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【インタビュー】センターバック人生は究極の二択から始まった!? 日本代表にまで成長した昌子源のこだわりとは

2017.07.21

日本屈指のDFへと成長を遂げた昌子。成長の歩みを止めることはない [写真]=︎Getty Images for DAZN

 一つのミスが失点に直結する過酷なポジションにおいて、センターバックの魅力とは何なのか。鹿島アントラーズの最終ラインを支え、日本代表としてプレーする昌子源も、“究極の二択”を突きつけられた時は、センターバックというポジションを受け入れられなかったという。「嫌々」から始まったセンターバック人生。成長の過程で知った面白さ、そしてこだわりを語ってくれた。

インタビュー・文=高尾太恵子
取材協力=ナイキジャパン

■そもそもプロになれるとも思っていなかった

――昌子選手は、高校生の時にFWからセンターバックへコンバートされたそうですね。
そうなんですよ! 当時はすごく嫌でしたよ(笑)。ある日、練習でFWの列に並んでいたら、監督に「お前はディフェンスのところに並べ!」といきなり言われて……。突然、「センターバックをやるか、一生走るか。どっちや?」と聞かれたんです(笑)。仕方なくセンターバックを選んで、嫌々やっていましたね。

――そんなきっかけだったとは(笑)。ちなみに、FW時代はどんな選手だったのですか?
僕は身長が低かったので、スピードとドリブルで勝負するタイプでした。

――てっきり大型FWかと思っていました。
ドリブル小僧でしたね。ガンバ大阪のジュニアユースでは身長が一番低くて、同期の大森晃太郎(現ヴィッセル神戸)と一緒に「ちび二人組」と言われていました。今では、晃太郎よりもはるかに大きくなりましたけどね。

――当時、センターバックで日の丸を背負う選手になると想像していましたか?
全く想像していなかったですね。そもそもプロになれるとも思っていなかった。こんな言い方は失礼ですけど、米子北高校に進学した時点でプロを諦めたんです。全国大会に行ったとしても、一回戦で負けるようなチームでプロになれるはずがない。そう思っていたのに、奇跡みたいなことが続いて(笑)。2年生の時にインターハイで準優勝したり、年代別の代表候補に選ばれたり。今思えば、FWのままだったらプロになっていなかったと思います。

――昌子選手のようにFWからセンターバックに転向するケースは少なくありません。共通して通用する部分があるのでしょうか?
どうなんでしょう。僕の場合は、おそらくスピードと守備範囲の広さを評価されたんだと思います。

昌子源

――その能力は、現代型センターバックに求められる要素ですよね。
そうですね。今では監督にとても感謝しています。「一生走る」を選ばなくて良かった(笑)。

――コンバートされた理由は聞かなかった?
聞いたことないですね。当時は、監督が怖くて話せなかった(笑)。

――センターバックでやっていくと決めて、そこからどのようにスキルを取得していったのですか?
それが、監督からは何のアドバイスもなくて、自分の感覚でプレーしていたら「違う」とまた怒られて……。心の中では「何が違うねん」と思いながら、ずっと嫌々プレーしていました(笑)。

――でも、失点するのはもっと嫌だったのでは?
そうですね。自分のミスでなくても、失点したら怒られていました。本当にどうして僕をセンターバックにしたのか……。今度、監督に会ったら聞いてみます。

――理由が気になりますよね。その当時は試行錯誤しながら、地道にセンターバックを続けていたと。
そうですね。インターハイで準優勝した後に、京都サンガF.C.の練習に参加させてもらう機会があって、そこで当時コーチをしていた秋田豊さんと森岡隆三さんに指導していただきました。日本を代表するDFに教えてもらって、すごく刺激になりましたね。

■「まずは守備から」というのが僕の考え

――そうしてプロの道へと進みました。
プロに入ってから、一気に成長したと思います。自分でもびっくりするくらいタイミングと環境が良かったんですよ。鹿島アントラーズに入団した2011年は、中田浩二さんや岩政大樹さん、伊野波雅彦さんがいて、現役の日本代表選手のプレーを間近で体感できる環境でした。そして、大岩剛さんが引退して、コーチになった年でもありました。当時、鹿島には大勢のスタッフがいたので、剛さんが僕の専属コーチをやってくれたんですよ。センターバックとは何か。一から十まですべて教わりました。秋田さんも、クラブハウスに来てくださった時にアドバイスをしてくれましたね。

――かつて専属コーチだった大岩さんが、今は鹿島の監督です。
それも何かの縁だと思います。恩を返す絶好の時ですよね。

――恵まれた環境で成長していく中で、センターバックの面白さが少しずつ分かってきたのでは?
やっぱり一対一で止めた時や、シュートブロックをした時は気持ちいい。そういうところに楽しさを感じるようになりましたね。プロになったばかりの頃は、点を決められるとすぐにふてくされていたし、気分が落ち込む夜もあった。でも、最近ではいい意味で気にしなくなりました。なかなか守備で試合を盛り上げられる選手はいないと思うんです。お金を払って試合を見に来てもらっているので、「昌子を参考にしたい」、「昌子のプレーをみたい」と思ってもらえるような選手になりたいですね。

――先月7日のシリア戦(1-1で引き分け)後に「失点を引きずったら負け」という言葉を残しました。でも、そのセリフを言えるようになるまでには、それなりの時間が必要だったと思います。
ここ数年で成長した証拠ですね。ボールを奪われたり、一対一で抜かれたり、パスミスをしたり、ゴール前で空振りをしてしまったり……。僕はこれまでのサッカー人生で何失点もしているんですよ。その経験で一番学んだのは、「引きずったら、もう1点やられる」ということ。センターバックの立ち居振る舞いは、想像以上にチームに伝染します。だから反対に、「あいつ、何だよ。自分のミスで失点したのに堂々としてるやん」と思わせたほうが勝ちだと思っています。

――なるほど、そうかもしれませんね。センターバックに求められる役割が増えてきた今、昌子選手が伸ばしていきたい能力は何ですか?
僕の課題はビルドアップです。でも、みんなとは少し考え方が違う。今はボールを奪ってから攻撃につなげるプレーを要求されることが多くなっていますけど、センターバックはまず守備だと僕は思っています。だから、守備を100にしてから、攻撃のことを考える。失点しなければ試合に負けることはありませんからね。

昌子源

――先日、アビスパ福岡の井原正巳監督に話を伺った際に、昌子選手はセンターバックとして絶対に必要な対人の強さがあって、高さやスピード、クレバーさもあるバランスの取れた選手だとおっしゃっていました。
それは感動ですね。だって“アジアの壁”ですよ! 井原さんに言われたら、自信を持ってもいいのかも(笑)。

――一気にテンションが上がりましたね(笑)。「守備を100にしてから」という話がありましたが、今はどの辺に位置しているのでしょうか。
「70」くらいですかね。ゼロからスタートして、確実に一歩ずつ進みながら積み上げてきました。僕は100に達していない段階で攻撃を取り入れて、両方が中途半端になってしまったら、それはセンターバックとは言えないと思っています。

――それは、キャリアの途中でセンターバックに転向した昌子選手ならではのこだわりですね。
そうです。パスが下手だと言われようが、攻撃力が足りないと言われようが、「まずは守備から」というのが僕の考えです。だから、守備を100にするために、これからもいろいろなことにチャレンジしていきたいですね。

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By 高尾太恵子

サッカーキング編集部

元サッカーキング編集部。FIFAワールドカップロシア2018を現地取材。九州出身。

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