7試合連続でゴールマウスを守る徳島GK長谷川徹は、名古屋の下部組織出身 [写真]=J.LEAGUE PHOTOS
■名古屋の下部組織で育った、徳島GK長谷川徹
3試合で13得点という凄まじい攻撃力を発揮し、怒涛の3連勝で一気に3位まで浮上してきた徳島が、ここ5試合で1勝4敗と急ブレーキが掛かり、6位へ後退した名古屋のホーム・豊田スタジアムへ乗り込む一戦。このゲームでは名古屋の下部組織で育ったアウェイチームの守護神に注目が集まります。
序盤はなかなか出場機会が訪れなかったものの、第15節の水戸戦で今シーズン初スタメンを勝ち取ると、そこから前節の愛媛戦まで7試合連続でゴールマウスを託されており、チームの好調を最後尾から支えている徳島のGK長谷川徹。前述したように彼はジュニアユースとユースの6年間を名古屋でプレーしていました。
長谷川と共にトップ昇格を果たす吉田麻也(サウサンプトン)、福島新太(ヴェルスパ大分)、新川織部に加え、大学を経てプロの舞台に辿り着いた森本良(奈良クラブ)、久保裕一(相模原)、酒井隆介(名古屋)と、実に7人のJリーガーを輩出することになる長谷川の代は、高校3年時に高円宮杯全日本ユースサッカー選手権(U-18)大会で、並み居る強豪を撃破してファイナルへ進出すると、初優勝を懸けて、これまたのちに長谷川とは名古屋でチームメイトとなる金崎夢生率いる滝川第二と対戦。結果は0-2で敗れ、残念ながら日本一には届かなかったものの、クラブ史上最高位となる全国準優勝を支えたいわば“黄金世代”の4人は、大きな期待を寄せられる中でプロの道を歩み出します。
ただ、長谷川にとって大きな壁となって立ちはだかったのは、日本代表でも主力として活躍していた、国内屈指の実力を有する楢崎正剛。さらに櫛野亮や西村弘司、広野耕一といった先輩たちの存在もあってベンチ入りもままならず、プロ入りからの4年間で公式戦の出場は、2009年に豊田スタジアムで磐田と引き分けたリーグ戦の1試合を含めて3試合のみ。2011年に1年間の期限付きで加入した徳島に、翌シーズンからは完全移籍で加わることを決断し、10年に及ぶ名古屋でのプレーに終止符が打たれることになりました。
新天地でもなかなか出番の与えられなかった長谷川の風向きが変わったのは、徳島にとってクラブ史上初めてとなるJ1を戦っていた2014年シーズン。開幕スタメン以降は再びベンチ生活が続いていたものの、7連敗で迎えた第8節にスタメンへ返り咲くと、そこからはレギュラーを完全に奪取。第15節の名古屋戦では豊田スタジアムで勝ち点1の獲得にも貢献し、プロ8年目にしてようやくブレイクの時を迎えたのです。
以降は、負傷離脱期間を除く大半の試合で徳島のゴールを守ってきた長谷川にとって、古巣でもある名古屋のホームに乗り込むのは3年ぶりのこと。さらに4年間に渡ってトレーニングを共にした楢﨑も前々節からスタメンに復帰しており、そういう意味でも彼にとってこの試合が特別な90分間であることは間違いなさそうです。両者の勝ち点差はわずかに2。名古屋が勝てば順位の入れ替わる今節は激戦必至ですが、実は長谷川が豊田スタジアムでプレーした過去の2試合はいずれもドローだったというデータも踏まえ、ここは好ゲームの末のドローを予想し、「0」にマークしたいと思います。
■市立船橋高校の“黄金世代”が、フクアリで再会を果たすか
前節は大分相手にホームで4得点を奪い、今シーズン初となる連勝を達成した13位の千葉が、3連敗中で20位に沈む讃岐とフクダ電子アリーナで激突する今節。このゲームで期待したいのは、高校時代に日本一を経験している市立船橋高校の同級生、千葉の大久保裕樹と讃岐の原一樹がピッチ上で再会できるか否かというポイントです。
第81回高校選手権決勝。市立船橋と国見が対戦したこのカードは、両チームのスタメン合わせて何と17人もの選手がのちのJリーガーだったという伝説の一戦。平山相太(仙台)や柴﨑晃誠(広島)、現在は讃岐で原のチームメイトでもある渡邉大剛など国見の9人に対して、市立船橋は小宮山尊信(横浜FC)、青木良太、増嶋竜也(仙台)、大久保と4バック全員がプロになっており、他にも原とカレン・ロバートの2トップ、中盤でも小川佳純(鳥栖)に鈴木修人と全部で8人がJリーグの道へ。ゲームは後半に小川が30mクラスのミドルシュートをゴールに突き刺し、市立船橋が1-0で日本一を獲得。大久保はそのまま高卒ルーキーとして広島へ、原は駒澤大学を経て、清水へ大卒ルーキーとして加入することになりました。
プロ1年目でJ1昇格を経験した大久保でしたが、広島ではほとんどゲームに出られず、2005年からは京都で4年間プレー。ここでも2度のJ1昇格に立ち会い、2009年には栃木へ完全移籍。松田浩監督の下でプロ入り後は初となるレギュラーを確保し、着実に実力を伸ばしていったチームをセンターバックの位置から支えます。さらに、2012年から在籍していた徳島でもプレーオフの末にJ1昇格を勝ち獲ると、2014年にも完全移籍を果たした松本でシーズン最終盤にスタメンを奪取し、J1昇格の懸かった福岡戦もフル出場で勝利に貢献。5度の昇格を経験するという稀有なキャリアを歩んできた大久保は、昨シーズンから地元でもある千葉でプレー。9年ぶりのJ1復帰を目指すチームの中で、昇格の雰囲気を知る彼の存在はギリギリの局面で重要になってくる気がします。
一方の原は加入2年目となった2008年にブレイク。岡崎慎司(レスター)や西澤明訓、矢島卓郎らが居並ぶフォワード陣の中でコンスタントに出場を重ね、リーグ戦6ゴールをマーク。優秀新人賞も獲得します。4シーズン清水でプレーした原は、2011年に浦和へ完全移籍を果たすも、リーグ戦はノーゴールに終わり、そのオフに京都へ加入。大木武監督が敷いた独特なスタイルのフィニッシャーとして、とりわけ2013年のJ2ではキャリアハイの12ゴールを叩き出したものの、チームは2年続けてJ1昇格プレーオフで敗退。2014年からは浦和時代のGMでもあった柱谷幸一監督率いる北九州に移籍し、3シーズンで36ゴールを挙げるなど、前線の核として得点を量産し続けましたが、昇格を目指して挑んだ2016年シーズンの結果はまさかのJ3降格。今年からはJ2残留争いの続く讃岐へ所属を移すこととなりました。
4月中旬から負傷離脱していた原は既に戦列復帰しており、今シーズンはここまで4ゴールをマーク。大久保も前々節の岐阜戦で今シーズン初スタメンを飾ると、前節もベンチには入っており、同級生がピッチ上で対峙する可能性は十分にあるのではないでしょうか。プロ入り後に2人の直接対決はリーグ戦で4試合ありましたが、結果はその4試合で3ゴールを決めている原から見て3勝1敗という数字も。ただ、現在の千葉と讃岐のチーム状況を見ると前者の勢いが勝ると考え、今回は千葉が3連勝を達成することになる「1」を予想します。
文=土屋雅史
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※本文中の「1」はホームチーム勝利、「0」は引き分け、「2」はアウェーチーム勝利。
■明治安田生命J2リーグ第22節
2017年7月8日(土)18時キックオフ
名古屋グランパスvs徳島ヴォルティス(豊田スタジアム)
■明治安田生命J2リーグ第22節
2017年7月8日(土)18時キックオフ
ジェフユナイテッド千葉vsカマタマーレ讃岐(フクダ電子アリーナ)
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