘッドを叩き込まれ失点。さらに24分、ウェリントンに対応したDFが入れ替わられて起点を作られると、最後はMF石津大介に決められた。42分には、再びCKからウェリントンのヘッドを被弾。分かっていても止めるのは難しく、対応は困難を極めた。
リードした福岡は自陣に守備ブロックを構築。これによりスペースが消え、金沢の攻撃は停滞した。ボールを”持たされた”中で、精度とアイデアを欠いてチャンスに辿り着けない。後半、FW松田力に2点を奪われ、0-5でタイムアップの笛を聞いた。
柳下監督は「内容的には完敗」と試合を総括。そして「すべてにおいて向こうの方が上。個人、個人で比べても向こうの方が上だということは分かっている。ただ、向こうの一番のパワーに、こっちも正直にパワー勝負に行っているからやられる。そのあたりもやる前からある程度(選手たちには)伝えてあるので、いかないということも必要だった」と続けた。やはり、体格で勝るウェリントンにパワー勝負は禁物だった。「対戦相手は激しくマークしてきて、体をぶつけてくる。自分の体も強いし、体を当ててくれた方が自分はやりやすいところがある。そこを意識しながら、しっかり当たりに負けないプレーを心がけました。球際は全部勝っていたと思う」(ウェリントン)。
ただ、個の力に屈する以前の脆さもあった。柳下監督はDF廣井友信を早い時間帯にベンチに下げている。「役割をこなせていないので、そのまま続けていたら、前半のうちにたぶん3点、4点失うだろうということで替えました」(柳下監督)。金沢はこれからも松本山雅FC、名古屋グランパスと力のあるチームとの対戦が続く。だからこそ、選手個々が自らの役割をこなすことが勝ち点獲得への最低限条件となる。
「できる選手、できない選手はある程度分かれている。できないけど、やろうとしている選手はチャンスがある。できないのにやろうとしない選手はやっぱりゲームから外れていく」(柳下監督)。チーム内で戦力の二極化が進んでおり、事実上の戦力は15人程度。試合に出続けている選手でさえ、指揮官が頭を抱えるプレーを見せる現状では、J2残留への道のりは相当に険しい。
文=野中拓也
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