山形ユース所属の半田はセンターバックとサイドバックを兼ねるDF [写真]=SPORTS YAMAGATA 21
6月14日から18日までユアテックスタジアム仙台を会場に開催された『U-16 インターナショナルドリームカップ2017 JAPAN』。日本、オランダ、アメリカ、ギニアのU-16代表が集う国際大会のメンバーに、モンテディオ山形ユースのDF半田陸も名を連ねた。
2002年1月1日生まれの半田は今年のU-15日本代表としてイタリア遠征などに召集されているが、今回は2001年生まれの選手を中心に編成された一つ上(とはいえ同級生なのだが)のチームに合流した形だ。地元山形から近い仙台での開催とあって、小学生の時に所属した上山カメレオンFCの子供たちも観戦。その目の前で、日本代表の14番を着けて堂々と闘う勇姿を披露した。
第1戦(日本1−3オランダ)はセンターバックで先発し、サイドバックやボランチにポジションの指示を飛ばす。後半途中から右サイドバックに入ると積極的に前を伺ったが、守備のバランスは崩さない。1対1の守備でも身体を張るたくましさを見せた。
第2戦(日本4−2アメリカ)は右サイドバックでスタート。前半、マッチアップしたアメリカのFWにマークを外されシュートを打たれるシーンもあったが、試合の中で修正しているのだろう、時間の経過と共に対応に余裕が出てくる。後半途中から左サイドバックに変わると攻撃の比重を上げて躍動する。「前にスペースがあればスピードには自信があるので自分で運べる」と自負するとおり、ワンツーで上がってペナルティエリア内に侵入。相手DFに阻まれたが、PKの判定でもおかしくないシーンで観客を湧かせた。
そして、5−0で勝てれば優勝という条件で迎えた第3戦。日本はそのとおりのスコアでギニアを下す。半田は、森山佳郎監督が「ベストメンバーで行く」と宣言したこの試合も右サイドバックで先発。裏を取られたかと思えば猛追してスライディング。ノーファウルでクリアした直後にはドリブルで颯爽と攻め上がり好クロスを入れる。ユアスタに駆けつけた6,693人の観衆は、その存在を強く目に焼き付けたことだろう。試合後、半田は初めて対戦したアフリカのチームについて「身体能力が高くてやりづらかった」と振り返ったが、やりづらい相手をどう封じるかを全力で考えて実行した90分だったに違いない。
森山監督の半田評も高い。
「身体能力が高く、アフリカの選手にも全く引けを取らない。戦う姿勢を持っているし、守備の予測能力が高い。攻撃でもミスを恐れずに上がっていく。当然、もっとクオリティを上げたい部分もあるが、それを補って余りあるアグレッシブさはチームに勇気を与えてくれた」
半田は今回のメンバーの中で唯一東北から選ばれた選手。そのためか地元メディアの注目度も高かったので、多少のリップサービスは含まれていたかもしれない。しかしそれを差し引いたとしても、ポテンシャルの高さは疑いようがない。
濃密な3試合と国際大会優勝の経験は、山形の秘蔵っ子をどれだけ成長させただろうか。しかし、これから先の成長の道程を思えば、これもほんのワンステップに過ぎない。チームに帰って結果を出し、U-15日本代表として、9月から始まる『AFC U-16選手権2018』予選を戦うことが当面の目標になる。
クラブとしても当然、半田が順調に伸びていける環境を作っていきたいと考えているようだ。まだ高校1年生だけに身体の成長段階を考慮しながらではあるが、もしかしたら、早ければこの夏休みにもトップチームの練習に参加する姿が見られるかもしれない。
今回のU-16日本代表のメンバーは、半田を除けば全て首都圏か関西のチームに所属している。他の選手たちは普段から何らかの形でよく顔を合わせるだろうが、半田にはその機会は限られる。この大会は半田にとって、この先長く切磋琢磨していくことになる同世代の仲間との絆をつくるという意味でも、とても大きかったはずだ。
大会が閉幕し、スタジアムに横付けされたバスに日本の選手団が乗り込む。その横にぽつんと一人、半田が立っていた。家族か誰かが迎えに来ているのだろう、彼だけがここから山形に帰るのだ。動き出したバスの窓から誰かが叫ぶ。「陸! また会おうぜ!」。
文=頼野亜唯子
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