首位を走る湘南を率いる曺貴裁監督 [写真]=J.LEAGUE PHOTOS
■理想と結果を追い求めて…湘南・曺貴裁監督の“想い”
前節の山形戦ではリーグ戦8試合ぶりの黒星を喫したものの、依然として首位をキープしている湘南。ここまで各対戦チームからの評価も非常に高く、前節も難敵の福岡を撃破した3位の徳島と激突するこの一戦は好ゲームが期待されていますが、今回は湘南を率いる曺貴裁監督のある“想い”についてご紹介したいと思います。
ホームで東京Vに2-0で競り勝った前々節。試合後の監督会見で今シーズンのJ2全体の印象を問われた曺監督は、「正直あまりそんな余裕はないですけど。今の所の順位が何位だということを気にしてやれるほど、余力が残っているチームではないので」と前置きしながら、「ただ、傾向として開幕の時に比べて、相手チームのやり方によって自分たちのやり方を少し変えていくというか、そういうチームは増えてきたのかなと思います」と続けます。
「ただ、本当に相手チームの対策をすることがそのチームの5試合後、10試合後、もしくは1年後、2年後、10年後にいいのかどうか。それが2割かもしれないし、5割かもしれないし、8割かもしれないですけど、監督の立場としてはやっぱりそのクラブの責任を任されている以上、そういう所も含んで指揮を執るべきだと。それが全部だとは言わないですけど、個人的にそう思っているので」。就任6年目。2度のJ1昇格と3度のJ2降格を経験していく中で、曺監督が取り組んできたのはチームの確固たるスタイルを築き上げること。そうやって日々のトレーニングから格闘してきた指揮官の矜持が、その会見の言葉に滲んでいたような気がしました。
さらに、話はリーグ全体にも及びます。「もっともっと日本の良い選手がJ2でも、『J2は激しくて拮抗しているから、若い時にここでやりたい』と思うようなリーグにしていかないといけないですし、みんなちょっと活躍すると海外に行って、海外でやりたいという選手がほとんどとは言わないけど多い中で、そういったリーグのコンペティションの感じに、やっぱり我々のチームとして少しは寄与したいというか、少しはそういう人の興味を惹きたいと思ってやってはいます」。曺監督は自分が感じたことしか言わない方なので、常日頃からこういう想いを持ってらっしゃるのだと思います。もちろん目の前の勝利を追い求めるのは大前提ですが、こういう“大志”を持って、それを少しでも現実のものにしていこうとする監督をはじめとした指導者の方が増えていけば、もっとJリーグ全体の魅力も向上するのかなあと、おぼろげながらも会見でのお話を伺いながら感じました。
今シーズンのJ2でも屈指の実力を有する湘南と徳島の一戦ですから、ピッチ上での戦いが激しくなるのはもちろんのこと、是非試合前や試合後の中継インタビュー、クラブHPに掲載される監督会見の模様も含めて、曺監督の言葉に注目していただければと思います。そんなこんなで試合自体の予想は、拮抗した展開を湘南が制する「1」で勝負します!
■山口MF小野瀬康介は、復調気味の古巣との対戦を迎える
5勝4分15敗。前節の岡山戦で連勝こそストップしたものの、カルロス・マジョール監督の下で少しずつ勝ち点を積み重ね始めている20位の山口。4連敗からの連勝で、再び昇格プレーオフ圏内の5位に浮上した横浜FCをホームに招き入れる今節は、特別な古巣対決を迎える小野瀬康介のパフォーマンスに注目が集まります。
中学入学と同時にジュニアユースの1期生として横浜FCに入団した小野瀬は、そのままユースへと昇格。チームの10番を背負い、U-18日本代表候補にも選出されていた高校3年時の2011年8月には、クラブ史上初めてとなる2種登録選手に指定された2日後の水戸戦でベンチ入り。終盤の81分に途中出場でピッチヘ送り出されると、後半アディショナルタイムには鋭い仕掛けで劇的な決勝ゴールにも絡んで見せ、鮮烈なトップチームデビューを飾ります。
翌2012年のルーキーイヤーも、シーズン序盤で途中就任した山口素弘監督から早々にスタメンに抜擢されるなど、少しずつ出場機会を獲得すると、第22節の町田戦ではJリーグ初ゴールを含む2ゴールの大活躍を果たしますが、3シーズンに及んだ山口監督政権下では完全なレギュラーを掴むことはできず。プロ4年目の2015年になってリーグ戦37試合に出場を果たし、ようやく主力選手としてブレイクしたものの、昨シーズンは夏過ぎに負傷離脱してしまい、そのまま終盤戦まで完全なトップフォームには戻らず。シーズン終了後には熟考の末、山口への完全移籍を決断。ジュニアユース時代から10年を過ごした横浜FCへと別れを告げることになりました。
傍から見れば小野瀬の移籍は意外なものに映りましたが、それだけに本人の決意は並々ならぬものがあったはず。ただ、移籍した山口はJ3昇格、そしてJ2昇格を支えてきた主力の多くが他クラブへと旅立った経緯もあり、今シーズンは監督交替も経験するなど苦戦の連続。その中でただ1人だけリーグ戦全試合に出場し、攻撃陣を牽引している小野瀬の存在は、山口にとって既に欠かせないものになっていることは間違いありません。
小野瀬がニッパツ三ツ沢球技場に凱旋した一巡目の第17節では、0-1で横浜FCに敗れたものの、やや不可解なPK1本に沈んだこともあって、今回の二巡目の対戦ではきっちりリベンジを果たしておきたい所。とはいえ、横浜FCも長崎戦では新加入のレアンドロ・ドミンゲスが早くもスタメンで躍動し、1点目の起点も含めて何度もチャンスを演出。アタッカー陣には強烈な個が揃っています。楽しみな要素の多い今節ですが、ここは小野瀬の活躍にも期待しながら、山口が粘り強く勝ち点を獲得する「0」を予想したいと思います。
文=土屋雅史
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※本文中の「1」はホームチーム勝利、「0」は引き分け、「2」はアウェーチーム勝利。
■明治安田生命J2リーグ第25節
2017年7月29日(土)19時キックオフ
湘南ベルマーレvs徳島ヴォルティス(Shonan BMW スタジアム平塚)
■明治安田生命J2リーグ第25節
2017年7月29日(土)19時キックオフ
レノファ山口FCvs横浜FC(維新百年記念公園陸上競技場)
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