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【ライターコラムfrom仙台】葛藤の末に決断した札幌への移籍…石川直樹、仙台で過ごした4年半の財産

2017.08.04

札幌への移籍を決断した石川直樹 [写真]=JL/Getty Images for DAZN

 7月30日の明治安田生命J1リーグ第19節ベガルタ仙台柏レイソルのキックオフを前に、仙台から石川直樹北海道コンサドーレ札幌へ完全移籍することが発表された。

 2013年にアルビレックス新潟から仙台に加わった石川は、加入初年度からチームの主力として活躍。左サイドバックやセンターバックで、仙台を支えてきた。今季も開幕から先発の座を掴んでいたものの、途中から控えに回っていた。最近は負傷で別メニューが続いていたために、回復して巻き返しをはかろうとしていたところだった。

 そこへ、かつて(2009年途中~10年)所属していた札幌から完全移籍のオファーが届く。副キャプテンとして仙台を支えたい気持ちと、サッカー選手としての貴重な評価を受ける気持ちとの間で、少なからず悩んだという。最終的に完全移籍を決断した石川は、まだケガが完治していないために柏戦でのベンチ入りは果たせなかったものの、試合後にサポーターへ挨拶することはできた。サポーターは盛大な応援歌とコールで、背番号5を送り出した。

「正直、あそこに出るかどうかずっと迷ってはいたのですが、渡邉(晋)監督がああいう場を僕に提供してくれましたし、サポーターの皆さんと顔を合わせて『さよなら』が言えたのは幸せですし、チームが本当に自分のことを、出発する最後まで考えてくれたことに、幸せな気持ちでいっぱいです」

 試合後のミックスゾーンで、石川は改めて感謝の言葉を口にした。

 誠実な人間である。柏のアカデミーで育ち、柏、札幌、新潟、仙台でプレーしてきた石川は、いわゆる“古巣対決”が巡る度に、勝負は勝負として、それぞれのクラブや土地について、楽しい記憶のことも必ず語ってくれた。そして気がつけば、仙台では柏時代とほぼ同じ4年半という時間を過ごし、様々な記憶を重ねていった。偶然にもその仙台と柏が対戦したこの試合後に、石川は多くの関係者に囲まれていた。

仙台では腕章を巻く機会もあった [写真]=JL/Getty Images for DAZN

 試合を離れれば温厚な石川も、意識して「ガミガミ言う年になりましたよ」と話すようになったのは、30歳を過ぎた頃からだろうか。柏戦後に「来たときは右も左もわからなくて、引っ張ってもらう状況だった。けれど、年齢を重ねてから、富田(晋伍)キャプテンや渡邉監督を支えたい思いが自然と出てきました。若手に対しても、ベガルタ仙台を盛り上げるために全力で考えてきたつもり」と話したように、彼は引っ張る側に回っていった。

 特に若手選手は、その背中を見てきた。2年目の佐々木匠は「1対1でご飯に行く機会も多かった先輩で、試合に出られた時も出られなかった時も、その姿を見て学ぶことが多かった」と振り返る。

 JリーグYBCルヴァンカップでは、ゲームキャプテンを務めた石川が、実践経験の少ない若手とともにプレーすることも多かった。グループステージ最終戦(※仙台は第6節)の札幌戦で勝利したあと、石川は「『お前たちが主役となってチームを強くして、タイトルを獲るんだ』と若手にはしつこく言いましたよ。特に、一緒にいることの多かった佐々木匠には」と明かしてくれた。なお、この試合では佐々木と石川がともにゴールを決めている。

石川とは公私共に仲がいい佐々木 [写真]=JL/Getty Images for DAZN

 尊敬する先輩にあとを託された佐々木は、石川がチームに最後の挨拶をした7月31日にはルヴァンカップのオープンドロー出席のために仙台にはいられなかったが、石川が札幌に移った8月1日に、メッセージが届いていたという。

「『匠が意識を高く持って練習してきた姿を見てきたよ。ありがとう』というような言葉があったんです。逆に、僕の方がイシさん(石川直樹)の姿勢に感謝しているのですが……。嬉しかったし、その言葉に応えたい」

 石川は札幌でまた愛される存在となるだろうし、その背中を見てきた佐々木たちは、これから彼の分も仙台を盛り上げていくのだろう。

文=板垣晴朗

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