■琉球の攻撃を牽引する、高校の先輩後輩コンビに注目
リーグ前節は鹿児島に1-0で競り勝ち、これで無敗も9試合継続中となった6位の琉球。今節は1ポイント差の7位につけている北九州と、ホームの沖縄県総合運動公園陸上競技場で戦うことになります。このゲームでは琉球の攻撃を牽引する國學院大學久我山高校出身の先輩後輩コンビに注目したいと考えています。
今シーズンから9番を背負うのは、1995年生まれで“先輩”の富樫佑太。1年生から名門の國學院久我山でセンターフォワードを任され、全国に出場した高校選手権ではいきなり開幕戦で国立競技場も経験。年を追うごとに着実に進化を遂げ、最上級生となった3年時には世代屈指のストライカーという評価を得るまでに成長します。
ただ、もともとプロ志向が強かったため、大学進学という選択肢は早い段階で消しており、卒業後は単身スペインへ渡ったなかで、日本人のいない環境でコミュニケーション能力の向上は図れたものの、ビザの関係もあって、なかなか公式戦の出場は果たせません。そして、現地での生活も1年が過ぎたタイミングの2015年、高校時代の恩師でもある李済華GM(当時はアカデミーダイレクター)との縁もあって琉球に加入。現在は少しずつリーグ戦の出場時間を伸ばしているなかで、「もう人間も時間も“フリー”なのでのんびりしていて、ストレスがまったく溜まらない生活を送っています」と話したように、今年で3年目となる沖縄生活を楽しく送っているようです。
一方、今シーズンの開幕後に加入が発表されたのは、1998年生まれで“後輩”の名倉巧。富樫とは学年的にちょうど入れ替わりとなる代ですが、「富樫くんたちのサッカーを見て『久我山に入りたい』と思いました」と話す名倉が一躍脚光を浴びたのは2年時の高校選手権。大会前こそノーマークに近かった國學院久我山は、前橋育英や青森山田といった強豪を相次いでなぎ倒し、とうとうファイナルまで到達。最後は東福岡に0-5で屈する格好となりましたが、その卓越したテクニックで大会を沸かせた彼の存在は全国のサッカーファンの知るところとなります。
ところが、キャプテンにも指名された昨年の3年時はインターハイ、選手権と共に予選で早期敗退。全国の舞台へ帰還することは叶いませんでした。そして、今年の3月、練習参加をきっかけに琉球への加入が決定すると、いきなり「デビューするなら点は取りたいなと思っていた」というG大阪U-23とのJ3デビュー戦で2ゴールの大活躍。「フィジカル的な部分ではまだまだ課題がありますけど、他の選手と絡みながら、自分のプレーは少しずつ出せているかなと思います」と話すなど、徐々にプロとしての自信を深めているのは間違いありません。
「普通にタメ語で話しかけてくるので、先輩後輩という意識はないですね(笑)。でも、全然僕も気にしていないですし、そういう部分は『久我山らしいな』と思います」という富樫の名倉評を本人にぶつけると、「ちゃんとリスペクトしてますよ」と笑顔で話す一幕も。“先輩後輩”の関係性も良好な様子。あとはその連係をピッチの中でも大いに発揮してほしいところです。今節は琉球にとって前半戦のラストゲーム。ここからのさらなるステップアップへ向けて大事な一戦は、久我山コンビにも期待しつつ、琉球が無敗を10試合に伸ばすという予想の「1」で勝負します!
■現役復帰を果たした鹿児島のベテランの奮闘に期待
4勝7分4敗で10位の相模原と、7勝1分7敗で8位の鹿児島が相模原ギオンスタジアムで対峙する1巡目も折り返しのゲーム。この対戦では、一度はスパイクを脱いだものの現役復帰を決意し、再びピッチでボールを追い掛けている鹿児島の吉井孝輔が気になる存在です。
2004年に鹿児島城西高校から湘南に高卒ルーキーとして加入した吉井。同期入団の永里源気や中町公祐が出場機会を得ていく一方で、実力者の揃うボランチの定位置を奪うまでには至らない時期が続くなか、2006年シーズンも終盤に差し掛かった10月に、Jリーグへの加盟を目指していたロッソ熊本へ完全移籍。JFLの舞台で再スタートを切ることになりました。
明けた2007年はロッソにとっても吉井にとっても勝負の年。このシーズンを吉井はレギュラーとして過ごし、リーグ戦26試合2得点という数字を残して、昇格条件となる2位確保にきっちり貢献。クラブと共にJリーグの舞台へ返り咲きます。熊本の昇格初年度となった2008年には念願のJ2初ゴールも記録。そこから7シーズンの大半を主力として戦った吉井は、負傷の影響もあって大幅に出場時間を減らした2014年に引退を決意し、熊本のユースコーチに就任。11年間の現役生活にいったんは別れを告げたはずでした。
ところが、2016年1月。意外なリリースが鹿児島ユナイテッドFCから発表されます。それは【吉井孝輔選手 新加入のお知らせ】。1年間を指導者として過ごした吉井は、地元でもある鹿児島のオファーを受け、現役復帰を決断。熊本に続いて鹿児島でもクラブのJリーグ参入元年に選手として携わることとなったのです。
昨シーズンは10試合のスタメンを含む15試合に出場し、第9節のC大阪U-23戦では3年ぶりとなるJリーグでのゴールも記録。終盤まで上位争いを繰り広げたチームに安定感をもたらすと、今シーズンは出番の少なかった序盤戦を経て、ここ3試合はいずれもスタメンフル出場。前節の琉球戦も同じ鹿児島出身の赤尾公とドイスボランチを形成しており、後半には力強いカットから決定的なスルーパスを繰り出す一連も披露。全体のバランスを見ながら、エネルギッシュに走り回る姿が印象的でした。
相模原と鹿児島のリーグ戦における対戦は昨シーズンの2試合のみで、鹿児島から見て1勝1分と無敗。なおかつ、敵地、相模原ギオンスタジアムでのゲームでは、4-0で大勝を収めるなど、鹿児島にとっての相模原は相性が良さそうな雰囲気も。ここはそのデータと吉井の奮闘を信じ、鹿児島が勝ち点3を獲得するという「2」で勝負に出ます!
文=土屋雅史
J3は当せんの行方を左右する重要な要素。国内サッカー事情に精通した土屋雅史氏がJ3攻略のカギを語る! サッカーくじtoto予想サイト『totoONE(http://www.totoone.jp/top/)』にて、『今週のJ3(http://www.totoone.jp/j3/)』が好評連載中。
※本文中の「1」はホームチーム勝利、「0」は引き分け、「2」はアウェーチーム勝利。
■明治安田生命J3リーグ第17節
2017年7月15日(土)19時キックオフ
FC琉球vsギラヴァンツ北九州(沖縄県総合運動公園陸上競技場)
■明治安田生命J3リーグ第17節
2017年7月16日(土)15時キックオフ
SC相模原vs鹿児島ユナイテッドFC(相模原ギオンスタジアム)