今季、広島からレンタル移籍した宮原はここまで公式戦21試合に出場している [写真]=J.LEAGUE PHOTOS
あまり話題にならないが、ここまでチームで唯一の全試合出場選手なのである。しかも、第8節の徳島ヴォルティス戦で前半のみで交代した以外は、20試合フルタイム出場。サイドバックが主なポジションの選手としては、もはや鉄人認定していいほどの働きっぷりだ。守備のユーティリティーとして、また戦術理解度の高い選手として早くから風間八宏監督の信頼を勝ち取っていた宮原和也は、42試合のマラソンの折り返し地点をスタート地点以上の充実ぶりをもって通り過ぎようとしている。
開幕戦は3バックの一角だった。172cm、67kgと決して体格に勝るタイプではないが、「ボールを奪うのが持ち味です」と語る生粋の守備の人間。空中戦で狙われても「しっかり身体を寄せるて自由を奪う」とケーススタディは万全で、ポジショニングなどの守備のセンスは「良いセンスを持ってますよ」と楢崎正剛のお墨付きだ。今季は本来のボランチのほか、ウイングバックなどもこなし、現在は右サイドバックが定位置に。「和也はボールが運べる選手」と佐藤寿人も認める長所を生かし、攻撃的なチームを攻守両面で下支えする重要人物だ。
コンスタントな試合出場を続ける中で「ゲームに慣れてきた」と、昨季J1で13試合出場の選手は語る。J2という下部リーグではあるが、それだけに自分が優位に立てる場面も多く、守備の駆け引きなども能動的にチャレンジしては感覚を確かにしてきた部分もあるようだ。現在の名古屋は守備の基本的な考え方の一つに「1人で2人が見れるポジショニング」があるが、これも宮原はさらりと飲み込み、「サイドを狙ってくるロングボールへの反応を速くしろと言われています」とさらに高度な要求をされるほど。試合中、カウンターの局面などでは特にそのセンスを確認することができ、実はチーム内でもトップクラスという俊足もそこには生きてくる。
いよいよ2周目に突入するJ2リーグでは、首位と勝点差9と予断を許さない状況にチームが置かれてもいる。順位表にして5位の差をどのように受け止めるかは人それぞれだが、宮原は「けっこう大きいし、もう取りこぼせない」と危機感を口にする。相手の特徴をはじめ未知数な部分が多かったJ2の戦いだけに、一度戦ったことで与しやすい部分も出てくるだろうが、それは相手も同じと宮原。その上で「楽しみですね」と笑う表情は21歳らしい若さにあふれている。プレーの老獪さとのアンバランスさもまた、彼の魅力だ。
後半戦最初の相手は奇しくも唯一の交代を味わった徳島である。しかし相手には特に興味は示さず、「最近はコンディションも安定してきましたし、暑くなってくるのでもっとタフにやらないと」と自分と戦う。前線のタレントと攻撃性ばかりが目立つ名古屋だが、宮原のような職人の働きにも時には注目してみてほしい。
文=今井雄一朗
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