7月22日(土)、鹿島アントラーズが「明治安田生命Jリーグワールドチャレンジ2017」でスペインのセビージャFCと対戦する。ヨーロッパリーグ3連覇の実績を誇り、17日に行われた親善試合では現在J1首位のセレッソ大阪に2ー1で勝利。リーガ・エスパニョーラ屈指の強豪クラブに対し、Jリーグ王者の鹿島はどのように立ち向かうのだろうか。
文=戸塚 啓
セレッソ大阪を撃破したスペインの強豪
セビージャFCは近年の欧州サッカーシーンでトップクラスの成果をあげているクラブの一つだ。欧州各国リーグの上位チームが集うヨーロッパリーグ(EL)で2013ー14シーズンから3連覇を達成し、昨シーズンはチャンピオンズリーグ(CL)でベスト16入り。新シーズンもCLに予選プレーオフから出場する。
リーガ・エスパニョーラでの優勝経験は一度しかないが、レアル・マドリードやバルセロナが同居する競争力の高いリーグにおいて、14シーズン連続で一桁順位をキープしているところにセビージャの価値がある。昨シーズンもホームでレアル・マドリードを下す健闘を見せ、リーグ4位に食い込んだ。
7月17日に行われたセレッソ大阪との一戦は、セビージャにとってプレシーズン最初のゲームだった。コンディションもコンビネーションも調整段階にもかかわらず、結果は3ー1の勝利。試合後、セレッソ大阪の尹晶煥監督や選手たちが口をそろえて「質が高かった」と話したように、チームとしての連動性を保ちながら個々が高い技術を発揮し、ハードワークも怠らないそのサッカーは、J1で首位を走るチームを圧倒した。
今シーズンからチームを率いるエドゥアルド・ベリッソは、攻守にアグレッシブなサッカーを標榜するアルゼンチン出身の監督だ。昨シーズンはセルタを率いてELでベスト4に進出。準決勝でイングランドのマンチェスター・ユナイテッドを苦しめた戦いは世界に強い印象を与えた。47歳の指揮官はセルタで評価されたスタイルをセビージャにも持ち込んでいる。
セレッソとの実戦を通して戦術的な修正ポイントが明らかになり、新加入選手を含めた連係を確認することができた。22日に控える鹿島アントラーズとの一戦では、さらに高いパフォーマンスが期待できるだろう。選手たちの体が日本の気候になじんでいることも、ピッチ上でのパフォーマンスに好影響を与えるはずだ。
鹿島が警戒すべきはチームの流動性と個の力の融合
4ー4ー2システムを採用する鹿島に対し、セビージャは3バック、4バック、5バックを巧みに使い分ける。セレッソ戦では4バックでスタートしたが、持ち前の可変性を生かしてくるかもしれない。チームの心臓は背番号15のスティーヴン・エンゾンジだ。チームの特徴である可変システムも、アンカーポジションにもダブルボランチにも難なくフィットするこのセントラルMFが立ち位置を変えることで成立していると言っていい。
そのエンゾンジにボールを自由に配給させないためにも、鹿島にはFWのプレスバックやダブルボランチの素早いアプローチが欠かせない。ペドロ・ジュニオールや金崎夢生にはいつもどおりの献身性が求められるが、より重要な役割を担うのはレオ・シルバだろう。Jリーグ屈指のボール奪取能力を誇るブラジル人ボランチは、エンゾンジの攻撃への関わりに対して常に目を光らせておく必要がある。
サイドバックのポジショニングもセビージャの攻撃の特徴の一つだ。彼らは攻撃参加の局面でタッチライン際ではなく、中央に絞ってMFのようにプレーする。サイドバックに限らず、チーム全体としてマーカーがつかみにくい動きをしてくる。鹿島としては相手の流動的な動きに混乱をきたすことなく、守備組織を整えられるかどうかが勝敗のポイントになるはずだ。
セビージャは「個」の力も際立っている。セレッソから2ゴールを奪ったウィサム・ベン・イェデル、途中出場でダメ押し点を挙げたルイス・ムリエルはもちろん、フランコ・バスケスやパブロ・サラビアらは相手の急所に飛び出していくのがうまい。セレッソ戦では途中出場だったアルゼンチン代表MFのエベル・バネガ、ブラジル代表経験を持つMFガンソも、攻撃に違いを生み出すことができるタレントだ。さらにマンチェスター・シティからの獲得が決まったFWノリートもチームに合流した。日本代表センターバックの昌子源を中心とした鹿島守備陣が、セビージャの攻撃をどこまでしのげるのかは興味深い。
鹿島が世界の強豪相手に群を抜く勝負強さを見せつけるのか。したたかさと巧さを併せ持つセビージャがリーガの強豪としての実力を示すのか。カシマスタジアムで両チームのプライドが正面からぶつかり合う。