G大阪でレギュラーとして活躍する三浦弦太 [写真]=JL/Getty Images for DAZN
3万6177人の大観衆が集結した29日の大阪・市立吹田サッカースタジアムで行われたガンバ大阪対セレッソ大阪。暫定首位のセレッソが前半から押し込み、後半立ち上がりに杉本健勇の先制点が飛び出す中、ガンバは凄まじい反撃を見せた。65分に新戦力FWファン・ウィジョが巧みなヘッドで同点弾を挙げると、その12分後には井手口陽介の左CKから逆転ゴールを奪う。ニアサイドのフリースペースに絶妙の飛び込んだのは、今季から最終ラインを統率する22歳のDF三浦弦太。
「陽介からいいボールが入りましたし、相手がゾーンディフェンスで来ていて自分にはマークがついていなかった。それを狙っていたんで、いい入り方ができてよかった」と本人もしてやったりのゴールを決め、勝利を決定づけた。最終的に、ガンバは途中出場のアデミウソンがダメ押しとなる3点目を奪って3-1で完勝。今後のタイトル争いに向けて大きな弾みをつけることに成功した。
「(ここまで)リーグ戦で連敗してましたけど、チーム全体にネガティブな雰囲気はなかった。全員で大阪ダービーを楽しんで勝つという雰囲気があったし、みんな最後まで諦めていなかった。そういう環境を作ってくれたサポーターのみなさんの応援も力になった。それが今日の勝因かなと思います」と三浦は感無量の表情を浮かべた。
自身の逆転弾はもちろんのこと、杉本に先制弾を食らった後、気を取り直して最終ラインをしっかりと統率し、セレッソ攻撃陣を封じきったことも大きかった。若き守備の要の存在価値を改めて示す絶好の機会になったのは間違いない。
三浦は大阪桐蔭高校から清水エスパルス入りした新人時代から将来を嘱望された選手だった。鈴木政一監督率いる日本ユース代表時代は南野拓実(ザルツブルク)、中村航輔(柏レイソル)、川辺駿(ジュビロ磐田)らとともにチームをけん引。2014年にはAFC U-19選手権(ミャンマー)にも参戦した。が、日本は世界切符を賭けた準々決勝で北朝鮮にPK負け。三浦も大きな挫折を味わった。翌15年には所属の清水が史上初のJ2降格を余儀なくされ、さらに翌16年のリオ・デ・ジャネイロ五輪も代表落選。日の当たる舞台から遠ざかり続けた。
そんな悪循環から脱するきっかけとなったのが、今年1月のガンバ移籍である。高校時代を過ごした地に戻って心機一転、迎えた今季は長谷川健太監督から絶大な信頼を得て、開幕からコンスタントに最終ラインのコントロール役を託された。今季J1のガンバはスタートから5試合無敗。4月7日の第6節サンフレッチェ広島戦で初黒星を喫したが、そこから再び6試合無敗という躍進を見せ、日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督に抜擢されるところまでこぎつけた。
A代表初招集となった6月のシリア代表(東京)、イラク代表(テヘラン)の2連戦は試合出場こそ叶わなかったものの、「若い三浦はこの2カ月のパフォーマンスが最も良い選手。1、2年後には素晴らしいセンターバックになる。パワー、テクニックもあり、喋ることもできますから。あの年齢ですでに全員に向かって喋れる。そういう強いキャラクターが日本には必要」と統率力・発信力の高さを高く評価されていた。その長所はクラブの試合を重ねるごとに研ぎ澄まされ、今回の大阪ダービーでも目を引いた。
「ガンバのセンターバックのパートナーは(外国人の)ファビオなんで、声を出すのは僕の役目。チームを鼓舞する声だったりは意識してやっています。ガンバはうまい選手が多いし、自分の良さも出せるんで、プレーしやすい環境ではある。毎日の練習や試合も刺激になっているし、本当に充実したシーズンを送れています」と本人も自身の進化を実感できている様子だ。
それだけに、8~9月の2018 FIFAワールドカップ・アジア最終予選の天王山・オーストラリア代表(31日/埼玉)、サウジアラビア(5日/ジェッダ)2連戦ではさらなる重責を託される可能性も少なくない。実際、森重真人(FC東京)が今季絶望の重傷を負った今、三浦は吉田麻也(サウサンプトン)、昌子源(鹿島アントラーズ)に続く「第3のセンターバック」という位置づけまで来ている。ハリル体制で招集されている植田直通(鹿島アントラーズ)や丸山祐市(FC東京)が今後1カ月間で劇的に調子を上げない限り、そのポジションは変わりそうもない。つまり、万が一、吉田と昌子に何かアクシデントがあった場合には、彼が大一番のピッチに立つことも考えられるということなのだ。
その状況を視野に入れ、三浦にはより安定感と存在感を高める努力を求めたい。目下、ガンバは19試合を終えて勝ち点35の暫定3位で、総失点はリーグ2番目タイの19だが、まだまだ守りのミスを減らせるはずだ。
「セレッソ戦の失点場面にしても、自分としては危機感はある。ちょっとしたことで守れる失点だったんで、常に油断することなくやりたいし、改善していけたらいいと思います」と鉄壁の守備を構築し、日本のトップの躍り出るべく、若きセンターバックは気を引き締めて自己研鑽に励んでいくに違いない。
文=元川悦子
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By 元川悦子