横浜FMの中盤に定着した扇原貴宏 [写真]=JL/Getty Images for DAZN
3-2で浦和レッズを撃破した明治安田生命J1リーグ開幕戦は、出場はおろかベンチにも入れず、日産スタジアムのスタンドから観戦していた。チームは最高の滑り出しとなったが、扇原貴宏にとっては悔しい思いしかなかった。第2節北海道コンサドーレ札幌戦(3-0)でベンチ入りを果たしたものの出場機会は訪れず、移籍後初出場は第6節ジュビロ磐田戦(2-1)まで待たなければならなかった。
第8節柏レイソル戦でようやく初先発のチャンスが巡ってきたが、相手の出足の鋭いプレスに苦しめられ0-2で完敗。2度目の先発となった第10節サガン鳥栖戦では自陣で痛恨のミスを犯して先制点を献上。結局ビハインドを追いつくことができず0-1で敗れた。少しずつ出場機会が増えていくのに対して、チームの結果が比例しないという煮え切らない日々を送っていた。
風向きが変わり始めたのは第13節清水エスパルス戦から。このゲームで3試合目の先発を飾ると、中盤の底で存在感を発揮。正確な球出しと体を張った守備で3-1の勝利に貢献するだけでなく、粘り強いパス出しからダメ押し点となったウーゴ・ヴィエイラのゴールをアシストした。「自分が先発した試合で勝てていなかった。3試合目でようやく勝てたホッとした」と安堵の表情を浮かべた。
以降は欠かせない戦力として地位を築き、現在は中町公祐や喜田拓也と激しい競争を続けている。以前から評価されていた長短を織り交ぜたパスワークだけでなく、守備面での成長も目を見張るものがある。最終ラインのリーダーである中澤佑二が「タカ(扇原)は気の利いたポジションにいてくれるし、守備意識高くプレーしてくれていて助かる」と信頼を口にしたように、周囲から認められたことも好パフォーマンスの要因のひとつだろう。
14試合負けなしの快進撃を見せ、残り10試合で首位・鹿島アントラーズと勝ち点5差に迫った。視線の先には優勝の二文字が見え隠れする時期だが、扇原は「目の前の1試合1試合を戦っていくだけ」と一戦必勝を強調する。どのチームとの対戦でも丁寧にプレーしてきた結果、存在価値を高めた。そんな自身の歩みと同じように、1試合ずつ大事に戦った先に成功体験があることを扇原は知っている。
文=藤井雅彦
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By 藤井雅彦