レッズで育ち、レッズで大きくなり、ドイツへと旅立った原口元気。8月15日にスルガ銀行チャンピオンシップを戦う古巣に向けて在籍当時と変わらぬ愛情のこもったメッセージを送ってくれた。
インタビュー・文=飯尾篤史 Interview and text by Atsushi IIO
写真=兼子愼一郎 Photo by Shin-ichiro KANEKO
(取材:2017年6月26日)
僕は必ず浦和に戻る。再び一緒に戦える日を心待ちにしていてほしい。
──浦和は昨シーズン、JリーグYBCルヴァンカップを制して、久しぶりにタイトルを獲得したわけですが、それを聞いた時、どう感じました?
原口元気 もちろんうれしかったんですけど、もっと取れるでしょって。僕がいた時代に取ってないから、偉そうには言えないんですけど(苦笑)、浦和が積み上げてきたもののクオリティーを見れば、もっとたくさんのタイトルを取ってもおかしくないと思います。タイトルを取って、その価値を高めてほしいですね。
──ミシャ監督のチームでプレーして、得られたものは何ですか?
原口元気 とにかく攻撃に関しての引き出しの多さ、アイデアの豊富さに、ものすごく驚かされましたね。あれだけ攻撃のアイデアが豊富な監督は、ヨーロッパを見渡してもそうそういない。そういう監督の下だったからこそ、攻撃面で磨けたものは多いですよね。ミシャの良さはやっぱり攻撃。そこに関してスペシャルな指導者なので、今、浦和はうまくいっていないですけど、改善すべきは守備じゃないんじゃないかな。やっぱり攻撃でその素晴らしさを証明してほしいですね。
──1、2点取られたとしても、3、4点取ればいいということ?
原口元気 いや、そうじゃなくて、そのスタイルを極めれば、本当にボールと試合を支配できると思うんです。逆に言えば、支配し続けられれば、失点もしないでしょ。今はボールの取られ方が悪い時に失点していますよね。だからといって、カウンターを受けた際のリスクマネジメントに力を入れるのではなく、変な形でボールを奪われないように、もっと攻撃のクオリティーを上げるべき。一ファンとしてはそう思いますね。
──完全にファン目線ですね(笑)。浦和の選手たちとは今も交流があるんですか?
原口元気 もちろん、代表の選手たちとは一緒にいることが多いし、関根(貴大)は去年、ドイツまで遊びに来てくれました。関根はこれから、もっともっと伸びると思います。今シーズンも活躍しているみたいですけど、選手の真価が問われるのは、今だと思います。チームの調子が良い時は誰でも活躍できる。調子の悪い時にチームを救う活躍を見せてほしいです。
──今回、浦和はJリーグYBCルヴァンカップ王者としてスルガ銀行チャンピオンシップに出場します。対戦するのは、シャペコエンセです。あの痛ましい飛行機事故のニュースを、どう受け止めました?
原口元気 あの事故のことはドイツで知りました。事故が起きたこと自体にもショックを受けたんですけど、決勝戦に向かう最中で起きた事故だったこと、亡くなった選手の中にはJリーグでプレーした選手も何人かいたことを知って、さらに心を痛めました。ただ、悲しい中にも、サッカー界として多くの選手が声明を発表して、支援の輪が広がったことは素晴らしかったと思います。このスルガ銀行チャンピオンシップが、シャペコエンセが再び強くなるきっかけの試合になって、亡くなった選手たちのことを忘れないための試合になればうれしいです。
──シャペコエンセはブラジルのチームですが、浦和にいた頃、ブラジル人選手といって思い浮かぶ選手は誰ですか?
原口元気 やっぱりロビー(ロブソン ポンテ)ですね。生意気な話ですけど、当時はロビーを追い越すことを目標にしていました。ロビーはドイツでプレーしていたのでドイツ語ができるんですよ。それで、何かのタイミングでメールが来て、ドイツ語でやり取りしたのが新鮮でした。『頑張ってるな』みたいな内容で、うれしかったですね。
──では最後に、レッズのファン・サポーターに向けてメッセージをお願いします。
原口元気 今はヨーロッパでプレーしていますが、今でも僕は浦和の一員の気持ちでいます。応援しているし、さっき言ったように、本当に分析したりしています(笑)。最後のスピーチで約束したように、僕は必ず浦和に戻ります。だから、再び一緒に戦える日を心待ちにしていてほしいです。ヨーロッパでもう少し頑張るので、その間に浦和がもっともっと大きなクラブになっていてほしいな、って思っています。一人ひとりのサポーターの声援が本当に選手の力になるので、変わらずに浦和レッズを応援してください。
原口元気
1991年5月9日生まれ、埼玉県熊谷市出身。江南南サッカー少年団→浦和レッズジュニアユース→浦和レッズユース→浦和レッズ(2009年~2014年5月)→ヘルタ・ベルリン(ドイツ)。レッズではJ1通算167試合33ゴールを記録。昨シーズンはブンデスリーガで31試合1得点の成績を残した。2011年10月7日のベトナム戦で日本代表デビューを飾り、2018年ロシアW杯のアジア最終予選では4試合連続得点を決めるなど、主力として活躍中。