甲府の主将を務める山本英臣 ©J.LEAGUE PHOTOS
ヴァンフォーレ甲府は主力CB二枚を欠いて、ゴールデンウィークを迎えていた。4月16日のJ1リーグ第7節・アルビレックス新潟戦で山本英臣、4月22日の第8節・セレッソ大阪戦で新井涼平が相次いで負傷。二人はそれぞれ主将と副主将で、チームにとってはかなり大きな穴だった。
甲府は二人がプレーしなかった4試合を1勝1分2敗で乗り切った。吉田達磨監督が「第2グループかなと思った選手が地道に練習をしていて、試合へ出たときに思いの外、ちゃんとやれた」と振り返る。チームはCB畑尾大翔を中心に一定レベルの内容は見せていた。ただ第10節の横浜F・マリノス戦(0-1)、第11節・サンフレッチェ広島戦(1-2)と直近の2試合は連敗中。28日に開催される第12節・FC東京戦は違いを見せる必要がある。
山本英臣はケガ明けだが、横浜FM戦と広島戦の2試合はリザーブに入っていた。吉田監督は「信頼しているからベンチにも置ける、信頼しているからいつでも使えるという状況にある」と彼の処遇を説明する。直近のリーグ戦は連敗し、24日のルヴァンカップでの新潟戦は畑尾大翔がフル出場したという起用を見ても、FC東京戦は山本が先発に復帰するタイミングになるのではないだろうか。
山本はチームの課題について、「監督がやろうとしていること、言っていることがあるけれど、特に試合の前半は本当に言ったとおりの現象が起きる。その時間はいいサッカーを出せる時間が伸びている。一方でアクシデント的に何かが起きたとき、緊急を要するときの対応がちょっと良くなかった」と話した。
緊急事態における“アドリブ”は、山本が得意とする部分だ。身長は175センチで、特に身体能力が優れているわけでもない36歳の彼がJ1で戦えている理由は、ギリギリの場面における判断力に尽きる。広島戦を例に挙げつつ、そういう場面での状況判断を次のように語っている。
「味方がボールにこういう行き方をしたから、相手のボールはこっち側に来るだろうなという予測が立つ。味方の行き方が曖昧だったり、中途半端に行ったときはこっちも狙いが定まらなかったりする。特に広島戦の1失点目は、行けないんだったら行けないなりの対応ができた。そこがハッキリしないまま少しずつ行って、少しずつやられた感覚がある」
大胆なインターセプトは山本が得意とするプレーだが、冷静な状況判断がベースにある。山本のプレーは『ハッキリ行くとき』と『ハッキリ戻るとき』のメリハリが強い。もちろん味方の位置取り、相手のボール周りの雲行きがよく見えているから、「味方の(相手ボールへの)行き方を見たり、スピード感を見たり、そういう準備さえしておけば、どちらにも対応できる」と、そこで明確なジャッジができる理由を説く。
甲府は吉田監督が今季から指揮を執るようになり、5バックは維持しつつ、そこに守備の積極性が付加しつつある。ベテランの彼も「早めに準備さえしておけば、相手の持ち方、ボールを蹴れる状況にあるかどうかで、(マークを)切っていい。僕もボール中心にポジションを取るタイプだけど『これくらい早く切っていい』というのは、改めて気づかされたところ」と自身の“進化”を口にする。
一方で山本はこうも言う。「いいサッカーをしながら結果が出ていないけれど、そこに結果が伴ったら先の景色が見られると思う。そのために力を発揮できればいい」
甲府は12試合を終えて勝ち点13、14位という立ち位置だ。内容が悪くない、ケガ人に苦しんだというエクスキューズはあるかもしれない。しかし「もっとやれたはず」というもどかしさは、間違いなくチームに携わる全員が抱えている。キャプテン山本と甲府が見せる、これからの反攻に期待したい。
文=大島和人
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