鹿島戦の敗戦を糧に、首位奪還を目指す [写真]=Getty Images for DAZN
明治安田生命J1リーグ第17節、柏レイソルは鹿島アントラーズに2-3で敗れ首位から陥落した。敗れたとはいえ、悲観するような試合内容ではなく、依然として柏が上位を争える位置にいることは間違いない。
ただし、後半戦も首位争いを繰り広げ、最後に覇権を手にするためには夏場の戦いは重要なポイントとなる。
前半戦の柏は、中川寛斗を中心とした前線からのハイプレスが特に注目を集めた。したがって「この消耗の激しいサッカーで、果たして夏場は体力が持つのだろうか」という懐疑的な声が度々聞こえてきたのも事実である。しかし柏は、90分間に渡って絶え間なくプレスをかけ続ける守備的なチームではない。むしろ自分たちがボールを保持することで試合の主導権を掌握しようとする攻撃的なチームだ。
ともに“前半戦の大一番”と位置付けた2試合、勝ち切った浦和戦と競り負けた鹿島戦を比較することで、この夏場を乗り切る鍵が鮮明に見えてくるのではないか。
浦和戦後の記者会見で、記者から「90分間、プレスをかけ続けられると判断して臨んだのか」という質問がなされた際に、下平隆宏監督は次のように答えていた。
「前半に自分たちがボールを持って主導権を握っている時間があり、浦和を走らせることができた。自分たちの時間を増やすため、ビルドアップから攻撃のところには多くの時間を割いてトレーニングをしている。ハーフタイムには選手が元気な顔で疲労感なく帰ってきたので、これはいけるなという感じがあった」
だが鹿島戦における指揮官の言葉は、それとは対照的だった。
「前半、もうちょっと自分たちがボールをもっと持てるんじゃないかと思った。実際に持てて崩せているシーンもあり、それが頻繁に出せないのかと前半は思っていた。中盤であればレオ・シルバの見えないプレッシャーがあったんだろうと感じていたが、そういうのにビビらず、ボールを動かし、スペースを見つけ、チャンスを作るというのはもっとできたんじゃないかと悔いが残る」
相手を走らせることができた浦和戦に対し、鹿島戦は拮抗した攻防の中、押し込まれる時間帯もあった。下平監督が言ったとおり、鹿島から奪った2つの得点は鮮やかな崩しから生まれたため、あのような場面を頻繁に作れていれば、前半からもっと相手を走らせ体力を削ぎ落とすことができていただろう。だがそれができず、柏も試合終盤は疲労の色が濃くなった。そしてオープンな展開になった結果、柏は最後の精度に欠けた。2-2で迎えた柏のビッグチャンスで、クリスティアーノの横パスが伊東純也にわずかに合わず、ネットを揺らすに至らなかったなかったが、体力的にもう少し余力が残っていれば、あの決定機は違った結果になっていたかもしれない。
下平監督は、鹿島戦では前半から主導権を握れなかった事実を認めつつ、「圧力に負けた気がして悔しいが、そこは経験を積み、自信がついていけばできる部分。まだまだ伸びる」とも話している。
「レオ・シルバに少しビビってしまう場面があったんですが次からはもう大丈夫です。自分たちのペースにどれだけに持っていけるかが勝敗を分けると思うので、次に向けて修正していきたい」
若き司令塔・手塚康平は、試合直後にはそう振り返り、“前年王者”の醸し出す圧力を体感した経験を早くも成長へつなげる意識を露わにした。それは中谷進之介、中山雄太を含め、平均年齢24歳という若い柏にとっては、多くの選手に該当することでもある。
アカデミー出身の選手は、子どものころから柏のスタイルで育ち、ボールを動かし、どこにスペースがあり、誰がフリーマンで、周囲の味方と関わりながら攻撃を組み立てていく、そのプレースタイルが身体の奥底まで染みついている。鹿島戦の敗戦は「自分たちのストロングポイントはいったい何なのか」と、改めて見つめ直す良い機会にもなった。そして体力的に厳しくなる夏場だからこそ、自分たちのスタイルがより重要になることを学んだ。この経験を生かし、柏の多くの選手たちがアカデミー時代から積み上げてきた「ボールを動かして主導権を握るスタイル」を発揮できれば、相対的に対戦相手を走らせ、体力を削ぎ落とすことにつながる。それはすなわち、「ハイプレスでは体力が持たない」と言われ、“不利”と見られていた夏場の戦いを、むしろ自分たちの“有利”な状況へと変換できるのだ。
前年王者に屈したが、幸いまだリーグ戦は折り返しを迎えたに過ぎない。今回の敗戦を、柏は今シーズンのターニングポイントにしたい。
文=鈴木潤
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By 鈴木潤