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【ライターコラムfrom浦和】偉大な記録ストップも“普段通り” 阿部勇樹、チームのために

2017.06.06

柏戦でリーグ戦フル出場の連続試合が139でストップした阿部 ©J.LEAGUE PHOTOS

 いかにも、らしい所作だった。

「それは大丈夫です。考えたことないので。たぶん気にしてくださるのは、みなさんくらいしかいないので。ノーマルなことだと思うので、気にしてません、はい」

 阿部勇樹は自身のリーグ戦連続フル出場記録が途絶えたことを報道陣に聞かれると、笑顔を浮かべながらそう答え、足早にその場を後にしていった。

 阿部はメディアが取材をしようとすると、笑顔で巧みにかわしていくことがよくある。それは都合の悪い話を避けたいからではない。むしろ、大事な試合で負けた時や苦境に陥った時など、不快に感じてもおかしくない話題の時こそ取材に応じて自身の見解をしっかりと述べる。逆にチームが勝った時、自身にスポットライトが当たる時によく逃げていく。

 6月4日に行われたJ1リーグ第14節の柏レイソル戦、スタメン出場した阿部は後半24分に交代を告げられ、2013年5月11日の鹿島アントラーズ戦から続いていた連続フル出場記録が139試合でストップした。

 この試合は首位を走る柏との直接対決で、浦和レッズは0-1の黒星を喫した。リーグ序盤とはいえ、重要度の高い試合を落としたこともあり、阿部は取材に応じて敗因、修正点について丁寧に話をしていたが、自身の記録に話が及ぶと手短にまとめた。それはこれまで何度も「僕のことはいいんで」と苦笑しながら帰っていった阿部らしい対応で、こちらもつい笑ってしまった。

阿部勇樹

©J.LEAGUE PHOTOS

 阿部は本当にそういった記録など気にしていなかったはずだ。チームの勝利に心血を注いで、個人の栄誉にはまったく関心を示さない。それはこれまでの所作からも窺い知れる。むしろ、周囲の人間、とりわけ起用を決める監督の方が配慮していたことだろう。試合後、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督はこのように話している。

「阿部選手は非常に重要な選手であり、そういう選手だからこそ、私自身、非常に注意を払って彼を起用している」

 実際、指揮官はこれまでも阿部の起用に関しては様々なことを考えながら決断を下していたと思われる。昨シーズン終盤、阿部は明らかに本来の状態からはほど遠いコンディションだったが、それでもピッチに送り込まれた。普段なら絶対に当たり負けしない局面で後手を踏んだり、パスの精度が落ちていたりしていた。ただ、調子が落ちていたとしても他に重役を担える選手がいないという事実やチーム内での存在感、記録のこともあっただろう、ペトロヴィッチ監督は阿部をフル出場させ続けた。

阿部勇樹

©J.LEAGUE PHOTOS

 そんな指揮官でも、交代の判断を下さざるを得なかったのが柏戦だった。

「試合前から水曜日の疲労が残っていることは十分わかっていた。そういう中で、どこまでいけるのかということを判断して、今日の試合のスタメンにした。その状態よりはもちろん回復していたけど、あのハードなゲームの後で今日、90分戦い抜くのは難しいかなと予想していたし、実際に少しきつそうな部分が見えたので交代を決断した」

 阿部は4日前のAFCチャンピオンズリーグの済州ユナイテッド戦で延長を含めて120分間プレーしていた。済州戦では、試合中に何度も足裏をストレッチして、つった足をなんとかしようとする姿が見られていた。35歳のベテランが中3日でその状態から完全回復するというのは現実的ではない。

 コンディションだけを考えれば、途中交代は妥当な判断と言っていい。それでも勇気のいる決断だったはずだ。記録を途絶えさせた、という十字架を背負うのだから。ペトロヴィッチ監督は「一番ホッとしているのは彼かもしれない」と言って笑ったが、もしかしたら阿部よりも自身の方が安堵したのかもしれない。説得力のある形で一区切りすることができ、今後は純粋にピッチ上のことを考えたチームマネジメントに注力できる。

 実際、「これからはもしかしたら、そういうところで躊躇することなく代わることはあるかもしれない。ただ阿部選手は連戦でなければ90分戦い抜ける選手」と話し、起用法に変化が生まれる可能性について言及している。

 偉大な記録が途絶えたのは残念だが、タイトルレースが佳境を迎える終盤、阿部がトップフォームでチームをけん引する姿を見せていたら、柏戦は再評価されることになるかもしれない。

文=神谷正明

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By 神谷正明

東京都出身。大学卒業後、フリーランスとして活動を開始。20年以上にわたってサッカーの取材を続ける。現在は主に浦和レッズ、日本代表を定期的に取材しており、翻訳も手がける。

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