スタメンの座を射止め、柏の躍進を支える手塚康平 [写真]=J.LEAGUE PHOTOS
今季、柏レイソルが序盤で躓いた原因の一つに、茨田陽生と秋野央樹の移籍により、中盤のパス回しを潤滑にさせる司令塔の不在が大きく影響していた。開幕4試合は1勝3敗、15位に沈んでいた柏だったが、その“司令塔不在”を解決させたのが手塚康平である。2017明治安田生命J1リーグ第5節サンフレッチェ広島戦での手塚の起用以降、柏は10試合で9勝1敗とV字回復を果たした。
開幕前、下平隆宏監督は茨田、秋野の後釜として「手塚で十分やっていける」と太鼓判を押していた。指揮官のお墨付きもあって、おそらく試合に絡んでくるだろうとは思っていたが、手塚はここまでその予想をはるかに上回る活躍を見せている。
3月15日のJリーグYBCルヴァンカップ・グループステージ第1節清水エスパルス戦にて、手塚は鮮やかなダイレクトボレーで決勝弾を決める鮮烈なデビューを飾った。するとJ1第5節の広島戦では、堅い相手の守備を攻略するために「手塚の左足に懸けてみようと思った」と、下平監督はJリーグデビューとなる若いレフティーの展開力を期待してピッチへ送り込む。チームのビルドアップを潤滑にし、的確な配球によって攻撃へのテンポアップをもたらした手塚は、瞬く間にスタメンの座を射止めた。チームも開幕当初の不調から脱却し、現在は8連勝を記録してJ1の首位に立っている。

左足のキックを武器にチームの攻撃をけん引する [写真]=J.LEAGUE PHOTOS
手塚は柏U-18時代から展開力と左足キックには定評があったが、プロのステージで見せるプレーには明らかに当時からのスケールアップが見て取れる。
「ボランチに康平がいることでボールの保持率が上がりますし、守備にも攻撃にも動くようになって、運動量が増えたところはユース時代から変わった部分ですね。昔は少し下がった位置でビルドアップをしていくクレバーな選手という感じでしたが、今はアグレッシブさが増したのかなと思います」(中山雄太)
「康平は昔からメチャクチャうまかったですけど、今は球際が強くなりました。攻撃意識も高くなりましたし、昔はあんなにシュートを打つ選手ではなかったです。今はフリーなら、康平がミドルシュートを狙えば入る気がします」(大島康樹)
これはアカデミー時代からの同期である中山と大島が語る、U-18時代と現在の手塚のプレースタイルの違いだ。以前からの課題だった守備や球際も、手塚自身が正面から改善へと取り組んできたため、その成果が少しずつピッチで表れ始めている。
さらに手塚が、プロの世界で生き残るために考えたのは守備面の向上だけでなく、「相手にとって怖い選手になる」ということ。そのため全体練習終了後には、必ず居残りでミドルシュートやFKの練習を欠かさず、遠目からでも得点を狙える怖さを身につけようと、日々継続して反復練習に励んでいる。それが中山、大島の言う「攻撃意識」「アグレッシブさ」にもつながっているのだ。
そしてJ1第12節ジュビロ磐田戦では、日本を代表するレフティー、中村俊輔とマッチアップ。その凄みを肌で体感すると、手塚はこの先に自分が目指すプレースタイルのイメージを、より鮮明に描いた。
「俊輔さんは、どこでボールを持っても良いパスを出すので、すごく怖い存在でした。自分もああいうふうに、どんな状況でも、どこでボールを持っても良いパスを出して、良いシュートを狙い、相手にとって怖い存在にならなければいけないと思う」(手塚)

日本を代表するレフティー、中村俊輔との対峙で刺激を受けた [写真]=J.LEAGUE PHOTOS
今季、リーグ戦ではFKとミドルシュートで、すでに2得点を記録している手塚。彼の左足の威力が対戦相手にも知れ渡ってきたため、今度は左足をフェイクに使い、相手が飛んだところで持ち替えた右足でシュートを狙う幅の広さも見せるようになった。その局面を振り返った際にも、「左右のシュートとは別に、パスコースをもう2つぐらい見つけて、最低でも3つ、4つの選択肢を持てれば、得点の確率も上がってくるし、プレーの幅ももっと広がると思う」と、より“怖さ”を追求しようとする姿勢には今後への期待しか感じない。
試合出場を重ねるごとに力を伸ばしていく21歳の司令塔。この先、激しいマークが予想される中で、この若者が自らの成長へいかにしてつなげていくのか、それが実に楽しみだ。
文=鈴木潤
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By 鈴木潤


